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第20話 父親の目論見
食事が終わった頃、兄弟の父である青木正嗣会長が挨拶に来た。
多忙な会長だが、息子の伴侶は気になるらしい。
「お邪魔して申し訳ない。
私は確認したいことがあるんだ。
お嬢さんが大仁の嫁になってくれるのか。
いや、わかっている。そちらの兄殿と大仁がお付き合いするのは構わない。
しかし、正式な嫁となるとやはり女性でないと。様々な渉外の仕事が待っておる。
世界中を回らなくてはならない。それをお嬢さんにお願いしたい。」
家柄は申し分ないという。雛を気に入ったらしい会長だった。
そして剛と付き合いたいという大仁の気持ちはかなえたいそうだ。
剛は有人の顔を見た。有人は顔色も変えず飄々と座っている。
まるで自分には関係のない話だという顔をしている。
「ふざけるな!
会長だか、社長だか、知らないが
青木さんとおっしゃいましたか?
勝手に話を進めないで欲しい。
俺と大仁さんがどうしたって?
何言ってんだよ。
俺と雛の人権はないのかよ!」
青木会長は
「いや、君がゲイだということは有人が確認済みだ。なら、大仁のモノになってもかまわないだろう。それなりの地位を約束しよう。
お嬢さんはこの巨大なホテルグループの嫁になれるんだから。」
剛は、縋るような気持ちで有人を見た。有人は真っ直ぐに剛を見つめる。
(有人は人の心はないのか⁈
俺が誰のものになっても、何も感じないのか?)
この前抱かれたのはお試しだったのか?
「剛くん、君も僕に嘘をついてるよね。
あの夜、僕が初めてだといった。
でも、タイに恋人だった男がいたよ。」
すごい調査力だった。剛はタイでゲイセックスを経験していた。
でもそれはバニラ。挿入なしのバニラセックスだったから、剛もあまり覚えていなかった。
あの有人とのめくるめく夜があまりにも強烈だったから、あれがはじめてだ、と思い込んでいた。
「俺のプライバシーを蹂躙していいのか?
あんたたちにはそんな権利があるのか?
酷いよ!愛してたのに。」
「お兄ちゃん!」
雛がショックを受けている。
「帰ろう。ご馳走様でした。」
剛は立ち上がった。妹の手を掴んで部屋を出た。
「雛、ごめんな。嫌な気持ちにさせて。
あの人たちは何でも自分の思い通りになると思ってるんだ。俺、馬鹿だなぁ。
あんな人を好きだったんだよ。」
タクシーに乗って家まで帰った。
雛は驚いている。
「お兄ちゃん、かわいそう。」
「雛は恋人とかいないのか?」
「うん、あの人素敵だったね。
お兄ちゃんの恋人だった?」
「でも心が汚い。」
家に帰っても
親の顔がまともに見られなかった。
「雛、母さんが心配するから今日の事は内緒にしてくれ。それと、俺がゲイなのも黙っていて欲しい。」
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