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第5話
柳田のことが気になってしまう愛斗。平常心になろうとする彼ですが…?
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開店前の大体の作業が終わった頃、徐に柳田が愛斗に近付いてきた。
「シェフ。おはようございます」
「おはよう…な、何?」
「これを…」
そう言って柳田がそっと何かを愛斗の手に握らせてきた。
『ん?何だ?』
愛斗が手の中身を見ると、そこに握られていたのはエナジードリンク。
「…」
どうしてこんなものを?愛斗は疑問でしかなかった。
「このところ、よく寝ていないようなので…」
気持ちの見えない表情でそれだけ言うと、いつもの完璧なマネージャーとして柳田はその場を離れたのである。
どうして愛斗が睡眠不足に陥っていることが分かったのだろうか。
最近あまり寝られていないなんて、スタッフには誰も言っていないはずなのに…。
まさか柳田は、愛斗が寝不足だということに気付いていたのだろうか。
『俺、そんなにクマとか酷いかな…』
そんなことを考えながら、愛斗は厨房の隅でもらったドリンクを飲んだ。
『サンキュ…』
これで今日は、夜の団体の予約も乗り切れそうだ。
営業後、愛斗は厨房スタッフの加納に尋ねた。
「柳田は?」
「あぁ、柳田さんはバックヤードに行ったみたいですよ?」
店がオープンした時から在籍している加納が、笑顔で教えてくれた。
この加納はセンスもあるし、愛斗が一目を置いているほどの男だ。
「そっか。ありがとう」
そう答えた愛斗は、すぐに柳田がいるというバックヤードに向かった。
バックヤードでは、柳田が椅子に座りパソコンを操作していた。
「お疲れ」
愛斗が声をかけると、柳田が気付いたようで愛斗の方に顔を向ける。
「あぁ、お疲れ様でした」
「今日はありがとう」
「何が、ですか?」
分かっているだろうに、と愛斗は内心で思った。
「ほら、出勤した時にくれただろ?ドリンク…」
「あぁ。アレのことですか」
柳田は愛斗に笑顔を見せてきた。
「どうしてアレをくれたんだ?」
確かに今日はあのおかげで元気が出たかもしれないが、なぜ自分にあのドリンクをくれたのか、不可解だったのだ。
「言ったじゃないですか。寝不足のようだったからですよ。シェフには元気でいてもらわなければいけないですからね」
「何で俺が寝不足だって分かったんだ?」
「さぁ。それはどうでしょうね」
柳田は愛斗の問いには答えず、パソコンをパタンと閉じた。
そして立ち上がると、「ゆっくり休んでくださいね。それでは、また明日」と言ってバックヤードから出て行ってしまった。
心がスッキリしない状態で残されてしまい、モヤモヤとする愛斗。
あとは帰るだけだから、着替えてすぐに帰ろうと思う。
『くそっ…いったい何なんだよ…』
柳田のせいで、今晩もよく寝られそうにない。
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読んでいただきありがとうございました!
ドリンクをくれるなんて、実は柳田もちゃんと見てくれてるのかな?
これからの展開に要注目!
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