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第33話 有人の恋人⁈

「いやだ、いやだ。俺に触るな。」  剛は強い力で手を掴まれた。大仁を殴った拳が痛い。有人にクラブの奥に連れて行かれた。 「何するんだよ! 玲於奈っていう人を置いて来ていいのかよ。」 「待って、誤解だ。 大仁が面白がってるだけだよ。」  玲於奈が不安そうに見ている。雛も不安そうだ。  女の子たちが寄ってきた。 「剛くんの妹さん? 可愛い。似てるね。」 「剛くんも可愛い女の子みたいな顔してるもんね。妹ちゃんも可愛い系。」  女子に囲まれて雛は安心しているようだ。 ゲイの痴話げんかになんか巻き込みたくはない。 「雛まで巻き込むのはやめろよ。」  玲於奈が有人に寄り添っている。見ているだけでムカムカする。 「有人、酷いよ。」  妹の前で女々しい姿を見せたくない。それなのに女々しさ全開だ。剛は自分が情けない。  大仁が 「剛くん俺のものになってよ。」 「嫌だね!妹はおまえが好きなんだよ。 それが気持ち悪いんだよ。」  雛は泣いてしまった。 「雛を泣かせるな!」  大仁に飛びかかった。何かの格闘技をやっているらしい大仁は剛のなすがまま、おとなしく殴られていた。 「お兄ちゃん、やめて!大仁が可哀想!」  剛は信じられない気持ちだった。 (こんな奴でも、かばうのか?)  自分の気持ちがわからない。何があっても好き、という雛の気持ちがなぜか尊く感じる。  有人は玲於奈の肩を抱いて、この茶番を眺めている。 (ああ、そうだ。そんな奴だった。 冷たい男。その手でこいつを抱くんだな。)  長い指に目が行く。 (もう一度、有人に抱かれたい。)  クラブの中は楽しんでいる若者でにぎやかだ。 人目を惹く美貌の有人や大仁、玲於奈。  可愛い雛がここにいるのもただの景色だ。 誰もが自分のことに夢中になっている。  人の事などどうでもいいのだ。 (みんな、心を開いたら壊されると思ってるみたいだ。閉じている。)  すごく寂しい気持ちになる。

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