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第36話 妹

 有人は車で送ってくれた。剛は離れがたい気持ちだった。 「一緒に暮らそう。」  有人は言った。その言葉が頭から離れない。 有人とセックスした。でも、それだけだ。 「ペントハウスに引っ越しておいで。」  そう言って家の前で別れた。一人になって剛は色々考えてしまった。  ドアにノックの音。 「お兄ちゃん、お話ししよう。」  部屋に招き入れた。妹はまだ学生だ。 「明日も学校だろ? 何?話って。」 「うん、今日は大仁さんが送ってくれたの。」 「あいつに、何もされなかったか?」 「何もないよ。彼はすごく紳士だよ。」 「ああ、女に興味ないから人畜無害なんだな。」 「ひどい事、言うのね。」  剛は驚いて雛を見つめた。 「雛はあんな奴のどこが好きなんだ?」  頬を赤く染めて 「全部、全部好き。 あの顔も髪も。すごい筋肉の身体も。 長い指も、優しい手も。全部好き。」  剛は焦って 「それで、あいつと寝たのか?」  昨夜の自分を思い出してちょっと後ろめたかった。 「ううん、まだキスだけ。」  妹がキスとか言ってるのは変な感じだ。 「自分を大事にしろよ。ママを悲しませるな。」 「あたし、大仁さんの事、全部知りたい。  何が好きなのか? あ、食べ物のことよ。  それからどんな本を読むのか、とか。」 「ああ、あいつはサーフィンが上手いよ。」 (サーフィンやってる所を見たら益々惚れるな。) 「大仁さんは何でお兄ちゃんなんか好きだって言うんだろ。」 「好きじゃないよ。嫌がらせだよ。 キチンと話をつけるよ。」  剛は大仁に好かれているとは考えられない。 ただ有人に嫌がらせをしたいだけだ、と思っている。 「俺、家を出るよ。親父に言いにくいな。」 「お兄ちゃん、働くの? パパの会社で?  働きなよ、自立して。 そして大仁さんを振っちゃって。」  俺が振っても大仁は何のダメージも受けないだろう、と思える。強気な奴だ。心が岩で出来ているように見える。

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