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◾️3 ハードボイルド先輩後輩のリバ妊娠 〜任務の果てに誓う孕ませ愛〜
レトロな喫茶店に流れるチルなジャズが、午後の柔らかな木漏れ日と混ざり合っていた。
窓際の席で、タクマはブラックコーヒーをゆっくりとすすりながらハムサンドを頰張っている。
向かいに座るカズキはナポリタンをフォークで突いていたが、手がぴたりと止まった。
「子宝の実?」
タクマが低い声で切り出すと、カズキの目が大きく見開かれた。
「聞いた事ないか?」
「はい……全く」
「希少な実だ。いわば擬似卵巣のようなものだな。男性のアナルから挿入して前立腺付近に癒着させる。アナル経由で精子同士が混ざり合うと、その実が受精卵となり、周囲に子宮を形成して妊娠に至る」
カズキはフォークを握ったまま固まっていた。
「そんな不思議なものが……本当にあるんですか?」
「ああ。一般には完全に秘密にされている。その実が今回、闇ルートでこの街に持ち込まれているという情報が入った。真相を探り、可能なら押収するのが俺たちの任務だ」
「……しかし、危険じゃないんですか?」
タクマはコーヒーカップを置いて、わずかに口元を緩めた。
「お前と俺なら大丈夫だ。いやなら断ってもいいぜ」
カズキは一瞬迷ったような顔をしたが、すぐに照れくさそうに笑った。
「へへ、断るわけないっすよ。先輩の頼みとか、俺、めちゃくちゃ嬉しいですから」
「そっか。よろしく頼む」
タクマの視線がカズキの口元に止まった。
「ケチャップついてるぞ」
「え、どこっすか?」
「ほら、ジッとしてろ。取ってやる」
タクマは身を乗り出し、親指でカズキの唇の端を優しく拭った。
指先が触れた瞬間、カズキの頰が薄く赤らむ。
「あ……ありがとうございます、先輩」
****
深夜零時を回った。
隠れた港湾地区。
黒塗りのボートを岩陰に停め、二人は闇夜に溶け込むように身を低くしていた。
沖合に停泊中の豪華クルーザーから、小型ボートで荷が運び出されている。
望遠レンズが捉えたのは、厳重に守られた黒い鞄だった。
「あの鞄だな。例の実の運搬に使っているのは」
タクマが低く呟く。
「ええ、情報通りっす」
カズキはレンズを覗きながら息を潜めた。
しばらく沈黙が続いた後、カズキがぽつりと聞いた。
「先輩……その子宝の実って、いくらぐらいなんすかね」
「さぁ、どうだろう。高額だろうな」
「だって、男が妊娠するって……やばいっすよね。完全に自然の摂理をねじ曲げてる」
「まぁそうだな。人智を超えたシロモノだ」
タクマは淡々と、しかしどこか考え込むように続けた。
「適齢の出産人口が増えれば少子化対策になる。女性の社会進出の負担軽減、女性が減った農村や漁村の人口問題解決にもつながるだろう。何よりも、男性同士のカップルで本当の子作りができるというのは大きい。一定の需要は間違いなくある」
「ええ……不思議ですよね。例えば、俺も子供作れるって事っすよね」
「ん? そうだな。あれ、お前、子供欲しいのか?」
「え、ち、違いますって! ただ……先輩と俺とでも子供が出来るんだなって考えたら、なんか変な感じで……」
タクマが小さく笑った。
「ははは、変な妄想するな。お前は普通に彼女作って、結婚して子供作れ。それが男の幸せってもんだろ?」
カズキの表情が一瞬曇った。
「……俺にそんな未来が来るでしょうか」
「来るって。いつまでもあの事を引きずるなよ」
「別に、そういう訳では……」
「まぁどっちにしろ、俺達の給料じゃとても手に入れられる金額じゃない。変な心配するな」
「ですよね……」
タクマはカズキの肩を軽く叩いた。
「さぁ、いくぞ」
****
アジトの奥深くまで潜入した二人は、事前の情報があまりにも少なすぎたことを痛感していた。
