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第8話 家族写真②
部屋に戻った伊純は、作業に戻った。
使冴のスマホから抜き取った家族写真をPCのフォルダに保存する。
家族四人が映った写真で、使冴だけを拡大した。
「やっと、本物に触れた」
ずっと画面越しに見ることしかできなかった。
あの頃より成長した使冴の熱が、今は届く場所にある。
十五年前の火事で、使冴は家族を失った。
出火原因は煙草のポイ捨て――使冴は今も、そう信じている。
「やっぱり、何も覚えてねぇんだな。あの様子じゃ、俺との約束も忘れてんだろうな」
あの頃はお互い、子供だった。
名前すら知らない相手と十五年振りに再会しても、気付かないだろう。
そうは思っても、少しだけショックだ。
(使冴の中に眠っている記憶を掘り起こすのが俺なら、それでいい)
手中に収めた今なら、使冴が思い出すのを待つ気になれる。
この状況が、伊純にとっては楽しくて堪らない。
(他の誰かが触れるくらいなら、いっそ埋もれたままでいい)
だから、この場所から逃がさない。
「自分が、《《あの》》天久|聖冴《せいご》の息子である価値なんか、使冴は知らねぇからな」
天久聖冴の正体も。
使冴自身の正体も。
御影伊純の正体も、今はまだ教えない。
「全部、真っ黒に塗り替えてから。始めるのは、俺なしじゃ生きられない使冴になってからだ」
使冴の知らない事実の総てを教える。
その時、使冴はどんな顔をするんだろう。
想像しただけで、期待が胸に膨れ上がる。
「十五年も、待ったんだ。本当に助けに来たんだぜ。早く俺を好きになれよ、使冴」
子供の頃に交わした約束を、思い返す。
浮き立つ心を抑えて、伊純は画面いっぱいに映る使冴の写真に指を伸ばした。
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