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余韻23 挨拶

 そのあとは、ソファにかけたまま二人で食事をして、そのままそこで一度繋がった。  それから、理性を取り戻したダートに寝室へ運ばれて――  あとはもう、ずっと高みへ追い立てられて、何も出なくなって、意識を失うように眠りに落ちた。  夜中に魔力の譲渡もあったと思う。  夢うつつで、ダートの腕に優しく包み込まれたことを覚えている。  もっと、もっととすがるアーネストの腕をそのままに、ダートに体のあちこちを唇でなぞられて、甘噛みされて、ほとんど泣きながら果てのない頂上に上り詰め続けた。  それでも、もう次の日に体に力が入らないなんてことはないし、後ろの違和感がずっと続くなんてこともない。    けれど――  本当は、もっと見境なく夢中になって求めてほしくもあった。  贅沢なわがままだと言うことはわかっていた。  問題なければ、次の日にでも連れてくる。  アーネストは子爵にそう伝えておいたので、翌日は早速ダートと二人タウンハウスへと向かった。  まだ成人したての若い恋人を連れてきたことに、子爵はやや驚いていたが、話をしてしばらくする頃には、その驚きもとれたようだった。   「君の上官ではあるだろうが、――見ての通り少し迂闊なところのある男だ。  それでも、情は深いし責任感もある。何より、話をしていて、君のことをどれだけ大切にしているのかは手に取るようにわかる」  子爵の、――父親の言葉に、アーネストは面映いものを感じながら聞いていると、子爵はアーネストに目線を移して微笑んだ。  それから、改めてダートに目をやった。 「大切にしてやってください。親として、ただ一つの願いです」 「はい。――必ず。」  胸元の共鳴具が、じんと熱を持った気がした。  フリードの家名を戴くつもりであること、ダートのご家族のことも簡単に話をして、二人はそのままタウンハウスを後にした。  子爵から家紋のペンダントはそのまま持っておくように言われ、家を出てもブリュージュの人間であることに間違いはない、そうも言われた。  ペンダントと共に鎖にかかる共鳴具だけは、少し興味深そうに見つめられた。  私邸に戻ると、使用人が言伝を伝えにやってきた。  ダートの養い親からだった。 「このまま、伺おうか」 「はい。……お疲れではありませんか」 「まさか!君の方こそ気疲れしてない?」  アーネストの言葉に、ダートも微笑んで首を振り、口を開いた。 「子爵様は、室長に似ておいでです。無駄なことはおっしゃらず、それから、少し楽しそうにお話をされます」  そう言われて首を傾げる。 「……そうかな?」 「はい。……ですから、あまり緊張せずにすみました。」  思わず手が伸びて、頭をなでる。 「そっか。……それなら、よかった」  それから、二人で養い親殿を訪ね、結婚の申し込みをした。  王宮勤めの養い親殿は準結婚の制度をよくご存知で、アーネストの叙爵の話だけで全てをご理解くださった。  ただ一つ、陛下方からは、アーネストの血統を望まれているのではないか、ということだけご心配をいただいた。    道のことも踏まえて、そうでないことはわかっていた。  ただ、仮にそうでなかったとしても――  ダート以外に、アーネストの帰る場所などない。  陛下方からもしお許しをいただけなかったとしても、  お許しをいただけるようになるまで身を尽くすのみであること、なんとか、言葉にした。  うまく言えたかどうかはわからないけれども、二人で決めたことならばと、養い親殿にはお許しをいただいた。  フリードの家名をいただきたいことについては、ダートに一任するとも言っていただいた。    ダートとのことを、大切にしよう。  改めて、そう思った。 「室長、……ありがとうございました」  ご両親のお墓にもご挨拶をして、二人で歩く帰り道。  ダートがそっと言葉を形にした。 「……うん?」  少し顔を傾けて見やると、いつもより幼い顔つきをしたダートが、アーネストを見返した。 「養父に会ってくださって、ありがとうございます」  ――何そのかわいい顔。  嬉しくなって眺めていると、ダートが言葉を繋げた。 「養父には、色々と世話になりました。父は早くに亡くなりましたので、本当の、……父のような人です」 「……うん」  口にはしないけれども、  ダートに、よく似ていたなあ、と思う。  言葉の選び方や、重み。  ダートへ向ける、愛情。 「君には、親御さんが三人もいる。  ――俺は、お三方に恥じないように、君を大切にしないといけないね」  ダートの目が少し見開いて、それから嬉しそうに笑った。

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