地下には想像を遥かに超える広大なエリアが広がっていた。
「やばいな……思ったより大規模なアジトだ。警備も多い。お前はここから脱出して助けを待て。俺はもう少し奥に進んでみる」
「ダメっすよ!」
カズキが即座に声を荒げた。
「俺、お供します。先輩を一人になんて絶対にしません」
「しかし、この規模では二人ではどうにもならないぞ」
「先輩、俺達二人ならいけますよ。組織のトップバディじゃないですか」
タクマがため息をつく。
「捕まってもいいのか? そのリスクは高い」
「ふん、みくびってもらっては困ります。俺、先輩について行くって決めてますから」
カズキは目を閉じた。
——あの日の記憶が、いつもより鮮明に蘇る。
甘い言葉に騙され、高級クラブの「イケメン精子バンク」として働かされた日々。
興奮剤を強制的に飲まされ、射精、射精、射精の連続。
女を抱き続ける種馬のような生活。
「助けて……誰か……」
そこに現れたのは、タクマだった。
「大丈夫か?」
優しい声と、頼もしい顔。
「あなたは……?」
「心配するな。助けに来た」
警察のようなものだ——と笑ったタクマに抱きかかえられ、カズキは安堵のまま意識を失った。
その後、極度の女性不信に陥り、生きる希望を失いかけていたカズキにとって、唯一の支えはタクマだった。
あの人のようになりたいという憧れが、カズキをこの組織へと導いた。
法で取り締まれない悪を、密かにスパイ活動で検挙まで導く裏組織。
体を鍛え直し、過酷なテストを突破して入団を果たしたあの日、カズキは心に誓った。
(これで第一歩。あの人と同じ土台に立てた。いつかあの人を支えられるようになるぞ!)
「あの決意した日から……ずっと」
「どうした?」
タクマの声に、カズキはハッと我に返った。
「いや、なんでもないっす。さぁ、いきましょう」
「おう」
****
アジトの心臓部である中央コントロール室に、二人は静かに潜入した。
部屋の奥で作業をしていた警備員二人を素早く無力化し、タクマがすぐにコンソールに取り付く。
指がキーボードを高速で叩き、防犯カメラの映像を偽のループ映像に切り替えた。
画面に映るのは、誰もいない無人の廊下だけになる。
「これである程度は自由に動けるはずだ」
タクマが低い声で確認する。
カズキはモニターを素早くチェックしながら頷いた。
「ええ、時間制限はあと25分……よし、行けます」
空気が少し緩んだ瞬間、タクマが立ち上がって出口に向かおうとした。
「手分けして探ろう。俺は東側、お前は——」
「その前に先輩」
カズキがタクマの腕を軽く掴んで止めた。
「なんだ?」
タクマが振り返ると、カズキは少し頰を赤らめながら上目遣いに見つめていた。
「分かってるくせに……いつもの景気付けです」
「……ったく、甘えん坊だな」
タクマは苦笑しながらも、カズキの顎を軽く持ち上げて唇を重ねた。
最初は優しい角度のキスだったが、カズキが積極的に舌を絡めてきた。
タクマの下唇を「ハムハム」と甘く噛み、吸い付くように深く求める。
息が混ざり合い、部屋に湿った音だけが響く。
「ん……はぁ……」
長いキスが終わり、唇が離れたとき、カズキの目はすでにとろけていた。
「はぁはぁ……俺、力がみなぎってきましたよ」
カズキが息を荒げながら、タクマの胸に額を軽く押し付ける。
タクマはカズキの頭を大きな手でくしゃりと撫で、呆れたように笑った。
「ふっ、全くお前はキスが好きだな」
「はい、もちろんです。先輩とキスしないと気合いが入らなくてダメなんです」
カズキは照れくさそうに笑いながらも、はっきりと言った。
タクマの目がわずかに細まる。
いつもの冷静なハードボイルドな表情の奥に、僅かな甘さと独占欲が混じっていた。
「任務の最中にそんな顔するんじゃねえよ。……集中しろ」
