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第4話
その日は、カイルがウォーカー家の人々と出会ってからちょうど4日目の朝だった。
異常なほどの身体の疼きとのどの渇きで目を覚ますと、隣にトラヴィスの姿はすでになかった。壁時計に目をやると、針はちょうど午前6時を指している。
カイルは、昨夜自分の身に起きた出来事をふいに思い出した。
なぜ、あの黒い狼だけでなく、白い狼までもが屋敷の中にいたのか。そして、ケヴィンと肌を重ねた感覚が、なぜこれほどまでに生々しく身体に残っているのか。
そもそも、どこまでが現実で、どこからが夢だったのか――。
すべてが不明瞭で、不可解だった。
カイルはそれ以上思考を巡らせるのを止め、這いずるようにしてシャワーを浴びた。手早く着替えを済ませると、重い足取りでトラヴィスを探しに一階へと下りていった。
「おはよう、カイル」
一階へ下りると、ダイニングにはウォーカー家の三人が勢揃いしていた。
トラヴィスが焼き立てのパンケーキを皿に盛り、アレックスは手際よくコーヒーを淹れ、ケヴィンは冷蔵庫からフルーツのボウルを取り出してテーブルへと運んでいる。
「みんな……おはよう」
「ほら、早く座って」
ケヴィンが慣れた手つきでカイルのために椅子を引く。カイルもまた、抗う術を知らないかのように促されるままそこへ腰を下ろした。こうして、当然の儀式であるかのように、ウォーカー家との朝食が始まった。
昨日や一昨日の出来事がすべて幻だったかのような、穏やかな時間が流れていた。たわいもない会話に冗談が混ざり、ウォーカー家の男たちは三人ともごく自然にカイルを輪に加える。カイルは、まるで自分も昔からこの家族の一員だったかのような錯覚に陥っていた。
まさにトラヴィスが言った通り、自分は「群れ」の一部なのだ。そう感じると嬉しさが込み上げ、カイルはついつい饒舌になっていた。
「そういえばみんな聞いて。……昨日、すごく変な夢を見たんだ。白い狼が、ケヴィンに変身する夢でさ……」
昨夜の出来事を面白おかしく話そうとしたその瞬間、男たちの視線が一斉にカイルへと突き刺さった。全員の食事が、同時に止まる。
カイルはただならぬ気配を察し、「この話……やめたほうがいい?」と苦笑いしながら三人の顔を窺った。
アレックスはケヴィンを激しく睨みつけ、トラヴィスも呆れ果てた顔で次男を見つめている。当のケヴィンは両手で顔を覆い、指の隙間から恐る恐る父と兄の様子を覗き見ていた。
「……それは面白い夢だな、カイル」
数秒間の重苦しい沈黙を破ったのは、トラヴィスだった。
「最近君はこの辺りで狼によく遭遇するからな。それで夢にまで出てきたのかもしれない」
「そうだね……」
トラヴィスは穏やかな笑顔をカイルに向けたが、アレックスは依然として眉間に皺を寄せたまま、殺気立つような視線でケヴィンを睨みつけていた。その圧迫感から逃れるように、ケヴィンは咳払いをしてカイルに話を振った。
「……ところで、アレックスは今日から仕事で街に戻るだろ? 俺も仕事だし、親父もバーの改築工事の立ち合いで朝からいない。カイルはどうするんだ?」
カイルは三人の顔を順に見つめた。この4日間の出来事があまりに刺激的で非現実的すぎたせいで、自分の本来の生活や人生をすっかり忘れていたことに気づく。
「ええと……実は、僕も今日は一度、実家に戻ろうと思っていて」
それは咄嗟の嘘ではなく、昨晩叔父から届いたメールのせいだった。
三日も姿を消した甥を心配した彼は、「いつ戻ってくるんだ」と連絡を寄越していたのだ。
「えっ、戻るのか!? 君がずっとここにいてくれるなら、俺、ここから仕事場に通うよ」
ケヴィンの唐突な提案に、アレックスとトラヴィスが同時に「ケヴィン……」と喉の奥で唸り声を漏らす。
だが、トラヴィスはすぐに「まあ、だが……君さえ良ければ、もちろんそうしてくれて構わないんだ」とはにかんだような笑顔をカイルに向けた。
「ありがとう。でも実は……こっちに戻ってきてから、叔父さんに実家の整理も書類手続きも任せきりだったから」
「なら、お前のタイミングでここに戻ってこい」
