52 / 77
第52話 ジャンキー
大仁は嫌な奴だが、サーファーの時のナルはまったく別人のようだ。
ナルと呼ばれて、大仁には熱烈なファンがたくさんいる。
翌日、午後まで眠った大仁は一人で目覚めた。
あの乱交の場でたくさんの取り巻きに囲まれて、好き放題やっていた大仁は、不完全燃焼の頭を抱えて出かける用意をした。
「クソッ、頭、痛てぇ!」
ボサボサの髪をかき上げてシャワーを浴びる大仁はきれいな男だ。背の高い広い肩幅、大胸筋がデカい。恵まれた容姿。男にも女にもモテる。
どうしてあんな歪んだ性格なんだろう。
子供の頃から有人と比べられる。表立って比べることはないが影ではみんな思っていただろう。
有人はいつも変わらず大仁の理解者だった。
そう、大仁は信じていた。
ハワイでの有人の部屋は、インターナショナルホテルのスイートだ。大仁が顔を出した。
「ここにしけ込んでたのか?
剛と一緒か。おまえたちばかりがいい思いをして。」
有人にはわかる。大仁はどこか壊れている、と。
「大ちゃん、なんかキメてない?」
「やってないよ。もうヤクには手を出してないよ。媚薬だけだ。」
せっかく爽やかな朝で、気分が良かったが、そばに誰もいない。そんな気持ちで有人を思い出した。
「おまえたちはいいなぁ。有人は剛と一緒で。」
部屋の中で一人で喋っている大仁に、目覚めた剛は驚愕した。
「こんにちは。大仁さんいつもと感じが違う。」
「いつもの僕ってどんなの?」
「あ、それは・・」
「みんなが見てるのはヤクやってる時の僕だな。」
有人が肩を抱いて優しく叩いた。
「大ちゃん、海、行こう。
大ちゃんは波乗りしてる時が1番かっこいいから。剛も行こうよ。車にボード積んで。」
大仁は素直に有人の言葉を聞いていた。
(大仁ってジャンキーだったのか?
だからあんなにテンションが高いんだ?)
有人のボルボにボードを積み込んだ。
「ナルは波に愛されてるんだ。
大学がカリフォルニアだったから
トレッスルズで波に乗ってたんだよ。」
「トレッスルズ?」
世界有数のサーフスポット。
2028年のオリンピック会場だよ。
ビーチボーイズの歌に出てくるだろ。
サーフィンUSAって曲。」
「古いな、そんなの誰も知らないよ。」
ともだちにシェアしよう!

