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第31話 バリでサーフィン

 剛の日々は、何も無かった。今までは毎日遊び暮らして暇を持て余していた。  親の仕事に合わせて、ほとんどタイで育った剛は日本に帰って来ても学校に馴染めなかった。  高校から大学までは、受験勉強漬けで友達も作らなかった。  タイにいた時はサーフィンが友だちだった。日本人学校の長い休日には、バリに飛んでサーフィンばかりやっていた。  最初はクタ、レギャンなどに行った。仲間が出来て慣れてくるとチャングーに行った。  クタもチャングーも観光地で物売りがうるさい。髪を伸ばしていた剛は 「コーンにしないか?」 しつこく誘われる。  (コーンロウは細かい三つ編みのこと。) 「タトゥー入れないか? 描くだけの後で消えるのもあるよ。  漢字を一文字入れるのも流行ってるネ。」 愛とか死とか、悪とか、魔とか。剛は 恥ずかしいから何も入れてない。  そんな青春を送って,日本に帰ってからは受験地獄を経て、魂が抜けてしまった。  このクラブで実生がハワイツアーを企画していた。サーフィンがきっかけで仲良くなった。  ハワイでは実生のコンドミニアムにみんなで泊まった。一緒に旅すると距離が縮まる。  いつもつるむ仲間になった。 それでも、剛は自分の性癖が知られるのを恐れた。 「野郎ばっかのハワイ行き。 いつもそれでいいのかよ。女の子も誘おう。」  実生がいつになく積極的に言い出した。  いつものクラブ。夜になると集まってくる。 この前の酔い潰れ事件以来あの娘たちに会っていない。 「いつになく、みんなおとなしいね。 牽制してるとか?」  女子が二人、フロアに入って来た。綺麗な娘だ、と目で追っているとミレイだった。  こちらの席の榊を見つけるともう一人と一緒に歩いて来た。 「こんにちは。今日は姉を連れて来ちゃった。」 「よろしくね。綺麗です。自分で言うのも何ですが、綺麗は本名。山岡綺麗です。  こっちは妹の山岡ミレイ。」  そう言って自己紹介したのは、あのパーティの水着の綺麗な彼女だった。  榊がずっと待っていた女。そして榊がマジ惚れしたと言っていた。ミレイの姉? 「な、なんだよ。」  美人姉妹だ。榊は呆然としていた。

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