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第17話
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龍馬は、逃げ場を失った小動物のように肩を震わせ、先ほど買ったばかりの鯖を床に落とした。
籠から無惨に転げ落ちた銀色の魚は、市場の喧騒に紛れた鳥たちが即座に啄み、生温かい内臓を抉り、ボロボロに食い散らかしていく。
——それは、数刻後の自分の運命を映す鏡のようだった。
「ねぇ、りょうちゃん。僕と一緒に、世界で一番美しい地獄を見よう?」
幸人の甘い誘惑に、龍馬は首を激しく横に振る。
「嫌だ……、いやだ、いやだ……ッ!」
「……聞き分けがないね。子爵、よろしいですか?」
傍らに立つ影が、静かに、だが冷酷に頷く。
幸人は慈しむような微笑を浮かべたまま、龍馬の溝打ちに——躊躇(ためら)いもなく拳を捩じ込んだ。
「グッ……ァ、ぁ……っ!」
肺から酸素が強制的に押し出され、視界が火花の散るような白に染まる。
遠のいていく意識の縁(ふち)で、幸人の囁きが鼓膜にこびりついた。
「おやすみ、りょうちゃん。……次に起きた時は、もう戻れない『地獄行きの馬車』の中だよ」
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重い瞼を持ち上げた時、最初に出迎えたのは腹部を焼くような鈍い痛みだった。
次第に覚醒していく意識の中で、龍馬は己の異変に気づく。
背中に触れるのは、粗末な馬車の床の冷たさ。そして——。
「なに、これ……っ」
身に纏うものは何一つなく、晒された両足の足首には、鈍く光る鉄鎖が繋がれていた。
龍馬が絶望に身を捩ろうとしたその時、暗がりに潜んでいた熱が声を上げる。
「おはよう、りょうちゃん。よく眠れた?」
「幸君……っ! 何、これ……外して。恥ずかしい……こんな、格好……ッ、ぁ、ンッ!?」
突如として背筋を貫いたのは、身を焦がすような甘美な快楽だった。
震える足元に視線を落とせば、そこには子爵が跪いていた。
痺れの残る足の指を、子爵のぬらりと湿った厚い舌先が、下から上へと丹念に舐め上げている。
「ァ、ン……ンンゥ……っ! やめ……やめて……っ」
「……おや、足が弱いのかな? 薬で若干感覚を麻痺させているというのに、これほどまでに淫らな反応を返すなんて」
子爵の称賛は、龍馬にとっては何よりの毒だった。
感覚が混濁し、痺れが快楽を増幅させる地獄。
追い打ちをかけるように、幸人が龍馬の股間に足をかけ、滴り落ちる先走りに濡れた肉棒を、土足のまま軽く踏みつけた。
指先で薄い皮を擦り上げるような、無慈悲で情熱的な蹂躙。
「ほら、見てよ。身体はこんなに正直に、ボクらを欲しがってる。……ねぇ、りょうちゃん?」
馬車の揺れに合わせて、鎖の音がガチャンと虚しく鳴り響いた。
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