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第21話 航

 そんな事があってから剛はまた,航の所に訪ねて行った。  航に今回の出来事を何もかも隠さず話した。 剛を好きな航には残酷な話だっただろう。  それでもきちんと向き合って話を聞いてくれた。 「海、行こうぜ。」  航の家から歩いて行ける東浪見の海岸にボードを担いで行った。 「ひゃあ、気持ちいいな。今日は波はどうかな?」  準備運動をして海に入る。いきなりは危ない。 「まじめだなぁ、航。」  かつて世界最高峰ツアーの一戦が行われた事があるほどのメジャーなビーチだ。  砂浜の形は年々変化する。地形が変わると波も変わってくる。  現在はそれほどの波ではない、と地元のベテランサーファー達は言う。  剛はそんなに上手くないから文句はない。航は暇さえあれば海に出てるから,いろんなことに詳しい。  疲れて砂浜に寝そべって航の話を聞いている。 「ふふふ、航って海に来ると甘えたくなるな。」  キスしてもらう。航とはキスまで。それ以上に進む事はなかった。  お互いにちょっと遠慮がちだった。それでも航は剛を大切に思っている。 「こんな暮らしもいいなぁ。 毎日海を眺める。」 「俺、これでも働いてるんだよ。 あんこの煮方とか覚えた。機械で何でもやるけど、手作りは美味いんだよ。」  朝早くから小豆を煮る話はおもしろかった。 「和三盆のあく抜きも大変なんだよ。」 確かに働いている航がいた。  今はあの学生を隠れ蓑にして遊び呆けていた航と違う。 「ここに帰ってくる決心をしたのは 剛があの男に抱かれたからだよ。  ショックだったんだ。でも剛の事、そういう意味では、好きかどうかよくわからなかったからモタモタしてたら先を越された。」 「なんて言ったらいいかわからない。  ごめん。」  「謝る事じゃないよ。  一番大事なのは、剛が誰を好きか、だよ。   好きだという気持ちが大事だ。 何かされたとか裏切られた,とかじゃなくて誰が欲しいか、なんだよ。」  航はいいやつだ。このまま、航のそばにいたい。でも本当に抱いて欲しいのは誰だろう。  自然に答えが出る。 「有人に会いたい。他の誰でもない。」

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