「先輩がそうさせるんですよ……」
カズキがもう一度軽くタクマの唇にキスをねだるように顔を寄せたが、タクマは指でその額を軽く押し返した。
「はいはい、わかった。任務が終わったら、たっぷりしてやる」
「本当ですか? 約束ですよ」
「おう、約束だ」
タクマはカズキの唇の端に最後に軽くキスを落としてから、改めて真顔に戻った。
「よし、手分けする。見つけたらすぐに連絡しろ。無茶はするな」
「了解です、先輩」
二人はコントロール室の出口で一度背中を合わせ、別々の方向へと静かに走り出した。
****
通信機からタクマの低く抑えた声が流れてきた。
「まるで迷路だな。どうだ、そっち何か見つけたか?」
カズキは暗い廊下の奥で身をかがめ、慎重に周囲を警戒しながら小声で答えた。
「……あれ、ここは?」
「どうした?」
タクマの声がわずかに鋭くなる。
カズキは半開きの重い金属ドアの隙間から室内を覗き込み、息を飲んだ。
「見つけました……! 例の実の施術室みたいです。手術台が何台も並んでて、医療機器も揃ってます」
「よし、でかしたぞ!」
タクマの声に明らかな興奮が混じる。
カズキはさらに室内に足を踏み入れ、慎重に奥へ進んだ。
無菌室のような白い空間の中央に、ガラスケースがいくつも並んでいた。
「これ……実かも。こんなに沢山……」
「なに、本当か?」
「はい。あの港で運ばれていた鞄が側に置いてあります。きっとこれです。先輩、これを持ち帰れば決定的な証拠になります!」
「よし、そのまま何も手をつけるな。すぐにそっちに行く」
「了解です……へぇ、結構小さくて軽いんですね。こんな小さな実で男が妊娠するなんて……」
カズキはつい好奇心に負け、ガラスケースから一つを取り出して手のひらに載せた。
透明で淡いピンク色をした、葡萄くらいの大きさの実。
触るとほんのり温かく、微かに脈打っているように感じられた。
「バカ、触るなぁ!」
タクマの鋭い声が飛んできた瞬間——
カチッ。
カズキの足元で小さなセンサーが反応し、部屋中に赤い警報灯が点滅し始めた。
「やばい、先輩! 警報が……!」
「だから言ったのに! すぐに身を隠せ、待ってろ!」
「先輩、来ちゃダメです! 逃げて——ああっ!」
突然、後ろから複数の足音が迫ってきた。
カズキが振り返る間もなく、黒い影が室内に雪崩れ込んできた。
「くそっ……!」
カズキが通信機を握りしめたまま叫ぶが、すでに遅かった。
強い衝撃が後頭部に走り、視界がぐらりと揺れる。
「先輩……来ちゃ……ダメ……逃げ……て……」
通信機が床に落ち、途切れた。
ツーツー——
無機質な接続切れの音だけが、タクマの耳に虚しく響いた。
****
通信機から聞こえてきた警報音とカズキの叫びが、突然途切れた。
「くそっ……うかつな、ったく!」
タクマは壁に拳を叩きつけ、歯を食いしばった。冷静さを保とうとするが、声がわずかに震えていた。
(無事でいてくれ……カズキ)
暗い廊下に身を潜めながら、タクマの脳裏に過去の記憶が次々と蘇った。
——数年前、組織の本部。
ボスが呆れたようにため息をついていた。
「お前、また全員テストを落としたのか?」
「ええ、仕方ないですよ」
タクマはソファに深く腰掛け、煙草をくわえたまま肩をすくめた。
「皆、体力と忍耐力は特殊部隊以上だと聞くが……」
「甘くして死ぬよりマシでしょ。俺が納得できるバディはそれだけじゃ足りない」
「まぁそうだが……このままではお前と組める奴、現れるとは思えんが」
「気長に待ちますよ」
タクマはそう言いながら、心の中では
(俺の求める人材はいないかもしれない)
と思っていた。
そこへボスが一枚の資料を差し出した。
「この男はどうだ? 追加合格者だが、身体テストの結果は悪くない」
タクマが資料に目を通すと、そこには見覚えのある顔があった。
