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第27話 雛

 久しぶりに父親と話した。 「おまえはいったい何がしたいんだ?」 と聞かれた。夜職をやったり、親のレールを外れようといろいろ逆らった。  頑張って入ったK大も途中で辞めてしまった。 「自分でも、よくわからないんだ。 俺は何がしたいんだろう。あ、そうだ  海の近くでのんびり暮らしたい。」 「ああ、そうだな。 タイやベトナムの海は良かったね。」 「うん、ベトナムのハロン湾はすごく綺麗だった。」 「父さんはまた,仕事で行けるでしょ。」 「いや,もう移動はないな。」 「ところで雛ちゃんは,好きな人はいないの?」 「いる。大仁さん。」 「えっ?今、なんて言った?」  剛は混乱した。あの大仁を好きになる女がいるとは?  大仁みたいなタイプは夜職の女にモテると思っていた。雛のような世間知らずのお嬢に好かれるとは⁈ 「父さん、食事会でオーナーの息子たちに提案されたのは、あの青木大仁と雛が結婚して、人の目を誤魔化して,俺と付き合うって事なんだ。  雛はそれでいいのか? 金持ちは何やってもいいのか?  失礼すぎるだろ!」 「そんなやつを雛は好きなのか?」 「だって、好きになっちゃったんだもの。」 「どこがいいんだよ。有人の方が素敵だろ。」 「お兄ちゃんにはわからないのよ、大仁の良さが。」 「俺は有人が好きだ。」 「言っちゃったね、やっぱりゲイなんだ。」  父親があっけにとられてこの兄妹を見ていた。 「それは良かった、めでたしめでたし、と言うわけないだろう!だめだ、絶対に許さん!」  確かに父親が怒って当たり前だ。剛もなんだか、納得いかない。雛が幸せになるとは思えない。 「今ここで答えを出さなくてもいいよね。 とりあえず今夜は寝よう。雛もお休み。 父さんおやすみなさい。」  剛は頭の中がグルグルする。 (こんな時でも有人に会いたい。朝までそばにいたのに。抱いて欲しい思いが燻っている。  有人なら答えをくれる。きっと。)  家族とは面倒なものだ。有人に会いたいのに、頭に浮かぶのは航だった。穏やかな航の顔。

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