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第16話
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「……っ、ふ、うぅ……っ!」
市場の怒号と笑い声が遠くで鳴り響く中、龍馬の体内を、幸人の細い指が無慈悲に侵略していた。
菊門の窄まりを強引に割り、ぬるりと滑り込んだその熱い指先が、角度を変えて——天上を、トントンと軽やかにノックする。
まるで、迷い込んだ見知らぬ部屋の主(あるじ)を呼び出すかのように。
「ァンッ……や、めて……っ。こんな、光の、ある場所で……っ」
「へぇ、りょうちゃん。ここじゃないなら、もっと暗いところでなら……ボクに暴かれてもいいの?」
「違っ、そんな……っ」
「違わないでしょ? ほら、ボクの指をこんなに熱く、情熱的に歓迎して……」
幸人は平然とした顔で、龍馬の最奥を弄び続ける。
絶望へと続く指折り。そのリズムが刻まれるたび、龍馬の理性が、砂の城のように足元から崩れていく。
耐え難い羞恥と、己の身体が「拒絶」を忘れて熱を帯びていくことへの恐怖。
龍馬は震える手で、幸人の肩を突き飛ばした。
「やめて……こんな、こんなこと、望んでなんて……っ! もし、あの方……当主様に見つかったら……!」
悲痛な叫び。だが、幸人は冷え切った月のような瞳で、あっさりと絶望を吐き捨てた。
「いいんじゃない? ……捨てられるだけでしょ」
その一言が、龍馬の心臓を直接握りつぶした。
(あの方に……捨てられる)
それは何を意味するのか。
独りでは息を吸うことすら許されない「玩具」として育てられた自分にとって、放逐は緩やかな死と同義だ。
子爵の元へ身を寄せたとしても、今の自分と同じままではいられない。
(何かが……僕の中で、音を立てて壊れていく)
ゾクリと、背筋を這い上がるような悪寒。
冷や汗が龍馬の白い項を伝い、地面に滴り落ちたその時。
幸人が座り込み、懐から数枚の紙片をちらつかせた。
「ねぇ、見て? これ。……ボクらの『愛の結晶』、よく撮れてるでしょ?」
「な、なに……それ……?」
差し出されたのは、銀塩に焼き付けられた「罪」の記録。
「この前、君と密会した時の写真だよ。……こっそり記念撮影をしてもらったんだ。ねぇ、子爵様?」
幸人が背後を振り返り、甘く艶やかな声をかける。
すると、日陰に潜んでいた蛇が鎌首をもたげるように、子爵がやれやれと肩をすくめて姿を現した。
「……あぁ。今この瞬間の『美しい絶望』も、余さずバッチリと撮らせてもらったよ」
「ッ!!」
龍馬の視界が、真っ白に明滅する。
幸人は龍馬の愕然とした表情を愛おしそうに見つめ、コロコロと、無邪気な悪魔のように笑い転げた。
「地獄へようこそ、りょうちゃん。……君の光を、ボクらが真っ黒に塗りつぶしてあげる」
差し出された写真には、男の指を飲み込み、恍惚と恐怖の狭間で喘ぐ、自分ですら知らない「醜悪な龍馬」が鮮明に写し出されていた。
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