——前の事件で助けた、細身の美青年。カズキ。
「なんだ、知っているのか? どんな男だ?」
「前の事件で助けた男だ。顔だけの華奢な奴かと思っていたが……試験を10回目で合格だと?……ふっ、根性がありそうだ。気に入った」
それから二人はバディとして組むことになった。
ある長時間の張り込み任務中。
「どうだ、キツいか? もう三日三晩張り込んでいるぞ」
「平気ですよ、このくらい」
カズキは疲れた顔をしながらも、笑顔を絶やさなかった。
「そうか。キツかったら言えよ」
「俺、先輩が居ればそれで平気なんで」
「……なんだそれ」
「え、迷惑ですか?」
「いや……しかし」
カズキが真剣な眼差しでタクマを見つめた。
「俺、先輩に救ってもらったあの日、俺分かったんです。俺の居場所は先輩の側にいるっていう事なのだと」
「おいおい、そこまでの事か?」
「そこまでの事です。俺の人生が一番輝ける場所……はは、俺は先輩が全て」
カズキが照れくさそうに笑った。
その笑顔が、妙に眩しかった。
「そうか。いい笑顔だ」
タクマは思わずカズキの頭を引き寄せ、軽く唇を重ねた。
「え……これって……」
「気にするな。特に意味はない」
「で、でも俺、ドキドキして……」
「ははは、まぁ頑張ろうぜって事かな」
「頑張ろうぜ?……はい、もちろんです、先輩!」
タクマはカズキの頭を「よしよし」と大きくシャカシャカと撫でた。
(全く可愛いやつだ……こいつは絶対に俺が守る)
そうだ。見捨てるなんて選択肢は、最初から存在しない。
——回想が終わり、現実に引き戻される。
タクマの瞳に強い光が宿った。
「待ってろ、カズキ。今すぐ行く」
彼は通信機を握りしめ、施術室のある方向に向かって全力で走り出した。
冷静な表情の裏に、熱い守護欲と焦りが燃えていた。
****
タクマは息を荒げながら暗い通路を駆けていた。
はぁはぁ……
(施術室はあそこか……見張りが固いな)
施術室の入り口には屈強な男たちが複数立哨していた。
真正面から突破するのは自殺行為だ。
しかし、タクマの口元に冷たい笑みが浮かんだ。
(しかし、これならどうだ)
彼は懐から小型の起爆スイッチを取り出し、迷わず押した。
数秒後——
ドォォォン!!
アジトの別区画で仕掛けていた爆薬が誘爆を起こし、大きな爆発音と炎が上がった。
警報が一斉に鳴り響き、施術室前の見張りたちが慌ててそちらへ走り出す。
「おい、何事だ! 侵入者がいるぞ! まずは消化だ!」
混乱の隙を突き、タクマは影のように素早く室内へ滑り込んだ。
室内の中央、手術台のような椅子にカズキが両手両足を拘束されてぐったりと座らされていた。
「先輩!」
カズキが顔を上げ、涙目でタクマを見つめた。
「大丈夫か!?」
タクマは素早く近づき、カズキの頰に手を当てて確認する。
「はい……先輩」
カズキの声が震えていた。
目尻に大粒の涙が浮かんでいる。
「無茶しやがって……お前一人で突っ込んでくるなんて」
「すみません……」
タクマはナイフを抜いて素早く拘束具を切り裂き、カズキを抱き起こした。
「さぁ、逃げるぞ」
「はい……!」
二人は急いで出口に向かった。しかし、入り口をくぐった瞬間——
「そこまでだ」
複数の銃口が二人に向けられていた。
さっきの爆破で集まった増援が、すでに待ち構えていた。
「どうして……こんなに早く……」
カズキが悔しそうに呟く。
「……きっと、ハッキングの時間切れです……くそっ」
タクマは舌打ちをした。
偽映像が切れたことで、警備システムが正常に戻っていたのだ。
敵の数は十名以上。
とても突破できる状況ではない。
タクマはゆっくりとナイフを床に落とし、両手を上げた。
カズキも渋々従う。
「賢明な判断だ」
リーダー格の男が嘲るように笑った。
束縛された二人。
「さて……ふふふ。この場所を知ったからにはタダでは帰すわけにはいかないな。準備しろ」
