70 / 82
余韻12 お願いごと
ひとつだけ、いいですか。
そう、可愛い恋人が神妙な顔で聞くので、先を促してやると、ダートが思いがけないことをアーネストに言った。
「その、……後ろからだと、お顔が見えないので、――俺は嫌です」
「――あぁ……」
少し前に後ろからの対位を示してやったところだった。そういえば口さみしかったのか、ものすごくうなじに噛みつかれたという記憶も蘇る。
「後ろからは、好きじゃない?」
「――もし、他に何があるなら、できれば……。」
――かっわいい……!
もう何度目、ダートに対して思ったことかわからない感嘆を胸に、いくつかの対位を思い浮かべて、ダートにキスをしてやった。
「じゃあ、今日は俺が好きにしていい?」
「――贈り物なので……。」
それで、にんまりと笑ったのを、少し不安そうに見つめるダートを、アーネストは浴室へとせきたてた。
「――これさ、舐めてもいい?」
――実は。
交渉の三回目で、顔にかけられるきっかけとなった事件以来、アーネストは口ですることを封印していた。
だが、実はお口でしてあげるのは結構好きな方なのだ。キスもそうだが、それが気持ちいいから、というよりも、それで相手が気持ちよさそうにしてくれるのが、その反応を見るのが楽しくて、嬉しくて、アーネストは好きだった。
「い、……いいんですか」
「したいな」
寝台に座らせたダートの上に、覆い被さるように迫って、ガウンの合わせから手を差し入れる。
すでに固く立ち上がっている熱に、少しだけ中指の背を沿わせた。
「――――っ」
筋肉に覆われた腹がぎゅうとしまって、太ももに力が入った。
その反応を見て、アーネストは思わず唾を飲む。
「――いい?」
顔を近づけて、鼻先を少し触れ合わせると、ダートがアーネストを追って、唇を触れさせた。
すぐに離れたそれが、了承の合図だったと知れて、アーネストは微笑んでから膝を折って、ダートのガウンの紐をほどいた。
下腹に沿うように勃起した熱に、舌先を這わせる。裏側を、下から、上へ。
以前通りに、ほとんど最大限充血していたが、その最初の一撃を、ダートは腹に力を入れて堪えたようだった。
チラと上を見上げると、深く呼吸をして、冷静でいようとするダートと目線がぶつかり、アーネストの背中がぞくりと震えた。
大きく口を開けて、ダートの熱を口の中に収める。――全ては収まらないが、舌で歯列をガードして喉奥へ誘うと、ダートの腰が震えて、アーネストの上顎が刺激された。
「んんっ」
思わず声を上げたアーネストの頭を、ダートの大きな手が撫でて、耳をくすぐる。
その手に、くらくらするような感覚を味わいながら、夢中で口を使っていると、目の前の腹筋が、腕の下の太ももがびくびくと跳ねて、ダートの荒い息遣いが耳の奥をくすぐって、――不意にダートの手が、アーネストの頭を掴んで、その顔を遠ざけさせた。
「――――っ」
アーネストも同じように息が上がっていて、すぐに声が出なかったが、なんとか整えて、文句を言う。
「――っ、最後まで、させてよ、フリードくん」
「――だめ、です。」
言葉と共に、少し怒ったような、いつもより強いダートの目が、
まっすぐにアーネストを射抜いていた。
その荒い息遣いのまま、膝立ちのアーネストに、唇が降ってくる。
もう、口を塞ぐことはできなくて、呼吸を奪い合い、与え合いながら、ダートの膝の上に乗せられた。
背中、腰、尻とダートの手に触れられて、その度に触れられた場所が跳ねて、喉奥で小さな声が鳴る。
やがて入り口に指が添えられた時、アーネストはすっかりダートの体にもたれかかって、小さく震えるようにしがみついていた。
「――このまま」
ダートが、アーネストごと一瞬腰を上げて、寝台に深く腰掛け直した。
「このまま、入っても、いいですか」
ぬるりと香油のぬめる入り口を指先でなぞられ、腰が震えるのを感じながらアーネストは頷く。
「うん……、このまま、――ぁっ、ん」
アーネストの同意とともに入ってきた太い指は、いつもより遠慮がちに中をくすぐり、
それから、入 り 口 ご と アーネストを揺らした。
「――――っっ!!」
声もなくダートにすがりついたアーネストの耳に、ダートのかすれた声が注ぎ込まれた。
「――めちゃくちゃ、かわいいです」
――それは、……よかった。
このかわいい恋人から、そんなことを言われる日が来るとは思ってもみなかったけれど、
つまり、ダートに、何か刺さったってことだ。
「うん……。ダート、中、おいで……」
「――っ、はい」
それでも、ダートの指はまだそこに居座ったまま、ぐり……、とアーネストの奥を拓き始めた。
「ぁ、……ぁあ」
もどかしさと期待に思わず腰をくねらせると、その動きに合わせてダートの舌がアーネストの耳元をなぞる。
「師団長……」
――ああ、なんだかこんな時にそう呼ばれるのは、背徳的だ。
逃げるように浮かせた腰をダートの腕に捉えられて、喉の奥で小さな悲鳴が上がる。
「ダート」
「はい」
中をなぞる指が増えて、それも柔らかく飲み込むために、体の力を意識して抜く。
「――ダート」
腰を揺らすと、股関にダートの熱が触れる。
「中……、早く……」
肩口にすがりついていた顔をあげて、ダートを見つめる。
少し力の入る眉間に唇を落として、それから鼻先、迎え入れられて唇を合わせる。
ゆっくりと指が抜かれて、ダートに腰を引き寄せられた。
ぬるりとした、熱いかたまり。
それが入り口を一度、二度こすって、アーネストの喉が鳴る。
――早く。
「んんっ」
唇を合わせたまま抗議をすると、目の前、青く揺れる目が少し細くなって、それから、もう一度入り口に熱があてがわれた。
少し唇が離れて、目を合わせたまま、ダートがささやく。
「――好きです」
そのまなざしと、優しい声に。
ぎゅう、と、胸の中が引き絞られるみたいに、痛くなった。
「――――っあ!ぁ……、ぁぁ!」
途端に入り込んできた熱に、思わず眉を寄せる。
つい逃げ腰になったのを引き寄せられて、一番いいところまでいっぺんに突き上げられた。
もっとその目を見ていたかったのに、
中をぬるりと擦り上げる熱に、姿勢を保てなくて――
「――ダー……ぁ、と」
目線が外れて、ダートの肩口にしがみついた。
いつのまにこんなに手練れになってしまったのか。
――少し、考えてみて、
すぐに、そんなこと考えていられなくなった。
「ぁ……、俺、も……」
「……はい」
ともだちにシェアしよう!