アレックスの低く、命令するような口調。その鋭い眼差しに射抜かれ、カイルはただ、人形のように首を縦に振ることしかできなかった。
――戻る。
その言葉を聞いたとき、カイルはこここそが自分の新しい居場所なのだと、確信に近い予感を抱いていた。
カイルが実家に戻ると、叔父のジョーがダイニングテーブルに山のような書類を広げ、気難しい顔でそれらを眺めていた。
「叔父さん、いろいろ任せきりにして……勝手にいなくなってごめん」
カイルに気づくと、ジョーは慌てて立ち上がり、彼を力一杯抱きしめた。
「おかえり。……気にするな。お前がこの家をあまり好いていないことは分かっていたから。ただ、行方が分からなくて心配だったんだよ。いくら成人した甥とはいえ、家族だからな」
ジョーはカイルの背中をポンポンと叩くと、落ち着かせるようにダイニングの椅子へと促した。
「ほら、コーヒーを淹れるから。あとで、お前にもサインしてもらわなきゃならない書類がいくつかあるんだ」
キッチンに向かったジョーがコーヒーメーカーのスイッチを入れ、棚からマグカップを取り出す。その背中を見つめながら、カイルはこの人には隠し事はできないと悟り、正直に打ち明けることにした。
「実は……ここ数日、ウォーカーさんという人と親しくなって、彼の家に泊めてもらっていたんだ」
「ウォーカーだ、と?」
カイルの言葉にジョーの手が止まった。ゆっくりと振り返ると、苦々しい表情でカイルをじっと見つめた。
「……何? 叔父さん、知っているの? ウォーカーさんのことを」
ジョーはマグカップをキッチンカウンターに乱暴に置くと、カイルの方へ歩み寄り、目の前の椅子に腰を下ろした。
「いいか、カイル。ウォーカー家には近づくな。二度とだ」
「……え? どうして? 何があったの?」
「……あれはお前がまだ幼い頃、五歳くらいの時の話だ。お前の親父が、ウォーカーに頼まれて彼の『犬』を治療したんだ」
その言葉を聞いた瞬間、カイルの脳裏の古い記憶が完全に蘇った。ある男、トラヴィスが、深手を負った黒い犬を連れて診療所にやってきたこと。
幼い日の記憶が完全に補完された。
「……それが、どうして問題なの?」
「あれは犬なんかじゃない。狼だ」
「えっ!? ……でも、狼を飼うなんてできないんじゃ」
「ああ、もちろん違法だ。兄貴も気づいていた。だが、お人好しの兄貴は怪我をした動物を放っておくことができず、結局治療してやったんだ。当然、通報もしなかった。そのせいで、調子に乗ったあいつは狼に何かあるたびに兄貴を頼るようになったんだ」
「狼……あの黒い狼が、トラヴィスの飼い犬……?」
カイルは叔父が語る「ウォーカー家の真実」に衝撃を受け、言葉を失った。
「あいつは確実に、違法に狼を飼っている。しかも一頭じゃない、二頭だ。もう一頭は、白いやつだ」
「白い狼……!?」
「うちの娘の、エリー…知ってるだろ?あの子の友達のウサギが逃げたんだよ、その2日後、またウォーカーのやつが血だらけのウサギを兄貴の診療所に連れてきたんだ。奴の側には口元が血だらけになった白い犬…のようなオオカミがいたらしい」
カイルはあの白いオオカミの事を思い浮かべ、もしやあのオオカミもトラヴィスの飼っているオオカミなのだろうかと思い始めた。
「それでも兄貴は、決してウォーカー家を売るような真似もしなければ、彼らの治療を拒むこともなかった……。いいか、カイル。だからこそ、あまり彼らとは関わらない方がいい。他にも何か違法なことに手を染めているのかもしれない。あのバーだって、裏で何を売っているのかわかったもんじゃない」
「叔父さん!でも、彼らは良い人たちだったよ……」
カイルはウォーカー家の人間が悪く言われることに耐えられず、思わず言葉を遮った。
「……お前はもう大人だから、俺がとやかく言う必要もないが。今の話は覚えておいてほしい。それだけだ」
「……わかった」
その後しばらく重い空気が二人を包んだが、ドリップ終了を告げるブザーがその沈黙を切り裂いた。ジョーは「この話はこれで終わりだ」と言うと、カウンターのマグカップにコーヒーを注ぎ、カイルに手渡した。