男たちは二人を再び椅子に固定し、注射器を準備し始めた。
「お前達はしばらく眠ってな」
「う……っ」
カズキの首に針が刺さるのを見て、タクマが必死に抵抗しようとしたが、自身もすぐに首筋に鋭い痛みを感じた。
視界が急速にぼやけていく。
(カズキ……絶対に……守る……)
意識が闇に落ちる直前、タクマはカズキの涙で濡れた顔を最後に焼き付けた。
****
カズキの意識がゆっくりと戻ってきた。
「……ここは?」
ガチャガチャ。
手首と足首に冷たい金属の感触。
激しく体を動かそうとするが、びくともしない。
「おい、大丈夫か!」
タクマの声がすぐ近くから聞こえた。
カズキは重い瞼を無理やり開けた。
「先輩……?」
白い無機質な部屋。
自分たちは分娩台のような特殊なベッドに、完全に裸で手足をX字に固定されていた。
股の間が大きく開かされ、羞恥と寒気で体が震える。
タクマも隣の台に同じように拘束され、筋肉質な裸体を晒していた。
表情は硬く、目だけが鋭く光っている。
「目覚めたか」
部屋の奥から低い笑い声が響いた。
白衣を着た中年男——このアジトのボスらしき人物が、ゆっくりと近づいてきた。
「どうやら当局のスパイのようだな」
タクマは無言で男を睨みつける。
「ふふふ、図星か。黙っていても分かるさ。お前達はこいつを探していたんだろ? 子宝の実」
男はガラスケースの中から淡いピンク色の実を一つ取り上げ、指先で弄びながら続けた。
「さて、こいつの品質はばらつきがあってな。妊娠できる『アタリ』と、できない『ハズレ』がある。ただ、当たりの房と同じ房になった実は全て当たり……そんな特徴があるんだよ」
男の唇が歪む。
「実が当たりかどうかを調べるにはどうすればいいか、分かるか?」
「……」
「そう。実際に人体のアナルの中に定着させ、アナルの中に射精して妊娠するかどうか確かめる。これが一番確実な方法だ。ヒヒヒ」
カズキの顔から血の気が引いた。
「な……まさか、俺達はその手術を……!?」
「察しがいいな。ちょうどよかったよ。試験体を連れてくる手間が省けた」
「くそ……眠っている隙になんて事を……!」
タクマが低く唸る。
男は楽しげに肩をすくめた。
「むしろよかったじゃないか? お前達は実を欲しくてここまで来たんだろ? ふふふ」
男は二人の股間に視線を落とし、にやりと笑った。
「では、これがアタリの実なのかどうか……試させてもらう。さて、どちらが先がいいか?」
カズキの体がびくりと震えた。
その瞬間、タクマが強い声で言った。
「待て。そいつには俺が試す」
「え……先輩!?」
カズキが驚いてタクマを見る。
タクマは冷静に、しかしカズキを守るような強い眼差しで男を見つめた。
「妊娠するかどうか調べたいんだろ? なら俺がしても問題ないはずだ」
男は一瞬目を丸くした後、腹を抱えて大笑いした。
「ふっ、仲間同士でやるか! あははは! 中々いい趣向だな。面白い。それもいいだろう。なら、お前が先やれ。その次に逆でやれ。二人ともちゃんと最後まで中出ししろよ。妊娠確認のためにな」
男は部下に合図を送り、二人の拘束を一部解除させた。
腰と足だけはまだ固定されたまま、互いの体が触れ合う距離に調整される。
カズキは涙目でタクマを見つめた。
タクマは静かに、しかしはっきりとした声で囁いた。
「……すまない、カズキ。覚悟を決めろ」
****
白い施術室に、二人の荒い息遣いだけが響いていた。
タクマはカズキの上に覆い被さるように体を寄せる。
二人とも完全に裸で、子宝の実が定着したアナルはすでに熱を持ち、敏感に疼いていた。
「すまない……こんな事になって」
タクマの声が低く悔しげに響く。
カズキは涙目で首を横に振った。
