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第2話 緩い感じ
神戸実生(かんべみしょう)の父親は、手広く不動産業をやっていてハワイのコンドミニアムも分譲している。実生の仲間たちにいくつか自由に使わせてくれる。
「面倒だな。ハワイまで行くのは。」
「日本にはあのデカいチューブは無いからな。」
「ドギードア狙いの航(わたる)ちゃん。
チューブの中は最後まで行けよ。」
サーフィンは、チューブ状の大波に入って崩れる前にきれいに出てくるのがベストだが、崩れる前に途中から出てくるのをドギードアと言う。
よく家の玄関ドアについている犬用の小さいドアの事だ。波は待ちすぎると閉じてしまう。
「みんな休み取れんの?」
「まだ大学行ってるやつがいるけど、時間はあるんだろ?」
留年組の大学生がいる。山辺航(やまべわたる)八年生だ。
黒服は加山蓮司(かやまれんじ)。水商売は長い。父親がこのクラブのオーナーだ。
系列店のキャバクラで働いたから女の子には顔が広い。
「やあ、今日もいい感じかな?」
DJタイジが来た。タイジが来ると店が活気づく。ラッパーにも絶大な信頼を得ている。
河村剛(ごう)は何ともこの男たちが気になる。
剛はDJタイジのファンでタイジが来るときは狙って店に来る。
剛は蓮司がチーフをやっていたキャバクラで働いていたこともある。アルバイトだ。
その蓮司にこの店に連れて来てもらった。
DJタイジのかける音楽が心地よい。
フロアで軽く体を揺らしていると女の子が寄ってくる。しばらく身体を音楽に合わせて揺れているとやたらボディタッチしてくる女。
剛は困ってさりげなく避けていると、誰かが剛の手を取って引き上げてくれた。
思いのほか強い力でグッと手を掴まれて抱きしめられてしまった。
女の子が
「何すんのよ。あたしのパートナーよ!」
「えっ?俺パートナーじゃ無いよ。」
「彼、嫌がってるよ、お嬢ちゃん。」
グッと掴まれて彼の席まで連れて行かれた。
「座れ。」
「あ、誰?」
「俺、航(わたる)おまえは?」
「ああ、俺は河村剛(ごう)」
「あんまり見ない顔だな。」
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