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余韻13 手まねき
「――――――っ、ぁ……、ふぁ」
誰かの息づかいが聞こえる。
無防備な、声。
安心しきって体を委ねた時に、鼻の奥から脳天をすり抜けるようにしてこぼれてくる声。
「しつちょう……」
……ダートの低い声。
ダート――――?
「ぅ……、っん、ぅぁ、あぁ!」
一気に意識が覚醒した。
だが、体の主導権を取り戻せず、身体中が小さく跳ねて、その度にぐるぐる熱が回るのを呆然と知覚するしかなかった。
「室長……」
「なに……、ダート、これ、なん……」
整わない息継ぎの合間、なんとか声をあげてみると、首元からびりびりと震えが走り、また声がこぼれた。
首元を甘噛みされていたらしい。
アーネストの首元からダートが顔を起こし、嬉しそうな顔でこちらを覗き込んできた。
――また噛みつき虫……
「――ぅぅん、ぁっ」
ダートが体勢を変えた拍子、中に押し込まれていた熱が腸壁をこすった。
甘い痺れがそこからわき出て、腹の中から背中まで這い回る。
抑えきれていない声がほろほろとこぼれて、胸を引きしぼられるような感覚と、身体中をぞくぞくとかけまわる震えとが湧き起こった。
それだけで、アーネストはペニスの先から力なく吐精した。
腰がびくびくと跳ね、つられて大臀筋がひきしぼられ、アーネストが、中にいるダートにぎゅうぎゅうと抱きついていた。
顔の横に投げ出された腕をダートの肩に乗せると、そこは汗でしっとりと濡れていた。
「――気づきましたか」
言いながら、触れるだけのキスを仕掛けたダートは、アーネストの腹の上に流れたぬるつきを指で塗り広げた。
「ひぁぁ、――っ」
その刺激だけで、また腰が揺れ、視界がブレる。
いつもはもっと抑えられているはずの声もとめどなくこぼれ落ちた。
その間も広がる、胸の痛み、喉のつかえるような感覚、
――ああ、ときめき、だ――がアーネストを襲う。
たまらなくなったアーネストは、ダートの背中に手を回してしがみついた。
「お前……、譲渡、してるな――?」
「――はい。そろそろ終わりそうです」
言いながら、ゆるゆると後ろを抜き差しされ、太もも、腰、背中と痺れが広がっていった。
呼吸が整わず、喘ぐような息遣いの合間合間で、また喉から無防備な声がこぼれ落ちる。
――その声をあげているのが自分だとは、にわかに信じ難かった。
目尻を親指でぬぐわれ、涙もこぼれ出ていたと知る。
なぜ、自分はこんなにも無抵抗なのか。
ダートは、何がそんなにも嬉しいのか――
「室長……」
少しずつまとまり始めていた思考が、久々に呼ばれたその名前と、重ねられた唇の熱さに散らばっていった。
「な――んで、その呼び方」
「――室長がおっしゃったので」
口を離して問うと、ダートから簡潔な答えが戻ってきた。
「俺が……?」
「おやすみだったので、譲渡を開始してみたら」
にこにこしながら、ダートが顔中に口付けを落としていく。
「室長が手招きしてくださって」
「んん、――ぁあっ!」
ゆさゆさ、と腰を揺さぶられ、胸の痛みと体の震えとがぶつかり合う。
「キスして、室長と呼んでほしいと言われて、……っそのまま――――っ」
「――――ぁああっ!」
先程の吐精の余韻も抜けきらないまま、ぶつかり合った熱が腰から背骨を伝って脳天を突き抜けていった。
ダートも、アーネストの体を強く抱きしめたまま息を詰まらせた。少しの間動きを止めると、吐き出したものをアーネストの中へ、中へと塗り込めるように腰を使って、それから腕の力を抜いた。
浅い呼吸を繰り返すアーネストに、後ろの濡れた感覚もが痺れになって体を伝わる。指先までも小刻みに震えていた。
「――室長」
声をあげることもできず、目線だけで反応すると、柔らかい目つきになったダートが、ゆっくりと息をしてから言った。
「めちゃくちゃかわいかったです。」
「――あほぅ」
ときめきの残滓が、アーネストから語彙も奪っていった。
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