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第42話 ナル
「夏場はいい波、来ないね。初心者向けだな。
たまにすごいの来るけど。」
みんなで話しながらしばらく他の人のライディングを見ていた。
「そう言えばマカハビーチにすごいやつが来る。
日本人だよ。実生も知ってるんじゃないか?」
「そうそう、すごく上手いんだ。
ローカルサーファーの穴場に日本人が来て、遜色無く馴染んでるって。」
「運が良ければ、今日も来るかも。」
「日本人離れした体格で、波がついてくるんだよ。波と一体になって、見ていて気持ちいいよ。
ナルって呼ばれてる。俺たちが勝手に付けたんだ。生まれながらのナル(波と言う意味)だ。
午後になってナルが来たっていう噂が流れた。
ローカルサーファーがみんな親しげだ。
「ナル、待ってたよ。日本から来るの面倒だ。
もう、ここに住んじゃえよ。」
みんなナルが大好きみたいだ。
剛は焦った。
「大仁?ナルって大仁の事⁈」
あの大仁だった。ボディにインターナショナルホテル・オアフのロゴが入った車を乗り付けて、やって来た。慣れた様子でボードを降ろす。
剛は咄嗟にパームツリーの影に隠れた。
(なんで大仁がここにいるんだよ?)
ショーンは、剛と大仁のいきさつを全く知らないので、呑気な事を言っている。
「夜、オアフのインターナショナルホテルで
パーティがあるんだ。みんなで行こう。
サーファーはフリー(無料)なんだよ。」
剛の方を見てウインクした。
「なんだ、ナルは剛の知り合いだった?」
「いや、俺だけじゃないよ。
みんな知ってる。」
「女の子たちも知り合いだから,驚くよ。
パーティ大好きだし。」
剛は思い出した。
(ホテル王のドラ息子だ。大仁。ここに雛もいたらいいのに。喜ばせてやりたい。)
ビーチでは、そんなに大きな波は来なかったが、大仁のライディングは素晴らしかった。
「冬の海に来いよ。チューブを巻く日に来てもらいたいな。ナルはすごいよ。」
「確かにカッコいい。」
剛も感心して見入ってしまった。
大仁が近づいて来て
「よお、会えて嬉しいよ。
俺のものになる決心はついたかい?
そう言えば午後の便で有人も来るよ。」
水に濡れた見事な身体に見惚れてしまった剛に大仁は勝ち誇ったように言った。
「会いたいだろう。
有人もサーフィンやるんだぜ。僕ほどじゃないけどな。」
ポンポンと背中を叩かれた。
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