「先輩、謝らないで下さい。オレがへまったからいけないんです……それに、俺、先輩とだったら……別にいいっていうか、我慢できるし……むしろ……」
タクマの目がわずかに揺れた。
「もし妊娠したら、俺が責任を取る」
「……ほら、早くしろ!」
敵のボスが苛立った声で急かした。
タクマは歯を食いしばり、カズキの腰を引き寄せた。
「いくぞ……」
熱く硬くなったタクマの先端が、カズキのアナルに押し当てられる。
子宝の実の影響で、入り口はすでに潤み、異様なほど敏感になっていた。
ずぷっ……ぬるり……
「んぐっ……!」
カズキの背中が弓なりに反った。
「これが……アナルセックス……なんて……気持ちいいんだ……」
タクマの太いものが、根元まで一気に奥深くまで沈み込む。
カズキの内壁が痙攣しながらタクマを締め付けた。
「大丈夫か……?」
「はい……っていうか、俺……体が熱くて……こんなの初めて……誰かに抱かれるって、こんなに幸せな気持ちになるなんて……女とするのと全然違う……」
タクマがゆっくり腰を動かし始めた。
最初は慎重に、しかし次第にリズムを速めていく。
「そうだな……なんていうか……お前の中、すげぇ気持ちいい……ごめん……」
「はうっ……! やばい……何これ……先輩のドクドクいって……俺、気持ちよくて……変になる……」
カズキの声が甘くとろけ、涙が頰を伝う。
タクマは何度も最奥を突き上げ、子宝の実が定着した前立腺付近を執拗に擦った。
「あ……いく……!」
カズキが初めて達した。
射精をしていないのに、透明な液が腹に飛び散る。
タクマも限界だった。
すぐに、カズキの中に白濁を爆発させた。
余韻に浸る間も無い。
「おい、いつまでそうしてる。次はお前の番だ」
体位を交代させ、今度はタクマが分娩台に仰向けになった。
カズキが震える手で自分の硬くなったものを握り、タクマのアナルに当てた。
「せ……先輩、いいんですか……?」
「いいよ。早くこい。俺のケツに入れるの嫌か?」
「そんなわけないですよ!!! 先輩のお尻……とっても綺麗ですし……その、俺のなんか入れたら先輩こそ嫌かなって……」
「心配するな。俺は平気だ。お前だったらな」
カズキの目が潤んだ。
「せ、先輩……嬉しいです……で、でも俺、先輩を妊娠させてしまうかもしれません……」
「ふっ。俺だってお前にだったら孕ませられてもいい。そのくらい覚悟はできてる」
「せ……先輩……」
「だから、思いっきり突いてこい。そして精子をぶちまけろ。全て受け止めてやる」
「は、はい!!」
カズキはタクマの腰を掴み、一気に自身を埋め込んだ。
「う……うっ……!」
「バカ……激しすぎ……」
「だって俺……止まんない……こんなの……先輩、好きです……好きです……!」
カズキは獣のように腰を振りまくった。
タクマの内壁を激しく掻き回し、最奥の性感帯を何度も突き上げる。
「うぐっ……気持ちよくなってきた……ちょっと……もう少しゆっくりだ……優しく……うぐっ……」
「むりです! 俺……気持ちよくて……」
「バカやろう……やばい……」
「先輩……俺、変になっちゃう……」
「うぐっ……バカ、激しすぎだって……うぐっ……」
カズキが最後の突き上げを何度も繰り返し——
「いきます!!!」
熱い精液が、タクマの奥深くに大量に注ぎ込まれた。
同時にタクマも限界を迎え、カズキの腹に自分の精を放った。
二人は互いの体液を交換し合い、子宝の実が定着した体で、強制的に受精の儀式を終えた。
施術室に、重い吐息と、時折聞こえる嗚咽だけが残った。
****
教会のステンドグラスから差し込む柔らかな光が、白いタキシードを着た二人の姿を優しく照らしていた。
「汝、この者を生涯愛する事を誓いますか?」
神父の荘厳な声が響く。
タクマとカズキは互いの目を見つめ合い、同時に答えた。
「誓います」
その瞬間、バサバサバサ……と、鐘の音に驚いた白い鳩たちが一斉に舞い上がった。
