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20.体調優先

 俺は大我くんと大学までの道のりを並んで歩いていた。  あの後伊吹さんとの事は言えずじまいで、とても気まずい雰囲気だった。  そんな俺の心境を知らずか、大我くんは眠そうに欠伸ばかりしていた。   「あー、ねみぃ……俺寝たの何時だと思う?」 「朝方とか?」 「そうなんだけど~、なんと6時!コンビニは4時に終わったんだけどさ~、そっから動画見てたらいつの間にか6時になってて~、さすがにヤベェと思って寝たんだけど、あんま意味無かったわ。どうせなら寝ずにオールしてた方がまだダルく無かったかも~」 「今さっき寝たばかりだったんだね、体大丈夫?バイトを減らす事は出来ないの?」 「減らすのはキツいかもな~。稼がないと伊吹に会えないし~?」 「…………」 「そういや部屋にいる時何か話そうとしてたよな?」 「うん……」 「何ー?伊吹がどうとか言ってたけど?」  大我くんは目を擦りながら、俺を覗き込んで来る。  早く言わなきゃ。  で、でも体調が万全じゃない大我くんに話しても平気かな?  もっとちゃんとしてる時の方が落ち着いて聞いてくれるんじゃないかな?  俺が言おうかどうか迷っていると、後ろから来た人が大我くんに声を掛けて来た。 「派手なのいるなって思ったら大我じゃん!この時間に出歩いてるなんて珍し!」 「おう、まぁな……ハハ」  明らかに元気の無い返事だった。  いつもの大我くんなら誰に対しても、どんな茶化しにも笑顔で明るく対応するのに、今はなんて言うかフラフラしててとても不健康そうだ。  目は半分しか開いてないし、目の下に出来たクマが痛々しい。  とてもじゃないけど、こんな状態の大我くんに伊吹さんとの話なんて出来ないよ。 「で?伊吹がどうしたー?」  大我くんの友達がいなくなった後、話を続けようとして来たけど、俺は大我くんの体調を最優先にする事にした。 「大我くん、やっぱり今日は帰って休んだ方がいいよ。そしてバイトも無理の無いシフトを組んだ方がいい。その状態で授業に出ても内容が入って来ないだろうし、体に負担も大きくなるし悪循環だよ」 「言っただろー?俺はもう後がねぇんだって。それにバイト減らしたら伊吹に会え……なくなる……から……」 「ほら!喋りながら寝ようとしてるじゃないか!そんなんじゃ心配で俺がどうかしちゃうよ!お願いだからちゃんと規則正しい生活をして?俺も出来る限り協力するから」 「ナオキング……お前っ!」  俺が説得するように言うと、大我くんは眠そうな目を潤ませてうんうんと大きく頷いた。  そして俺の肩をガシッと掴んでこう言った。 「分かった!ナオキングの言う事を聞いて今日は帰って寝る!だけど、頼みがあるんだ」 「本当?良かった。うん、俺に出来る事ならやるよ♪」 「俺が起きる前に頭撫でてくれただろ?あれやってくんね?」  甘えるように頼んで来るけど、俺は思い出して恥ずかしくなった。  だって、寝てると思ってたからやったのに、まさか覚えていたなんて。 「あ、気付いてたの?勝手に触ってごめんね」 「全然触っていいから♪あれちょー気持ち良くてさ~。何かガキの頃思い出して心地が良かったんだ♪俺三人兄弟の末っ子で、上二人とは歳離れててさ~!俺がガキの頃良くやってもらってたんだ♪」 「大我くんはお兄さんがいるんだね。はは、それ聞いたら大我くんが明るくて人気者なのが何となく分かったかも♪」  きっと末っ子として愛情をいっぱい受けて育って来たんだね。  だからいつも明るくて前向きでいられるんだ。  たくさんの愛を知っていて、それを素直に受け取る事も知っている。  俺は大我くんの事を知れたみたいでちょっと嬉しくなった。 「だろー?俺って愛されキャラなんだって~♪よし!そうと決まれば帰るぞ!」 「あっ、そっか!俺も帰るって事か!」  大我くんは俺の手を握ってくるっと振り向き来た道を引き返していく。  俺、まだやるとは言ってないんだけどな……  でも、大我くんのお願いは聞いてあげたい。  だから俺は初めて学校を休む事にした。

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