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第9話
思わぬハプニングの後、柳田に忘れろと言われてしまった愛斗。
さて、その後は?
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それから愛斗は、柳田に関してますます気まずくなってしまった。
同僚だから普段通りに接しなければいけないことは分かっている。
だからそう努力しても、なかなか上手くできないと感じるのだ。
変に意識してしまい、柳田の方を見ることができず目も合わせられない。
前のように平気なふりして振る舞いたいが、相手の方もどうしていいか分からないようだ。
翌日に悶々としていた愛斗。
『もう、どうすればいいっていうんだよ!』
少し苛ついてきた彼は、料理を取りに来た柳田に僅かに声を荒げてしまう。
「ちょっと待て、そのオーダー詰めすぎだぞ!」
こんな風に口調がきつくなったのは、初めてかもしれない。
ましてや仕事中だし、本当は感情的にはなりたくないのに…。
「…回さないと席が滞るんですよ」
目からは感情が読み取れないが、柳田はいたって冷静だ。
どうして冷静でいられるんだ!?
自分はこんなにイライラしてるのに、と愛斗は思った。
「こっちは手が足りねえって言ってんだろ!」
「だからって止めたら売上落ちるじゃないですか」
「今、料理出すから待ってろ!」
むしゃくしゃしながらも、愛斗は出来立ての料理をデシャップに置いた。
厨房のスタッフたちは皆、彼を心配して見ていた。
そこでスーシェフを担っている荒川が愛斗に声をかける。
「シェフ。どうしたんですか?」
「え?あ、いや。何でもないよ」
マネージャーとキスしてしまい気まずいなんて言えるわけがない。
「そうですか?しっかりしてくださいよ?」
「あぁ。大丈夫だから、次の調理に移ってくれ」
愛斗の言葉に、荒川は頷いて持ち場に戻っていった。
深く聞かれずに済んで助かったと愛斗は胸をなでおろす。
『ダメだな、俺…。同僚に心配されてしまうなんて…』
そう思い自己嫌悪に陥りそうになったが、次に使う肉を取り出して調理に取り掛かった。
厨房内で食材の載ったバットを持ち歩いている時に、不意にホールの様子が目に入った。
愛斗が目にしたのは、ホール担当の鈴木が柳田の袖に触れている場面。
しかも鈴木は笑顔を見せているではないか。
『何だ?あれは…』
そう思ったとたんに、愛斗の心はムカムカとしてきた。
怒りにも似たような、こんな場面を見てしまった自分を責めるような気さえする。
なんで俺は、あの場面を見たんだろうか…。
第一、鈴木と柳田は一体何をしていたのか、とても気になって仕方ない。
強いショックを受けた愛斗は、一瞬足が動かなくなってしまったのである。
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お読みいただきありがとうございましたm(__)m
他の女性従業員が柳田の腕に触れている!?
その状況に胸中がそわそわしてしまう愛斗。
さぁ、どうする?次回をお楽しみに!
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