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第28話 逃した玉の輿

 あのクラブでは大仁の登場でバチェラーパーティの目的が知れ渡った。  いつもの女の子たちが投げやりにその話をしている。もう興味も薄れたようだ。 「あのホテルのオーナーの息子、兄弟だって? 二人ともイケてたね。」 「あのナマズ野郎が長男ですごい玉の輿だったんでしょ?」 「実はイケメンだったってなんか漫画みたい。」  沙也加も莉里もモノに出来なかった。誰も相手にされなかった。 「なんか出来レースかも。もうお相手は決まってたりして、ね。」 「いつも来る黒服の友達の剛って子がゲイだって?」 「あのナマズ男の兄弟もゲイらしいって噂。」 「結婚相手って?男探してるの?」 「違うよ、隠れ蓑。ダミーの嫁を探してたのかも。」 「ひどい!あーあ、いい男はみんなゲイに持ってかれちゃうね。」 「まだまだ男はたくさんいるよ。 玉の輿を狙わなくても、恋をするならチャンスはあるよ。」  このクラブにもバーテンダーはいる。普通にイケメンでおしゃれなバーテンダーがカウンターで話し相手になってくれる。  女の子たちはフロアからカウンターに移動した。 「いらっしゃい。何か召し上がりますか?」 「あ、あたしはフローズンダイキリ。」 「あたしもフローズン、えーと、マルガリータにする。」 「キャッシュオン、だよ。いくら?」 「カクテルはみんな千円です。 冷たいのがお好きですか?」 「そうよ、男がみんな冷たいんだもん。」    蓮司が榊と実生と成湫に目配せしてカウンターに案内した。 「キミたち、ここでよく会うね。 この前のパーティでも見かけた。」  彼女たちはずいぶん前からこのクラブの常連だ。黒服の蓮司はよく知っている。 「なんか,いい女がフリーみたいだね。」  成湫はナンパに慣れている。成湫は女誑しだ。 「ここでよく会うよね。ごめん、名前も聞かなくて。俺、高柳成湫。親の会社を手伝ってる。  割と時間は自由なんだ。」 「ふーん、碌なもんじゃないわね。 あたしは莉里。覚えてないの? 一度寝た事がある。」 「あ、思い出した。確かにあなただった。 今夜もどう?」 「もう、誑しの成湫。有名だよ。」  莉里は成湫に思いが残っていた。以前一度だけ寝た男。  榊と実生がシラけている。 「また、成湫が食い散らかした女かよ。」  実生の言い方に 「言葉に気をつけろよ。女性に失礼だ。」  榊がたしなめる。 由里亜とミレイがいやな顔をしている。 「ごめんね。何か、一杯飲んでくれ。」 「もう頼んであるから結構よ。」  目の前で、バーミックス(小型のミキサー)からバースプーンでカクテルグラスに飲み物が入れられた。 「かき氷?」 「フローズンカクテルです。 これはマルガリータ。テキーラベースですよ。」  莉里のカクテルがきた。 「美味しい。スノースタイルっていうの? 塩が効いてる。」  沙也加の前にもフローズンダイキリのグラスがサーブされた。 「フローズンって美味しそうね。 私はブルームーン。パルフェダムールが綺麗。」 「すみれのリキュール。完全なる愛,という意味です。」  ミレイの前に綺麗な菫色のカクテルが置かれた。由里亜が 「なんか私だけ子供っぽい。 ジンフィズなんてジュースみたいじゃない?」  バーテンダーが笑って 「そんな事ないですよ。カッコいいカクテルです。ジンが濃いですからね。」  女子たちは男を無視して飲み始めた。カクテルは案外強い度数のものが多い。 「おかわりください。 今度は普通のマルガリータ。」 「大丈夫?テキーラベースだよ。」 「大丈夫!全然平気よ。 二杯目は彼のおごりね。」  成湫に莉里が絡んでいる。 沙也加がずっと気にしていた、成湫と莉里の関係は一度だけだったようだ。しばらく話題になっていた。成湫はやっと莉里の顔を思い出した。 「莉里ちゃんって俺と寝た事、あったっけ?」  バチンッと頬を張られた。

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