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第16話 家族写真

「大ちゃん、気に入った女性はいたのかい?」 「ううん、中々見つからない。 優しそうな人はいなかったよ。 有ちゃんは恋人いるんだろう?」 「うん、僕もダディのお眼鏡にかなう恋人はいないな。僕はお嫁さんいらないし。」  大ちゃんとはあのパテックフィリップの男、青木大仁だった。  有ちゃんとは、もちろん有人。あのバーテンダーの事だ。仕事ぶりは堅実でスタッフには信頼されている。彼は妾腹だったからいつも兄の大ちゃんを引き立てて後ろに控えていた。  本人の希望でペントハウスで暮らしている。「屋上の変人」と自称している。  本妻の息子、大仁とは仲がいい。有人の自省的な性格が大仁を守っている。 「大ちゃんにいいお嫁さんが見つかるといいね。」  こんなに金をかけて何度もパーティを開いたのだ。それも青木会長が嫁にふさわしい女性を見極めるため。  すぐに男とカップルになるようなのは論外だった。真っ先に、榊と付き合った、水着美女は外された。今時の身持ちのゆるい女はダメなのだ。  事前に誰も知らされてないから奔放に振る舞って素が見えた。  会長の期待に応える女性はいなかった。 大仁が言い出した。 「僕は熱い恋がしたい。二人、燃え上がって愛し合う。可愛い人を見つけたんだ。」 「どんな娘?声かけてみろよ。」  大仁は困っている。 「名前も知らない。どこの人か、も知らない。」  パーティの招待状リストは、国内の企業の重役の家族までピックアップされていた。  妙齢のご婦人のいる家庭。政財界のそこそこ大物の娘がターゲットだった。  世間の目を逸らすために、カップリングに釣り合う男たちも選ばれていた。それで、榊や航たちも招待されたのだ。  大仁に見せられた招待客リストには家族写真も添えられていた。  写真を一目見て大仁は気に入った人がいた。 剛には気の強い妹がいる。一緒に写り込んでいた。妹も可愛いが、剛の愛らしさは特別だった。  大仁の目に留まったのは妹ではなく剛の方だった。 「有ちゃん,見て。僕はこの子がいいんだ。」  その写真には、家族で寛ぐ河村家が写っていた。 「大ちゃん、この人,男だよ。  一緒に写ってるのが妹かな。可愛いね。」 有人は愕然とした。剛の家族。  素敵な家族だった。

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