叔父との会話を終えたカイルは二階へ上がり、父親の書斎に向かった。山積みの段ボールをかき分け、彼の私物であった一冊の手帳を探し出す。
本当は父親のプライベートに踏み込むような真似はしたくなかった。だが、そこにはウォーカー家のオオカミに関することが書いてあるかもしれない――その一心で、カイルは必死にページをめくった。
残念ながら、ウォーカー家についての記述は見当たらなかった。しかし代わりに、ページの間から滑り落ちた一枚の写真に目が釘付けになった。
そこには、カイルが目撃したあの黒いオオカミと白いオオカミ、そして灰褐色のオオカミの三匹と……それらに囲まれて微笑む、生前の父親が写っていた。
叔父と共に大量の書類を整理したあと、カイルはかつて自分がよく遊んでいた公園へと向かった。
すでに日は暮れかけており、公園に人気はない。迫りくる夜の気配に、ふと人恋しくなったが、今はウォーカー家の面々、特にトラヴィスとどんな顔をして会えばいいのかわからない。カイルはひとりベンチに腰を下ろすと、そっと目を閉じて父のことに思いを馳せた。
その時だ。
「こんな時間に、こんなところで何をしている?」
カイルが驚いて目を開けると、そこにはアレックスが腕を組み、仁王立ちでこちらを見下ろしていた。
「……アレックス!」
「今夜は公園で野宿でもするつもりか?」
ただでさえ長身のアレックスに、座った状態で上から見下ろされるのは、得も言われぬ威圧感がある。カイルは息苦しさを覚え、慌ててベンチから立ち上がった。
「いや……もう帰るところだよ。アレックスこそ、学校の帰り?」
「ああ。ところで……今夜は俺の家に来い。夕飯は帰りに何か買って帰る。ほら、行くぞ」
「えっ……うん、ありがとう」
カイルはアレックスの強引な物言いにいつも身構えてしまうが、彼と話していると、まるで催眠術にでもかかったように抗えなくなってしまうのも事実だった。
アレックスの家は、公園から歩いて5分ほどの場所にあった。
「飲み物は水でいいか? アルコールもあるが……」
アレックスはテイクアウトした中華料理の容器をテーブルに並べながら、カイルに尋ねた。
「水で大丈夫だよ」
カイルは椅子に座り、落ち着かない様子でアレックスの部屋を見渡す。
ダークネイビーの壁を埋め尽くさんばかりの大きな本棚には、生物学や科学の専門書がびっしりと並んでいた。
壁には古い映画のポスターが貼られ、至る所に観葉植物が配置され、部屋の隅には一本のギターが立てかけられている。
シンプルで機能的だが、随所にこだわりが感じられる。なんともアレックスらしい部屋だと、カイルは思った。
グラスに水を注ぎながら、アレックスは「さて、お前の今日はどんな一日だった?」とカイルに尋ねた。
カイルはヌードルを啜る手を止め、意を決して、正直に話すことに決めた。
「実は……今日、叔父からとても複雑な話を聞いたんだ。君たちウォーカー家に関わることを」
カイルの真剣な面持ちに、アレックスは眉間に皺を寄せた。彼はグラスの水を一口含むと、いつものように腕を組み、射抜くような眼差しでカイルを見つめた。
「……それは、どういう話だ?」
カイルはジーンズのポケットに押し込んでいた写真――三匹のオオカミと父が写ったもの――を取り出すと、テーブルの上にそっと置いた。
「この写真に写っているのは、僕の父さんだ。そして、僕は……この三匹のオオカミについて知りたい。叔父は、トラヴィスが違法にオオカミを飼っていると思っている。もしかしたら君なら、何か知ってるんじゃないかと思って」
アレックスはしばらく無言のまま、その写真を凝視していた。やがて視線をカイルへと移すと、低く、地を這うような声でゆっくりと問いかけた。
「この話をするのは、俺が初めてか? 親父からは何も聞いていないのか」
「……うん。アレックス、君に聞くのが最初だよ。正直に言って、トラヴィスに聞けば、彼はきっと僕に優しい嘘をつく。僕を厄介事に巻き込まないために。ケヴィンだって同じだ。いつもの明るさで、上手にはぐらかされてしまう。……でも、君は違う。君なら、僕に真実を話してくれる気がするんだ」
カイルの真っ直ぐな言葉を受けても、アレックスの表情は動かない。
