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第6話 田中との出会い。

 美雅を殺し、その座に鎮座した若頭天野 大樹改め、組長北白川 大樹は美月の義父として北白川の屋敷に住むようになった。  組長になれたからとはいえ、北白川組の全体を手中におさめたい大樹は、今度は北白川組の会長の後継者を狙っていた。  そうなれば邪魔なのはただ一人、会長の愛孫美月の存在だった。  屋敷内で美月を殺したら確実に大樹に容疑がかかることは明白だった。  学校に向う送迎中に美月を誘拐し殺そうと大樹は組員を使い計画を立てた。  屋敷に帰るため車に乗る直前に、美月は布で覆われ攫われそうになる。  その一瞬だった。 「お前ら!!何やってんだっ?!」  騒々しい怒号と共に聞こえた鈍い打撃音がその場に響いた。  それは美月がこれまでの短い人生で聞き慣れてきた音とは全く違ったものだった。  今まで聞いてきた、美月を狙う極道の暴力とは違う音だと感じた。  誘拐を仕掛けてきた組員は焦り美月に覆っていた布を解かれた瞬間に見たものは、美月の腕を強引に連れて行こうとした組員の身体が紙屑のように宙を舞うところだった。  次に美月の視界に入ったのは鍛え上げられた大きな背中。  自分からは逆光で見えなかったが、美月を守るよう前に立ち塞がるその男は、北白川の人間が誰一人として持ち得ない、剥き出しの『正義』に満ちていた。  組員は武器として刃物を持っていたが、それに臆することもなく男は美月を助けた。  この男には到底敵わない、そう感じた組員達はその場をあとにした。 「……坊主、大丈夫か?」  大きく無骨な手を差し伸ばされ、手を握る。  その男に美月は礼を伝えた。 「助けてくれて、ありがとうごさいます」  その男はレスリング日本チャンピオン、田中 亮司(タナカ リョウジ)だった。

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