61 / 77

第61話 いつもそう

「僕は、剛を分け合うのは無理だ。 大ちゃんがいいなら、大ちゃんのところに行けよ。」  有人は背中を向けて出て行った。 微かにエレベーターの来る音がする。  有人はまた、あの一人ぼっちのペントハウスに帰っていくのか?  剛は切なくなった。 「有人はなにも聞かないんだな。 いつものように、諦めの自分の巣に逃げ込むんだ。」  剛は大仁の冷たさを感じた。こうやって有人から全てを取り上げて来たのか? 「大仁は 人を好きになった事があるのか?  何もかも持っている大仁にはわからないよ。」 「僕を軽蔑するかい?」 「ううん、俺も同罪だから。」 「おかしいだろ、ただセックスしてただけだ。  悲観的になる必要はないだろ。」 (笑って有人に、セックスしてただけだ、 って、言えたらいいな。  何もなかった頃に戻れたら。)  やっぱり剛は笑えない。不安そうに剛を見ている大仁が可愛い、と思ってしまった。  大仁が剛を抱き寄せて 「深刻になる事ないだろ? たかが、セックスだ。気持ちよかっただろ? 続きをするかい?」 「大仁は面白いね。 今はそんな気になれない。」  帰る場所を無くしたような気持ちだった。 「家に帰るよ。妹にも会いたいし。」 「ああ、剛の家は健全だな。 けがれなき妹によろしく。」  バシッと大仁をひっぱたいた。 「ごめん、大仁は何も悪く無いのに。」 ワハハと笑って熱いくちづけをくれた。 (やっぱり、この人はイケメンだ。 叶わないな。)  剛は久しぶりに家に帰った。妹にハワイのお土産を渡すため?  理由は何でもいい。何かこじ付けてないと親の顔が見れない。 「ただいま。」 「あら、お帰り。今、何やってるの?」 「あの横浜のクラブの黒服だよ。 友達とハワイに行ってた。」  母親にココナツオイルの乳液を渡す。 「気が利くわね。雛には何?」 「可愛いビキニ。」 「へえ?お兄はセクハラ野郎か?」 「母さん、そんなつもりはないよ。 友達が選んだんだ。」  大仁が押し付けて来た水着だった。あいつの美意識がちょっと笑える。  妹が大仁にゾッコンなのを知ってるんだ。 隠し独楽にしている。

ともだちにシェアしよう!