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第26話 剛の家族
伊豆から帰って来て自宅近くで降ろしてもらった。三人の関係は微妙なままだった。
剛は、親に好き勝手な事をやらせてもらっている。いわゆるニートだ。
妹はお嬢様育ちで親に大切にされた。父はM製菓の重役で、剛も将来を嘱望されて来たのだが、なぜかドロップアウトしている。
いや、ドロップアウトさせてくれる変わり者の父親だ。
そんなわけで未だに実家暮らしだ。父は剛がゲイではないか、と懸念している。
「雛ちゃん、ちょっとパパに付き合わないか。」
晩酌をしている父親が妹に声をかけた。
「この前、インターナショナルホテルの青木の息子と食事したんだって?
兄妹そろってのご招待だったとうちの秘書から聞いたよ。どうだった?」
「ええ、それが変なの。
向こうも兄弟だって、すごくかっこいい人たちだった。私と結婚を前提にお付き合いしたいって。
突然、変だよね。」
父はわかったような顔で
「剛はいるのか?呼んできなさい。」
母親に言った。
「何?父さん。」
「剛はサーフィンばかりやってないで、将来のことを考えているのか?」
「はい、いや、昨日も伊豆の大浜に行って来ました。」
「波は良かったかい?」
父親もサーフィンをやっていたと聞いた事がある。
「インターナショナルホテルのオーナーの別荘に泊まりました。息子さんたちに連れて行っていただきました。」
「ああ、若い頃、私もよく泊まりに行ったよ。
温泉がいいんだ。オーナーの青木正嗣は私の同級生だ。」
言いにくそうに父は言った。
「青木の息子たちはゲイだ。剛を気に入ったと言っている。」
「父さん、彼らは酷いことを言ってるんだよ。
雛の人格を踏みにじる提案をしてきたんだ。」
ゲイの息子の隠れ蓑に雛を嫁にして、裏で剛と付き合いたいと言う。
そんな事、許せるのか?と父親に食ってかかった。剛は今まで自分の性癖と,世間の常識に引き裂かれて来た。自分の事は棚に上げて、親に普通を迫るのはおかしいと、その時は思わなかった。
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