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余韻09 誰にも言わない

「フリード、昨日師団長と一緒じゃなかったん?」  師団長のご自宅から出勤してすぐ、早番明けのヘイデンさんに問われて振り返った。 「一緒でしたよ。――何かありましたか」 「え、今日師団長普通に仕事してたから。昨日フリードと一緒じゃなかったんだっけと思っ……てぇ!」  ヘイデンさんの背後から近づいてきたスコット先輩が、後頭部からスパンとヘイデンさんの頭をはたき上げた。 「お前、そう言うこと人に聞くなよ。フリードも答えんな」  師団長の背中の白さと、キスできない物足りなさをぶつけたうなじ、それから、うなじを噛むたびにもどかしそうに揺れた腰と、枕に吸い込まれていった甘い啼き声――が一瞬脳裏をよぎりはした。  ――でも、聞かれてこまることを答えたつもりはなかったけどな。  そう思いながらも、はい。と答えると、スコット先輩は少し胡乱げな目をしてこちらをみたあと、「ともかくお前だ!」と、ヘイデンさんを引きずって待機室を出ていった。  昨日は、途中までは優しい恋人同士、の時間を師団長が作ってくれた。爪を手入れしてもらい――その丸くなった指先で、その後、中をかき混ぜていい、と許可をいただいたようで、実はかなり興奮した。もう一度おひげ剃りをさせてももらえた。  一時的な盲目の間、清拭の手伝いを断られた時にはもどかしく思ったが、あの、光を映さない瞳にずっと見つめられながらしたひげ剃りのお手伝いは、おそらく一生忘れることができない。  顎下、顎のライン、耳の下。  唇の下、鼻の下、大きく撫でると少し気持ちよさそうにする頬。  ――道の、場所。  どこに触れても、緊張でこわばった体を震わせて、浅く跳ねるような呼吸と、潤んだ、開きっぱなしの瞳。  ものすごく淫らだと思った。  ――正直、師団長は、緊張を押し殺している時が一番破壊力がある。  初めて、魔力譲渡中の姿を見せてもらった時、眉根を寄せて目を閉じ、呼吸を押し殺して身を固め、時々身じろぎする様子を見て――。  例えようもない背徳感と、見てはならないものを見てしまったような罪悪感と、それから、――師団長を()()しているのが自分だ、と言う仄暗い喜びが自分の中に湧き上がったのを今でも覚えている。  普段の、少しとぼけたところもある師団長もかわいいが、自分しか知らない姿があるので、――ダートには何も問題はなかった。 「お帰りになる前に顔見とこう」  その日の予定を確認し直し、事務から書類などが届いていないかを確認し、――それから、執務室へ向けて、ダートは足を踏み出した。    師団長へ、ご挨拶に。

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