20 / 48

第20話 父親の目論見

 食事が終わった頃、兄弟の父である青木正嗣会長が挨拶に来た。   多忙な会長だが、息子の伴侶は気になるらしい。 「お邪魔して申し訳ない。 私は確認したいことがあるんだ。 お嬢さんが大仁の嫁になってくれるのか。  いや、わかっている。そちらの兄殿と大仁がお付き合いするのは構わない。  しかし、正式な嫁となるとやはり女性でないと。様々な渉外の仕事が待っておる。  世界中を回らなくてはならない。それをお嬢さんにお願いしたい。」  家柄は申し分ないという。雛を気に入ったらしい会長だった。  そして剛と付き合いたいという大仁の気持ちはかなえたいそうだ。  剛は有人の顔を見た。有人は顔色も変えず飄々と座っている。  まるで自分には関係のない話だという顔をしている。 「ふざけるな! 会長だか、社長だか、知らないが 青木さんとおっしゃいましたか? 勝手に話を進めないで欲しい。  俺と大仁さんがどうしたって? 何言ってんだよ。 俺と雛の人権はないのかよ!」  青木会長は 「いや、君がゲイだということは有人が確認済みだ。なら、大仁のモノになってもかまわないだろう。それなりの地位を約束しよう。  お嬢さんはこの巨大なホテルグループの嫁になれるんだから。」  剛は、縋るような気持ちで有人を見た。有人は真っ直ぐに剛を見つめる。 (有人は人の心はないのか⁈ 俺が誰のものになっても、何も感じないのか?) この前抱かれたのはお試しだったのか? 「剛くん、君も僕に嘘をついてるよね。 あの夜、僕が初めてだといった。  でも、タイに恋人だった男がいたよ。」  すごい調査力だった。剛はタイでゲイセックスを経験していた。  でもそれはバニラ。挿入なしのバニラセックスだったから、剛もあまり覚えていなかった。  あの有人とのめくるめく夜があまりにも強烈だったから、あれがはじめてだ、と思い込んでいた。 「俺のプライバシーを蹂躙していいのか? あんたたちにはそんな権利があるのか?  酷いよ!愛してたのに。」 「お兄ちゃん!」  雛がショックを受けている。 「帰ろう。ご馳走様でした。」  剛は立ち上がった。妹の手を掴んで部屋を出た。 「雛、ごめんな。嫌な気持ちにさせて。  あの人たちは何でも自分の思い通りになると思ってるんだ。俺、馬鹿だなぁ。 あんな人を好きだったんだよ。」  タクシーに乗って家まで帰った。 雛は驚いている。 「お兄ちゃん、かわいそう。」 「雛は恋人とかいないのか?」 「うん、あの人素敵だったね。 お兄ちゃんの恋人だった?」 「でも心が汚い。」  家に帰っても 親の顔がまともに見られなかった。 「雛、母さんが心配するから今日の事は内緒にしてくれ。それと、俺がゲイなのも黙っていて欲しい。」

ともだちにシェアしよう!