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第42話 守る
執務室に戻ると、ダートと同じく今夜が深夜勤のはずのスコットが待機していた。
「室長、お待ちしていました。」
「ん?」
「あの、室員の召集についてです。集まれる時間帯を確認しました。」
そうだった、室員全員を集めるために、スコットに調整を依頼していたんだった。
「ありがとう、助かる。いつ?」
「明日、朝の時間帯ですね。直前ですみません。」
手慣れた様子で、いつのまにか用意していた茶を出してくれながらスコットが言う。
なるほど、ようやく明日朝で調整できたので、時間外なのにきてくれたわけだ。
「いやいや、いいよ。時間外なのにわざわざありがとう。助かった。」
いえ。軽く首を振って返したスコットは、ソファに腰を下ろすと、アーネストを見上げた。
「何かの会議ですか?指示いただいた通り部屋も押さえていますけど。」
アーネストは、執務机の椅子に深く腰掛けて、返答した。
「うん。――この間の事故の、振り返り会って感じかな。」
それから少し考えて、付け足す。
「深夜勤明けの君らがいるから、手早く済ませないとね。」
「お気遣い痛み入ります。」
スコットの仰々しい返答に二人で笑う。
ああ、大丈夫だ。自分たちは、次に進める準備ができている。
――そう思えた。
翌朝、部屋に集まった室員達と、アーネストが怪我を負った事故に関連する一連の任務の振り返りを行った。
まず、ウィズに任せた王都周辺域の報告と所感を全員で共有し、意見を交わした。
次にアーネスト達が赴いた地域の情報、対応を共有した。概ねは書記官と確認した内容と相違ない進行だったが、沼の水位調整に際して、共鳴具を利用したことについて、アーネストは、ここでは隠すことなく室員に伝えた。
ここで共鳴具の利用について触れることは、事前にダートには合意をとっていた。
――室員に、共鳴具の利用があったことを伝えたい。
官舎へと戻る道すがら、そう切り出した。
「皆さんに、先輩方に、ということですか。」
頷いてみせると、ダートは少しだけ何かを考えるように首を傾げ、それから、はい。と頷いた。
右の手を取られたまま、ゆっくりと歩く。
ダートも、それ以上何か言うことはなかった。
「――離れた位置で、意思の疎通を実現する手段として、今回は、フリードが僕に預けてくれていた、共鳴具を緊急に使わせてもらった。」
沼の事例説明に際してそう説明すると、何名かの視線がダートへと向かい、それからまたアーネストに戻ってきた。
二人が番いであること、あえて口にしてはいなかったが、すでに周知の事実であり、隠す必要はなかった。室員達の態度も特に変わることはなく、――アーネストの扱いがやや過保護に傾いたような気はするが、視力の問題が解決すれば、これもやがて解消することだとアーネストには感じられていた。
事前に合図を決め、現場と操作側とでコントロールしながら調整を行ったこと。これにより、この現場としては最善の結果を得ることができたことも共有された。
伏流に関する質問は特になく、アーネストは、続けて事故が発生した任務と、それらの判断の説明をした。
「僕の魔力を使ってもらったことについては、率直に言って賭けに等しい判断だった。これは素直に認めるよ。それに、これはここが番いだからできたことでもある。だから、」
ここ、と言いながら、ダートと自分をしめす。
室員達の表情はやや硬く、これがかなり踏み込んだ説明であることを物語っていた。もちろん、アーネストも、それ以上まで踏み込ませるつもりはなかったが。
「この場での判断について、ここでこれ以上話をするつもりはない。理解してほしい。」
口をひらく者はおらず、数名は小さく頷いた。
少し、ホッとした。
「だが、――手に負えない事態と、手を離せない事態とは同時にやってくることもある。」
そこで、室員達の顔を見渡した。
ここが、自分の守りたい師団だった。
自然と、微笑むことができた。
「だから、せめて手は離せなくても、助けを呼ぶ、意思を伝える手段を持っておきたい。――君らを、守るためにも。」
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