「お前の叔父は、親父がオオカミを飼っていると言ったな。ある意味では正解だ。……だが、親父自身がオオカミだとしたら?」
「え……? 何を言っているんだ??」
あまりに突飛な言葉にカイルが呆然としていると、アレックスは「来い」とだけ短く告げ、音もなく立ち上がった。
慌てて後を追ったカイルが辿り着いたのは、アレックスの寝室だった。
「あ、アレックス……?」
急な展開に不安を覚え、カイルは思わず声をかけた。だが、アレックスは背を向けたまま、無言で服を脱ぎ始めた。
ますます動揺したカイルが「アレックス、何をしてるんだ?」と問いかけたとき、下着一枚になった彼がゆっくりと振り返った。その唇には不敵な笑みが浮かんでいる。
「今からセックスでもすると思ったか?」
「なっ……!」
「お楽しみは後だ。まずはお前に、すべてを見てもらわないとな……」
アレックスはそう言うと、最後の一枚――下着に手をかけた。
「い、一体何の冗談だよ……?」
カイルはたまらず横を向き、目を逸らした。アレックスが下品な冗談を言う男だとは思えないが、この異常な状況にどう反応すればいいのかわからなかった。
「カイル、目を逸らすな」
またあの、抗うことのできない強い口調。カイルはおずおずと視線を彼に戻した。
「……あ……」
カイルの視線は、図らずもアレックスの下半身へと向いてしまった。だが次の瞬間、その「一部」が脈動し、不自然に形を変え始めた。
いや、形を変え始めたのはそこだけではない。
全身だ。彼の体が、骨を軋ませながら作り替えられていく。
逞しい肉体からは艶やかな黒い毛が溢れ出し、ヘーゼルの瞳は鋭い金色へと染まっていく。
二本の足で立っていたはずの人間は、いつの間にか四つ足の獣へと姿を変えていた。
そこにいたのはアレックスではなく、一頭の黒いオオカミだった。
「アレックス……?」
カイルは目の前の出来事が信じられず、ただその場に立ちすくむことしかできなかった。
黒いオオカミ――アレックスはゆっくりと歩み寄り、カイルの手に鼻先を寄せてふんふんと音を鳴らす。
その温かな呼気に、カイルは吸い寄せられるようにゆっくりとしゃがみ込んだ。至近距離で、アレックスの頭をそっと撫で、美しい金色の瞳を覗き込む。
「本当に……アレックスなの? 流石に、オオカミの姿じゃ喋れないよね……?」
カイルが夢中で頭や耳の後ろを撫で回していると、突如として黒い毛が引いていき、艶やかな肌へと質感が変わった。身体が少しずつせり上がり、ついには二足歩行の、人間のアレックスへと戻っていく。
「お前は、人間の俺よりもオオカミの俺の方が好きなのか?」
アレックスは自分を撫でていたカイルの手首を掴むと、力強く自分の方へと引き寄せた。全裸のアレックスの胸筋にぴったりと自分の胸が合わさり、いつの間にか反対の腕で腰を引き寄せられ、下着に覆われていないアレックスのペニスはカイルの腹部に強く押し付けられた。
「あ…あの、アレックス…」
「覚えているか?お前が夜中に俺の寝室に入って来た時の事。あの時お前は俺を抱きしめながら寝たんだ。お前に撫でられて、とても気持ちよかったよ」
アレックスの言葉を聞き、カイルはあれが夢ではなかったのだと悟った。
「人間の俺は、撫でてくれないのか?」
アレックスは掴んだままのカイルの手をそのまま自分の熱い塊に導き、触れさせた。
「あ…」
思わずびくりとしたカイルはつい手を引っ込めようとしたが、アレックスはそれを阻止した。その手は力強かったが、決して振りほどけないほどではなく、まるでカイルの意思を試すような絶妙な強さだった。
「あの日俺がどんな気持ちでお前の隣で寝たかわかるか?」
アレックスの熱い息を感じ背筋が痺れる。
カイルは湧き上がる興味と、性的興奮の波に自制心を失いかけていた。
「カイル、撫でろ」
アレックスの言葉はカイルの脳を直接コントロールするように響き、カイルはゆっくりと自分の手を動かした。
熱くて太いペニスにしっとりと指を巻き付けると優しく上下に扱くと、それはすぐに硬さを増し、腹部を叩くほどに上向いた。
瞬く間にプレカムを流し出しはじめたアレックスを愛おしく感じ、もっと悦ばせたい一心で、カイルは必死に愛撫した。
「カイル……ああ……すごく上手だ……」
