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余韻11 おくりもの

「師団長って、ピアノもお上手だったんですねえ……」  式典とパーティの警護を終えた深夜、師団に戻ってきたスコットがそんなことを言うので、アーネストは思わず笑ってしまった。 「あれは、――上手な人なら弾かない曲だと思うなぁ」  アーネストの言葉に、驚いたように眉毛を跳ね上げるスコットにセドリックが言う。 「子供の頃に習う中で、中級からもう少しくらいのレベルになる楽曲だよ。――でも、ああして楽団と合わせれば、十分宮廷音楽になるし、耳馴染みがよくて人々に愛される曲だから、」  そこでセドリックがアーネストの方をみて、少しだけイタズラっぽく笑った。 「失敗するとちょっと目立つんですよね」 「そーーーーなんだよ……。」  だからこそ、とにかく足繁く楽団に通い詰めて練習をさせてもらい、魔法の展開を考えるために何度も演奏をしてもらい、楽団の演出家とも何度も打ち合わせをした。  ――とにかく練習が大変だった。  しかも、このアーネストのパフォーマンスは、明らかにアーネストが一人でやっていることが分かるようにすること。  という陛下からの但し書きがつけられており、そもそも何をするべきなのかを決めるところから悩ましかったし、決めたら決めたで、書記官から「当日師団員達を存分に驚かせてください」などと言われて……。  つまり、アーネストはなぜだか今回のパフォーマンスを、完全な孤独の中で戦わなければならなかったのだ。 「もう二度としない……」  普段とは全く違う緊張でぐったりとしたアーネストが、執務机の椅子でのびていると、いつもの声が上から降ってきた。 「聞きたかったです……」 「――あ」  目を開けると、アーネストを覗き込むダートと、デニスに追い出される他の師団員達の様子が見えた。 「――花、見えなかった?」  そのままの姿勢で失礼させてもらって、ダートに問う。  すると、最近置くようになった補助椅子――ダートがよくここに来てちょっとした仕事をするようになったので――に腰掛けて、アーネストの胸元をそっと叩いた。 「見えました。――とても、きれいでした」 「うん。――じゃあ、よかった」  ゆっくりと会話をする。  こういう時間すら、ここ最近は取れていなかった。 「だから、聞いてみたかったです。――できれば」 「えへぇ。」  できれば、と来るものだから、なんだかかわいくなってしまって、変な笑い声がでた。  どうしても、このかわいい恋人には喜んで欲しいのが男心だ。  ――どこかで、またいつか。  そう心に決めて、それからアーネストは姿勢を正した。 「さ、フリードくん。――帰ろうか。」 「――はい。」  この日は、帰宅が遅くなるので家を暖めておいて欲しい。と言ったアーネストのわがままを、使用人がしっかりと聞きとどけてくれていた。  火の番のために遅くまで残ってくれており、城下の空を彩った光の魔法をとにかく絶賛して、興奮した様子で帰っていった。 「素敵な新年の贈り物になりましたね」 「うーん、そうだなあ。――そうだと嬉しいなあ。」  少し嬉しくなって返事をするアーネストに、きっとそうですよ、とダートが笑いかけた。 「それで……、師団長への贈り物は、何がいいですか?」  もう早速、抱き寄せたアーネストのおでこやら鼻先やらに唇を落としながらダートがそんなことを聞くので、なんだかかわいくなってしまって、アーネストは笑いながら答えた。 「優しい恋人に、奥まで優しくねぎらって欲しいなあ」  ぐっ、と息を止めたダートが、小さく答えた。 「――そういうの、……えろくてずるいです」 「えへ」

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