9 / 13

第9話

思わぬハプニングの後、柳田に忘れろと言われてしまった愛斗。 さて、その後は? ****************************************** それから愛斗は、柳田に関してますます気まずくなってしまった。 同僚だから普段通りに接しなければいけないことは分かっている。 だからそう努力しても、なかなか上手くできないと感じるのだ。 変に意識してしまい、柳田の方を見ることができず目も合わせられない。 前のように平気なふりして振る舞いたいが、相手の方もどうしていいか分からないようだ。 翌日に悶々としていた愛斗。 『もう、どうすればいいっていうんだよ!』 少し苛ついてきた彼は、料理を取りに来た柳田に僅かに声を荒げてしまう。 「ちょっと待て、そのオーダー詰めすぎだぞ!」 こんな風に口調がきつくなったのは、初めてかもしれない。 ましてや仕事中だし、本当は感情的にはなりたくないのに…。 「…回さないと席が滞るんですよ」 目からは感情が読み取れないが、柳田はいたって冷静だ。 どうして冷静でいられるんだ!? 自分はこんなにイライラしてるのに、と愛斗は思った。 「こっちは手が足りねえって言ってんだろ!」 「だからって止めたら売上落ちるじゃないですか」 「今、料理出すから待ってろ!」 むしゃくしゃしながらも、愛斗は出来立ての料理をデシャップに置いた。 厨房のスタッフたちは皆、彼を心配して見ていた。 そこでスーシェフを担っている荒川が愛斗に声をかける。 「シェフ。どうしたんですか?」 「え?あ、いや。何でもないよ」 マネージャーとキスしてしまい気まずいなんて言えるわけがない。 「そうですか?しっかりしてくださいよ?」 「あぁ。大丈夫だから、次の調理に移ってくれ」 愛斗の言葉に、荒川は頷いて持ち場に戻っていった。 深く聞かれずに済んで助かったと愛斗は胸をなでおろす。 『ダメだな、俺…。同僚に心配されてしまうなんて…』 そう思い自己嫌悪に陥りそうになったが、次に使う肉を取り出して調理に取り掛かった。 厨房内で食材の載ったバットを持ち歩いている時に、不意にホールの様子が目に入った。 愛斗が目にしたのは、ホール担当の鈴木が柳田の袖に触れている場面。 しかも鈴木は笑顔を見せているではないか。 『何だ?あれは…』 そう思ったとたんに、愛斗の心はムカムカとしてきた。 怒りにも似たような、こんな場面を見てしまった自分を責めるような気さえする。 なんで俺は、あの場面を見たんだろうか…。 第一、鈴木と柳田は一体何をしていたのか、とても気になって仕方ない。 強いショックを受けた愛斗は、一瞬足が動かなくなってしまったのである。 ****************************************** お読みいただきありがとうございましたm(__)m 他の女性従業員が柳田の腕に触れている!? その状況に胸中がそわそわしてしまう愛斗。 さぁ、どうする?次回をお楽しみに!

ともだちにシェアしよう!