カイルは、いつも無表情でクールな男の息が乱れていくのが、たまらなく悦かった。
自分が主導権を握っているような気分になり、このまま彼を果てさせてしまいたいと願う。
だが、その傲慢な期待はすぐに打ち砕かれた。
アレックスがカイルの手首を力強く掴み、愛撫を止めさせたのだ。
抗えない力で引き寄せられ、耳元で甘く、低い声が命令を囁いた。
「カイル、お前も脱げ」
アレックスはベッドのヘッドボードに背を預け、服を脱いでいくカイルの姿を鋭い眼差しで見つめていた。
カイルがすべてを脱ぎ捨てると、アレックスは「来い、さっきの続きだ」と短く告げ、誘うように軽くベッドを叩いた。
カイルがゆっくりとベッドに上がり、完全に立ちあがったアレックスのペニスに手を伸ばすと、アレックスは「今度は手を使うな」と言って、カイルの足を自分の方に向けさせた。
「あ…アレックス…」
シックスナインの体勢に動揺するカイルだったが、アレックスはそんな彼をまったく気にも留めず、カイルの腰から臀部のラインを撫で、そのままカイルのペニスをそっと握ると、程よい力で圧力をかけた。
「お前は俺に集中しろ」
アレックスをただ、イかせたい――カイルはその一心で咥えた。
もう躊躇など微塵もなく、まるでそれが世界で最も甘くて貴重なデザートのように必死で隅からすみまで味わった。
血管の一本一本をなぞる様に舐め、カリの部分まで残らず愛撫し、じわじわと沁みだす甘い蜜を必死で吸いあげる。
「クソ…っ」
アレックスの気持ちよさそうな呻き声に悦に入ったカイルは、さらに必死になって吸い続けていたが、突然、カイルは後ろの穴を触られびくりと身体を震わせた。
「あ…っ」
アレックスはカイルの蕾に潤滑剤をたらすと、ゆっくりとそこをマッサージし始めた。カイルのペニスはすっかり硬くなっており、アレックスと同じで、すでにプレカムでしっとりと濡れていた。アレックスはそれを味わうようにねっとりと舌を這わせると、ひくつく穴に一気に指を押し込んだ。
「あ…!」
アレックスの長くて太い指はずんずんと奥の方まで進み、まるで昔から知っていたかのように、すぐにカイルのスイートスポットを見つけ、集中的に責め始めた。
「あああ……アレックス……っ!あ、ダメ……」
カイルはその快感にすっかり酔いしれ、アレックスへの奉仕を忘れていた。しかし、アレックスはそれを咎めるどころか、満足げに口角を上げる。
彼は心の中でほくそえみながらカイルの嬌声を楽しんでいた。
「カイル…俺の指でいくつもりか?」
アレックスはカイルのペニスを激しく扱きながら、同時に中を責める。
カイルは過剰な刺激に、鳴り響くような耳鳴りが始まり、足の指先は強張るように丸まっていった。
「ん……いっちゃう……」
「いいぜ、俺に見せてくれ。……お前のイくところを……」
アレックスのその一声で、カイルは完全に果てた。
「いい子だ……」
カイルは瞼の裏がまだチカチカする中、乱れた呼吸を整えようと深く息を吸い込んだ。
しかし、その直後にアレックスの手がカイルの尻を叩いた。
「乗れ」
アレックスの言葉に躊躇しつつも、カイルは向きを変えて、彼の上、アレックスのそそり立つペニスの上にゆっくりと体を下ろした。
「……ん……」
アレックスが指でならしたおかげで、入り口はスムーズになっていたものの、あまりにも桁違いの質量と圧迫感に、カイルの呼吸は短く浅くなり、思わず苦痛に顔が歪む。
半分ほど入ったところで息を吐き、アレックスに視線をやると、彼はいままでに見た事のない恍惚とした表情でカイルと、そして二人の結合部を交互に眺めていた。
「カイル……ああ、お前はなんてきついんだ……すごく、これは素晴らしい……」
アレックスの表情と言葉が、カイルの理性を粉々に砕いた。痛みなど厭わず、彼は一気にアレックスを最奥まで飲み込んだ。
「ああ……っ」
カイルはその充足感に再び自分のペニスがむくりと立ちあがるのを感じた。
「まるでお前に食いちぎられそうだ……クソ……っ」
アレックスはゆっくりと自分の上で動き出すカイルを見つめながら、彼の腰を支えていた手を上の方に移動させると、カイルの両胸の突起を優しくマッサージし始めた。
