9 / 48
第9話 三大欲求
プールサイドの椅子に腰掛けて、剛と航は二人の様子を見ていた。
蓮司も置いて行かれた体でこちらに歩いて来た。
「今日は水着審査かよ。何か舐めてんな。」
「榊がカップリング出来たって?
意外と効率悪いな。」
成湫も肩を抱いていたもう一人を手に入れた。
航が剛に
「あのバーテンダーが気になるのか?」
「ううん、違うよ。」
「隠してもダメだ。俺と勝利が悲しむなぁ。」
「勝利ってそっちなの?」
みんなそろそろ飽きて来た。何のイベントもない。ナンパしてヤリ放題って言うのが餌だったか。あまりにも小賢しい。
「誰が企画したんだよ。つまんねえな。」
「人間の三大欲求を満たしてくれるんだろう。
その後どうするのか、バカにしてるな。」
「食欲、性欲、睡眠欲?
じゃあ、今頃みんな眠ってるってのか?」
「寝る、って言うのと、眠る、って言うのは似てるけど全く違うな。」
航が哲学してる。
「ねえ、航はゲイなんでしょ。
本気で恋した事はあるの?」
ハッテン場で入れたり出したり、は恋じゃない。
「航は俺とやりたい?」
剛に真っ直ぐ見つめられて航は考えてしまった。ずっと自分はゲイだと決めつけて来た。人と違う自分がカッコいいと思っていた。その事に自信がなくなってきた。
剛がまじめな顔をして航を見る。
「好きな人が出来た。本気なんだ。
だって今まで人を好きになったことがなかったから。」
「あのバーテンダーか?」
カウンターの向こうでにこやかに接客している彼が見えた。
「恋に落ちるのは一瞬なんだ。」
笑って言う剛の顔を抱いてくちづけした。
かなりディープなキス。時は止まる。
「おまえが欲しい。」
部屋が各自に割り当てられている。
バーテンダーにはわかってしまうだろう。
抱かれた男のこと。他の男に抱かれる男はいらないだろう。航が
「俺が剛を凌辱する。」
「凌辱って⁈」
勝利が来た。いつも本音が見えないやつだ。
程よく冷めている。
「みんな退屈しすぎて腐ってるな。」
「腐ってるって、精神が?」
海に行ってサーフィンをやる時のみんなはカッコいいのに。都会にいると腐ってくる。
ともだちにシェアしよう!

