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第9話 三大欲求

 プールサイドの椅子に腰掛けて、剛と航は二人の様子を見ていた。  蓮司も置いて行かれた体でこちらに歩いて来た。 「今日は水着審査かよ。何か舐めてんな。」 「榊がカップリング出来たって? 意外と効率悪いな。」  成湫も肩を抱いていたもう一人を手に入れた。 航が剛に 「あのバーテンダーが気になるのか?」 「ううん、違うよ。」 「隠してもダメだ。俺と勝利が悲しむなぁ。」 「勝利ってそっちなの?」  みんなそろそろ飽きて来た。何のイベントもない。ナンパしてヤリ放題って言うのが餌だったか。あまりにも小賢しい。 「誰が企画したんだよ。つまんねえな。」 「人間の三大欲求を満たしてくれるんだろう。 その後どうするのか、バカにしてるな。」 「食欲、性欲、睡眠欲? じゃあ、今頃みんな眠ってるってのか?」 「寝る、って言うのと、眠る、って言うのは似てるけど全く違うな。」  航が哲学してる。 「ねえ、航はゲイなんでしょ。 本気で恋した事はあるの?」  ハッテン場で入れたり出したり、は恋じゃない。 「航は俺とやりたい?」  剛に真っ直ぐ見つめられて航は考えてしまった。ずっと自分はゲイだと決めつけて来た。人と違う自分がカッコいいと思っていた。その事に自信がなくなってきた。  剛がまじめな顔をして航を見る。 「好きな人が出来た。本気なんだ。 だって今まで人を好きになったことがなかったから。」 「あのバーテンダーか?」  カウンターの向こうでにこやかに接客している彼が見えた。 「恋に落ちるのは一瞬なんだ。」 笑って言う剛の顔を抱いてくちづけした。  かなりディープなキス。時は止まる。 「おまえが欲しい。」  部屋が各自に割り当てられている。 バーテンダーにはわかってしまうだろう。 抱かれた男のこと。他の男に抱かれる男はいらないだろう。航が 「俺が剛を凌辱する。」 「凌辱って⁈」  勝利が来た。いつも本音が見えないやつだ。 程よく冷めている。 「みんな退屈しすぎて腐ってるな。」 「腐ってるって、精神が?」  海に行ってサーフィンをやる時のみんなはカッコいいのに。都会にいると腐ってくる。

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