「ああ……」
カイルの表情が快楽でさらに崩れていくのを見てアレックスはニヤリと笑い、さらにカイルの乳首をつねっては引っ張る。そして、少し上体起こすとカイルの乳首を口に含み優しく吸いはじめた。
「ん……っ」
カイルの腰がびくびくと動き、甘い声が断続的に漏れるので、アレックスは左右の乳首が唾液でびっしょりと濡れるまで舐め続けた。
「気持ちいいか……?」
「あ……うん……すごく……」
カイルの愛らしい反応に思わずアレックスは我慢できなくなり突然腰を突き上げた。
今まで自分のペースでゆっくりと動いていたカイルは主導権がアレックスに移ったことを悟り、しがみつくようにアレックスの首に手を回した。
「ん……っん……っあ……っああ……っ」
カイルは激しい下からの突き上げに声を抑えることができなかった。
カイルの乱れっぷりに扇られたアレックスは、狭い襞を強引に割り開き、アレックスはさらに速度を上げてそこを愛撫し尽くす。
「ああ、カイル……お前は俺たちものだ……俺のものだ……」
アレックスはカイルを抱きしめ、挿入したままくるりと姿勢を変えると、カイルをベッドに寝かせ、上に覆いかぶさった。
アレックスは愛おしそうにカイルを見つめると、その額の汗を指で拭った。乱れた髪を手櫛で整え、そのまま額をカイルのそれに預ける。そして甘く痺れるような低音で囁いた。
「お前を、めちゃくちゃにしてやる」
カイルはアレックスの瞳をじっと見つめ返すと、「君の好きなように……」と自ら唇を重ねた。
その瞬間、身体の奥に居座る熱い塊が一段と存在を主張し、カイルの芯は再び激しく燃え上がった。
キスはさらに激しくなり、アレックスはカイルの舌をいつまでも離さず、歯の一つ一つまで愛撫するように口内の隅々まで舐めまわした。
こぼれる唾液を掬い取り、時々唇を舐めては甘噛みし、それと同時にリズミカルに腰をまわしはじめた。
「あ……アレックスっ……そこ……」
その瞬間、アレックスの先端がカイルの最も敏感な箇所を正確に捉えた。
カイルは抗いようもなく身をよじらせると、その快感を再び貪るように、必死になって腰をくねらせた。
だが、アレックスは意地悪な笑みを浮かべ、わざとカリの部分まで引き抜くと、そのまま先端だけ緩慢に抜き差ししてカイルを焦らした。
「なら懇願してみろ」
カイルは一瞬だけ躊躇いを見せたが、衝動を抑え込めるはずもなかった。
入り口で留まるアレックスの楔を、一刻も早く奥深くまで迎え入れたい。
ただ、アレックスを強く感じたかった。
「もっと……して……お願い。アレックスお願い……!」
カイルの少し震えた声にアレックスはにやりと笑うと、再び最奥まで一撃で貫いた。
「いい子だ……ご褒美をあげよう」
アレックスの腰使いはとてもエロティックで、カイルの未開の地を自分の色に染め上げると同時に、確実にカイルのお気に入りの場所を責め続けた。
絶え間ない激しいピストンのさなか、カイルのペニスはアレックスの硬い腹筋で擦られ、耳元で繰り返される猛々しく荒い呼吸に、カイルの脳は甘くとろかされる。
「アレックス……ああ、……いっちゃう……」
カイルの声が昂ぶりに耐えかねて震えると、アレックスも呼応するようにさらに激しく打ち付ける。
「ああ、いいぜ……俺も……イきそうだよ、……お前の中でイってやる」
アレックスの掠れた声が、カイルを完全に打ちのめした。
「ああっ……」
「クソ……っ!」
カイルはアレックスの脈動を感じ、自身の奥へと熱いものが注ぎ込まれる感覚に、うっとりと目を閉じた。
そのまま余韻に浸るようにアレックスをしっかりと抱きしめると、彼の柔らかな茶色の髪に指を絡ませ、優しく撫でた。すると、アレックスは狼のようにゴロロロと喉を鳴らし、カイルの鼻に自分の鼻を擦りつけると、噛みつくように口づけをした。
その瞬間、カイルは自分の中のアレックスが再び硬さを取り戻すのを感じ、思わず吐息を漏らす。
アレックスは再びゆっくりと腰を動かし始め、カイルの耳朶を舐めると、低く掠れた声で囁いた。
「これで終わったと思うなよ?」
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