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第54話 再会

 ――炉環師団。  新しく戴いた師団名を、口の中で反芻する。  焔を抱く者。その想いを受け取り、巡らせる者。  それは、自分が守りたいと思っていたこの師団に、ウルラ達を含めることが許されたような、――そんな名前だった。  何かを思う前に、体が動いた。  閣下に向かって背筋を正し、胸に拳を当てる。  左手を剣の柄に添え、騎士としての最大級の礼を示した。  すぐ後ろでも、微かに衣擦れの音が聞こえ、ダートが礼の姿勢をとったことが察せられる。  そして、次々と室員……、師団員達が同じように例の姿勢をとった。  一瞬の静寂を受けて、アーネストは閣下への返答を述べた。  陛下のお心遣いと、ご心配への感謝は溢れるほどあって、だからこそ、余分な言葉は必要はないと思った。 「――謹んで、拝命いたします。」 「確かに。」  宰相閣下のお声かけで姿勢を楽にしたところで、閣下が一枚の紙を差し出した。  一歩前に出て恭しく受け取る。  それは、炉環師団任命にかかる、諸般調整の指示書だった。    閣下はそれからこう続けた。 「それでね。陛下は先般の君の怪我のことについて、いたく心を痛めておいでだった。なので、こちらに――」  小ぶりの、布張りの箱を取り出して、アーネストへと手渡した。  指示書と同じようにして、両手で確かに頂戴する。 「これは、陛下からのお心遣いの品だ。開けてみなさい。」 「――はい。」  指示書を脇に挟み――、書記官が預かってくれたので手渡し、慎重に箱を開ける。  そこには、薄いガラスのレンズが、細い金属製の枠に収められた、モノクルがあった。  思わぬお心遣いに、息が止まった。  以前に見た時には、なんとも頼りない存在に見えたそのモノクルが、今、陛下のお心を背負ってアーネストの手元に佇んでいた。 「――つけてみなさい。無理なく装着できるよう、魔導課が腐心してくれたそうだ。」  閣下の手が、アーネストから小箱を引き受け、アーネストの手のひらにモノクルを乗せた。  少し、震える指で、右目にモノクルをあてがう。すると、吸い付くようにモノクルがそこにおさまった。  顔を上げる。  こちらを興味深そうに見る人々の顔、ウィズ、師団員達、それから、  ――ダートの瞳が、陽の光を受けて、青く揺れているのが見えた。

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