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第63話 いつもの店

 クラブの黒服の仕事は、忙しさで気持ちを紛らわせてくれた。 「いらっしゃいませ。」  いつもの女の子たちが来た。一緒にハワイに行って以来、仲良くなったような気がする。  それでも女子は剛には少し距離を置いているようだ。  「剛くんはあのホテル王の息子たちと付き合ってるんでしょ?」 「息子たちって、何?」  莉里の不躾な質問に、ミレイがたしなめる。 「あの、兄弟ね。あのお兄さんの方、結婚のお相手は見つかったの?」  ハワイで大仁のサーフィンを見てから、みんな一目置いている。それまでは成金のナマズ男と、ばかにしていた。 「剛くんは弟の方と付き合ってたんでしょ?」 「えっ?そんな事、無いよ。誰が言ってんの?」 「あの千葉に引っ越した航くんはずっと、剛くんに片想いだったんでしょ?」 「ちょっと待って。話、作らないでよ。」  女子の情報力はすごい。 「しかし、みんな暇だなぁ。」  成湫が呆れている。女誑しと言われているが、案外彼女がいない。 「榊はずっと硬派で通して来たけど、ミレイちゃんとくっついたんだな。」  蓮司がきた。 「おい、黒服。油売ってないでオーダーとか聞いたらどうだ?」 「あ、そうだ。皆さんお飲み物は?」 「じゃあ、カウンターに行ってカクテルたのもう。」  みんな歩いて行く。 (この前は、カウンターに有人がいたんだった。  魔法みたいに現れる。今夜はそんな魔法はないな。)  いつもの顔ぶれが全員揃ったわけではない。 (航がいない。  もう遠くに引っ越したんだった。  都合良く思い出して寂しがる俺はバカだ。)    勝利が来た。可愛い彼氏を連れている。 「恋人?紹介しろよ。」  みんなの注目の的になっている。 「彼はドール。今井清隆くんだ。」  肩を抱いて頬にくちづけしている。確かに人形のように綺麗だ。 「綺麗な人だね。」  剛の言葉に 「ああ、人形のようだろ。 でもドールは生きてる。話すると面白いよ。 絵描きなんだ。」  勝利は幸せそうだった。 (みんな変わって行くんだな。)

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