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第7話
前回は、マネージャーとしての柳田に愛斗が脱帽しましたね。
柳田に対する信頼は増すばかりで!?
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それからの愛斗は、柳田への信頼がさらに強くなっていく。
『あいつがいれば、怖いものはないな…』
そう思うほどに。
梅雨が明けた頃のある日、ふとホールで準備作業中である柳田の方を見た愛斗。
普段通りに作業をしているように見えるが、どこか具合悪そうに見える。
顔色も、何となく良くないようだ。
「おい」
愛斗はホールに出ていき、カトラリーを準備している柳田に声をかけた。
「何でしょう」
愛斗の方を向いた柳田は、顔色一つ変えずに、いつもと同じ様子だった。
『気のせいだったのかな…』
そう思いながらも、愛斗は尋ねた。
「お前、体調でも悪いのか?」
「え!?」
聞かれた柳田は、意表を突かれたとばかりに目を見開く。
「いや、ちょっと具合悪そうに見えたからさ。気のせいならそれでいいんだけど…」
言葉の最後は口ごもってしまう。
こうやって体調を尋ねるなんて初めてのことだし、気恥ずかしくもあったから。
「私を気遣ってくれるんですか?」
「ま、まぁ、大事なスタッフだしな…」
それしか言えなかった。
「…そうですか…。ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。心配には及びません」
「そ、そうか?それならいいんだけど。あまり無理はするなよ?」
お前に倒れられたら、気が気じゃなくなるから…。
「はい…」
柳田はそう答えると、複雑そうな笑みを顔に浮かべた。
『何だ?この表情は…』
これから営業だというのに、愛斗の心にはモヤモヤとしたものが広がったである。
その日の店内は盛況で、ランチタイムも混んでいた。
狭い厨房を通ろうとした時、たまたま厨房にいた柳田とすれ違いざまにぶつかりそうになった。
「あっ…」
おたまを手にした愛斗はバランスを崩し、倒れそうになる。
「あっ!」
咄嗟にそれを支えようとした柳田と、不意打ちで唇同士が触れ合ってしまったではないか。
「んっ…」
一体これは何だろうか…。
二人はすぐに離れたが、柳田の方は動揺しているようで顔まで真っ赤にしている。
どうやら愛斗は、柳田とキスをしてしまったらしい。
『ヤバい…どうしよう…』
忙しい最中のことだったし、他のスタッフたちには”あの”瞬間は見られていないようだ。
それだけは不幸中の幸いと言ったところだろう。
この場合、柳田に何と声をかけたら良いのだろうかと、愛斗は悩んだ。
「す、すまん…慌ててたから…」
「いいえ、こちらこそ。大丈夫ですか?」
そう言った柳田の表情は、いつものクールなマネージャーのものになっていた。
愛斗にしてみると、それはホッとしたような気もするし、残念な気持ちもあった。
業務中のことだからすぐに切り替えるのは当然のことだが、なかったことにされるのかなと思うと、少し寂しかったのだ。
それでも自分を気遣ってくれたようなので、その点は心がほっこりとした。
「うん、大丈夫。お前こそ大丈夫か?」
「はい。大事な手を怪我されませんように…」
気持ちの見えない表情でそう言うと、柳田は立ち上がりいつも通りに厨房から出ていったのである。
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読んでいただきありがとうございましたm(__)m
忙しく立ち回っていたら、こんなハプニングもあるのかも!?
突然の出来事に、2人はこれからどうなる!?
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