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余韻12 お願いごと

 ひとつだけ、いいですか。  そう、可愛い恋人が神妙な顔で聞くので、先を促してやると、ダートが思いがけないことをアーネストに言った。 「その、……後ろからだと、お顔が見えないので、――俺は嫌です」 「――あぁ……」  少し前に後ろからの対位を示してやったところだった。そういえば口さみしかったのか、ものすごくうなじに噛みつかれたという記憶も蘇る。 「後ろからは、好きじゃない?」 「――もし、他に何があるなら、できれば……。」  ――かっわいい……!  もう何度目、ダートに対して思ったことかわからない感嘆を胸に、いくつかの対位を思い浮かべて、ダートにキスをしてやった。 「じゃあ、今日は俺が好きにしていい?」 「――贈り物なので……。」  それで、にんまりと笑ったのを、少し不安そうに見つめるダートを、アーネストは浴室へとせきたてた。 「――これさ、舐めてもいい?」  ――実は。  交渉の三回目で、顔にかけられるきっかけとなった事件以来、アーネストは口ですることを封印していた。  だが、実はお口でしてあげるのは結構好きな方なのだ。キスもそうだが、それが気持ちいいから、というよりも、それで相手が気持ちよさそうにしてくれるのが、その反応を見るのが楽しくて、嬉しくて、アーネストは好きだった。 「い、……いいんですか」 「したいな」  寝台に座らせたダートの上に、覆い被さるように迫って、ガウンの合わせから手を差し入れる。  すでに固く立ち上がっている熱に、少しだけ中指の背を沿わせた。 「――――っ」  筋肉に覆われた腹がぎゅうとしまって、太ももに力が入った。  その反応を見て、アーネストは思わず唾を飲む。 「――いい?」  顔を近づけて、鼻先を少し触れ合わせると、ダートがアーネストを追って、唇を触れさせた。  すぐに離れたそれが、了承の合図だったと知れて、アーネストは微笑んでから膝を折って、ダートのガウンの紐をほどいた。  下腹に沿うように勃起した熱に、舌先を這わせる。裏側を、下から、上へ。  以前通りに、ほとんど最大限充血していたが、その最初の一撃を、ダートは腹に力を入れて堪えたようだった。  チラと上を見上げると、深く呼吸をして、冷静でいようとするダートと目線がぶつかり、アーネストの背中がぞくりと震えた。  大きく口を開けて、ダートの熱を口の中に収める。――全ては収まらないが、舌で歯列をガードして喉奥へ誘うと、ダートの腰が震えて、アーネストの上顎が刺激された。 「んんっ」  思わず声を上げたアーネストの頭を、ダートの大きな手が撫でて、耳をくすぐる。  その手に、くらくらするような感覚を味わいながら、夢中で口を使っていると、目の前の腹筋が、腕の下の太ももがびくびくと跳ねて、ダートの荒い息遣いが耳の奥をくすぐって、――不意にダートの手が、アーネストの頭を掴んで、その顔を遠ざけさせた。 「――――っ」  アーネストも同じように息が上がっていて、すぐに声が出なかったが、なんとか整えて、文句を言う。 「――っ、最後まで、させてよ、フリードくん」 「――だめ、です。」  言葉と共に、少し怒ったような、いつもより強いダートの目が、  まっすぐにアーネストを射抜いていた。  その荒い息遣いのまま、膝立ちのアーネストに、唇が降ってくる。  もう、口を塞ぐことはできなくて、呼吸を奪い合い、与え合いながら、ダートの膝の上に乗せられた。  背中、腰、尻とダートの手に触れられて、その度に触れられた場所が跳ねて、喉奥で小さな声が鳴る。  やがて入り口に指が添えられた時、アーネストはすっかりダートの体にもたれかかって、小さく震えるようにしがみついていた。 「――このまま」  ダートが、アーネストごと一瞬腰を上げて、寝台に深く腰掛け直した。 「このまま、入っても、いいですか」  ぬるりと香油のぬめる入り口を指先でなぞられ、腰が震えるのを感じながらアーネストは頷く。 「うん……、このまま、――ぁっ、ん」  アーネストの同意とともに入ってきた太い指は、いつもより遠慮がちに中をくすぐり、  それから、()()()()()アーネストを揺らした。 「――――っっ!!」  声もなくダートにすがりついたアーネストの耳に、ダートのかすれた声が注ぎ込まれた。 「――めちゃくちゃ、かわいいです」  ――それは、……よかった。  このかわいい恋人から、そんなことを言われる日が来るとは思ってもみなかったけれど、  つまり、ダートに、何か刺さったってことだ。 「うん……。ダート、中、おいで……」 「――っ、はい」  それでも、ダートの指はまだそこに居座ったまま、ぐり……、とアーネストの奥を拓き始めた。 「ぁ、……ぁあ」  もどかしさと期待に思わず腰をくねらせると、その動きに合わせてダートの舌がアーネストの耳元をなぞる。 「師団長……」  ――ああ、なんだかこんな時にそう呼ばれるのは、背徳的だ。  逃げるように浮かせた腰をダートの腕に捉えられて、喉の奥で小さな悲鳴が上がる。 「ダート」 「はい」  中をなぞる指が増えて、それも柔らかく飲み込むために、体の力を意識して抜く。 「――ダート」  腰を揺らすと、股関にダートの熱が触れる。 「中……、早く……」  肩口にすがりついていた顔をあげて、ダートを見つめる。  少し力の入る眉間に唇を落として、それから鼻先、迎え入れられて唇を合わせる。  ゆっくりと指が抜かれて、ダートに腰を引き寄せられた。  ぬるりとした、熱いかたまり。  それが入り口を一度、二度こすって、アーネストの喉が鳴る。  ――早く。 「んんっ」  唇を合わせたまま抗議をすると、目の前、青く揺れる目が少し細くなって、それから、もう一度入り口に熱があてがわれた。  少し唇が離れて、目を合わせたまま、ダートがささやく。   「――好きです」    そのまなざしと、優しい声に。  ぎゅう、と、胸の中が引き絞られるみたいに、痛くなった。   「――――っあ!ぁ……、ぁぁ!」  途端に入り込んできた熱に、思わず眉を寄せる。  つい逃げ腰になったのを引き寄せられて、一番いいところまでいっぺんに突き上げられた。  もっとその目を見ていたかったのに、  中をぬるりと擦り上げる熱に、姿勢を保てなくて――   「――ダー……ぁ、と」  目線が外れて、ダートの肩口にしがみついた。      いつのまにこんなに手練れになってしまったのか。  ――少し、考えてみて、  すぐに、そんなこと考えていられなくなった。 「ぁ……、俺、も……」 「……はい」

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