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第62話 会いたい

 剛は有人に会いたくて会いたくてツラい。 手のひらの鍵。ペントハウスのものだ。 「いつでも入れるように持ってろよ。」  今も持っていていいのか? 「剛ちゃん、この頃、実家から通って来てるね。 始発で帰ってる。ペントハウス追い出された?」  蓮司に気づかれた。 剛の実家は世田谷だ。クラブのある横浜に通えないわけではなかった。  大学の時は横浜の近くの紅葉山のアパートに住んでいた。ろくに学校にも行かず、キャバクラの黒服なんかやっていた。  学校は違っても、留年したもの同士、航と気が合った。今ならまだ間に合うだろうか?  卒業も、航も。有人との恋も⁈ 雛の縁談があってアパートは引き払われた。 父親が怒っている。雛の縁談相手がホテル王の息子、青木大仁だと喜んだのも束の間、本当は剛が目当てだったとは。  それを知って父は激怒した。剛がゲイだなんて。家に帰って来た今も、父は許してくれていない。 「あーあ、俺はいつも宙に浮いてるみたいだ。 父さんはゲイを認めない。雛も、母さんもだ。」 母親に責められた。 「いつまで水商売をやるつもり?」 「メンバーに入ってるんだ。すぐには辞められないよ。」 「ハワイでサーフィン? 住むところがないから帰って来ました? 何考えてるの?」 「青木大仁は友達だよ。 雛が望むなら縁談を進めるよ。」 「剛、あなたね、雛はおもちゃじゃないのよ。」 「ママ、やめて。私、大仁さんと結婚したい。」  何という事だ。妹は修羅の道を行こうというのか?青木家に嫁いだら、見えるのは地獄だ。  剛は焦った。簡単に考えすぎていた。 (俺が有人を選んだら、雛の縁談は無かったことにされる。俺が大仁のものになったら、雛は偽装結婚の犠牲者になる。  どっちを選んでも地獄。) 詰んだ。

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