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第68話 ドール
「大仁、その人は?」
「これはこれは、有人くん。
もう剛のことはいいんだ。
どうだい? ドールだ。美しいだろ。」
「いいのか?」
「なにが?」
「それでいいのかって聞いてんだよ!」
「待てよ、有人はいつも取り乱さないだろ。」
ドールが可愛らしく小首を傾げる。
「なんか、怒ってるの?有人っていう人。」
「ドールは心配しなくていいよ。
僕が守ってあげるから。」
肩を抱いて奥の特別席についた。気品のある物腰の神々しいドールに見惚れた。
「剛、大丈夫か?」
「え、あ、はい、大丈夫。」
テーブルに座り直してデザートを食べる。
(勝利はどうしたんだろう。
大仁はやっぱり酷い奴だ。人のものを欲しがるんだ。)
剛はもうデザートの味もわからなくなった。
航のところにまで連れて行って紹介したドールは、一体何を考えているのだろう。
「有人、あのドールっていう人、どう思う?」
「ああ、綺麗な人だね。
見栄っ張りな大仁が連れて歩きたくなるような人だ。」
「俺、働いてるあのクラブでドールを見たんだ。
友達の恋人だって紹介された。」
「また、大仁が横取りしたんだな。」
「でも、ドールっていう人の気持ちは
どうなんだろう?」
本人の自由なのか?
勝利が落ち込んでなければいいが。
(ドールは何を考えてるのか?)
ゲイはヘテロより情が深い、と聞いた事がある。
離れた席で優雅に食事する大仁とドール。
剛は、この関係が酷くいやらしく思えた。
(人でなしの集団だ。)
お金でなんでも解決するこの人たちが、酷く嫌な存在に見えた。
あの気のいい勝利を陥れるドールに,剛は嫌悪を覚えた。
食事風景はエロチックな雰囲気だった。
そばで見ていてもいやらしい。まるでこれから始まるエロチックなセックスの前戯のような食事。
食べるという行為は、セックスを思わせる。
それを見せつけるドールは、まるで男娼のようだった。
(そうか。ドールはプロスティチュートなんだ!)
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