二人は白いタキシード姿で固く手を繋ぎ、唇を重ねる。
キスは長く、深く、参列した組織の仲間たちから温かい拍手が送られた。
式の後、特別区の男性妊娠専門病院の個室。
「先輩、信じられます? 俺と先輩のお腹に……新しい生命が宿ってるなんて……」
カズキが自分のまだ平らな腹にそっと手を当て、感動したように呟いた。
タクマも同じく自分の腹に手を置き、珍しく柔らかい表情で頷いた。
「確かに不思議だな。でも……何故か分かる。生命の息吹きってものが、本当のことだって」
検査の結果、二人は子宝の実が定着した直後という異例の早さで妊娠が確認された。
相性が極めて良かったためだと医師は説明していた。
子宝の実の捜査は、あの後GPSの異常を察知され、シンジケートの組織はほぼ壊滅。
表沙汰になることなく闇に葬られた。
二人の身柄はすぐに保護され、この特別区の病院へと移送されたのだった。
「ええ、不思議ですね……でも、こうやって先輩と結婚して、新しい家族ができると思うと、俺、ワクワクして……幸せすぎです!!」
カズキが目を輝かせてタクマに抱きついた。
タクマは照れくさそうに笑いながら、カズキの背中を優しく撫でた。
「そうだな」
ベッドに並んで座り、二人は静かに語り合った。
「ねぇ、先輩」
「何だ?」
「愛してます。心から」
「ふっ、俺もだ。愛している」
カズキが少し恥ずかしそうに続ける。
「俺、分かったんです。ずっとずっと前から先輩の事、好きだった。男同士だから……きっと目を背けていたんです」
「そうか。それは俺も同じかもな」
「先輩も?」
「ああ。だって、お前と一緒に仕事すると楽しいっていうか……胸がワクワクしてたまらないんだ。今思えば、それがまさに恋だったんだと思う」
「先輩って意外とピュアなんですね。可愛いっす」
「こら! 俺をバカにするな」
「いて、すんません!」
タクマが軽くカズキの頭を小突くと、二人は同時に笑い出した。
「それにな……お前の子供を産めると思うと嬉しいし、俺の子をお前が産んでくれると思うと、さらに嬉しい。これって、こうなる前から相思相愛だったからこそじゃないか」
「そうですね……」
甘い雰囲気が流れた後、カズキが悪戯っぽく目を細めた。
「先輩、ところで初夜の事ですが……」
「ん?」
「俺、やっぱり先輩のを入れて欲しいです。先輩ので掻き回されて、めちゃくちゃ感じたいから……いいですよね?」
「なっ、バカ言え。約束したろ? 初夜はお前が俺の中に入れるんだ。俺だってお前のが欲しくて、今も我慢してるんだぞ? まったく」
「え、そんなの嫌ですよ俺!」
「先輩命令だ。いいな?」
「そんなのずるいですって!! 結婚したんだから対等です!!!」
「ぷっ……あははは! そうだったな」
タクマが珍しく大きく笑った。
カズキも笑いながら提案する。
「じゃあ……この間、紹介のオーダーで作った双頭ディルドをつっこんで、ケツ擦りやるか? ヌポヌポって激しく出入りさせて、奥までぐちゃぐちゃにこねくり回して……」
「はい! そうしましょう!! 奥までガン突きで、俺、きっとまた潮噴いちゃいますけど」
「ふふ、すっかりエロい男の体になったな」
「先輩だってそうでしょ! すぐ我慢汁で水溜まり作るじゃないですか!」
「こら!」
「いてっ!」
二人は笑い合いながら軽くじゃれ合い、すぐに熱いキスを交わした。
「あははは! 先輩! 初夜、楽しみですね!」
「ああ、楽しみだ」
窓の外では、穏やかな夕陽が二人の未来を祝福するように輝いていた。
これから始まる、妊娠生活と子育て、そして影の組織での任務——
タクマとカズキの、甘くも熱い物語は、まだ始まったばかりだった。
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