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第69話 あのクラブ

 剛が急に休んだ日、あのクラブでは、ちょっとした事件があった。  勝利が落ち込んでいつもの顔ぶれに泣きついた。 「ドールが連れて行かれた。 本人の意思だけど、嬉しそうに行っちゃった。」  みんな寄ってきて勝利の話を聞いた。 「早かったね、フラれるの。」 「やめなよ。勝利が可哀想だ。」 「あんなにラブラブだったのに。」  あの大仁からご招待があって、連れて行かれたそうだ。今日の事だ。先ほどの。 「本人の意思なら仕方ないね。 でも、もうあたしたちはコッチに来させないよ。 仲間に入れない。」  女子たちに嫌われた。 実生や榊、成湫たちにも呆れられている。 「勝利、元気出しなよ。」 「先ほどの事だって?フラれたって?」 「勝利は夢中だったもんね。」  大仁はどこで見つけたんだろう? いつドールの美しさに目が眩んだのか。 「俺、本気だった。航のところにも連れて行った。航が祝福してくれた。  一緒に暮らそうって言ってたんだよ。」  勝利の純情にみんなは同情した。 「いったいどこで出会ったんだ?」  横で話を聞いていたキレイが口を挟んだ。 「彼には有名な画家のパトロンがついていたの。専属のプロスティチュート、男娼よ。教授専属の。」  美形同士知り合いなのか? 「ウチの大学のミスコンにミスターコンテストもあって、彼が推薦されて優勝。  その彼を教授が 自分のものにしたって。 有名な話。すでにプロの男娼だったとか。  ムカつくわね。あたしもミスコンの常連だから。」  キレイの話は、聞いているこっちがムカつく案件だった。ミレイと榊はカップルになったが,キレイはあぶれている。 「キレイ過ぎてその辺のヘタレ男は寄ってこないのよ。」  その性格が男たちを遠ざけているようだが、本人は気付いていない。  確かに顔もスタイルも素晴らしいが、性格がイマイチである。いつも手持ち無沙汰にカウンターでカクテルを飲んでいる。 「ま、無理してカップルにならなくても。」 「あの大仁が連れていったのが気になる。 やっぱりゲイなのね。」 「俺は女の子がいいなぁ。」  女誑しの成湫がしみじみ言って、その場は大爆笑だった。 「剛とあのバーテンダーも気になるね。 ナマズの弟?」  ナマズの呼び名が定着している。みんな玉の輿には飽きたようだ。賢明なことだ。

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