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第11話
前回は、店で突然倒れた柳田を愛斗が看病しましたが、さて翌日はどんな様子になっているでしょうか?
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翌朝、愛斗が柳田の様子を見に行くと、彼は既に目覚めていた。
「目、覚めたか。どう?具合は」
「すみません…でも、ここは…」
何とか起き上がろうとする柳田を、愛斗は押しとどめる。
「まだ寝てろって。ここは、俺の家だよ」
「シェフの…家?」
大人しく再度横になった柳田が不思議そうに問い返した。
「あぁ、そうだよ。熱出てたしさ、ドラッグストアで薬も買ってきといたぞ」
柳田は自分の額に冷却シートが貼られていることに、その時気付いた様子。
「これも、シェフが?」
「うん。それで?具合の方は?」
「大分、良くなりました…」
そう呟いた柳田の顔は、どことなく申し訳なさそうに見える。
「そうか。それは良かった」
「ご迷惑をおかけして、すみません…」
「いや、いいんだ。ってか何か食べろ、薬飲まなきゃいけないだろ」
柳田は愛斗を見上げて素直に頷いた。
「じゃ、お粥(かゆ)でも作ってやるから」
そう言ってその場を離れようとした愛斗に、背後から声がかかった。
「あ、あの…。卵粥、作ってもらえますか?」
柳田が何かを頼んでくることなんて今までなかったから、愛斗は意表を突かれる。
「シェフの、卵粥が食べたいです…」
聞くと、いつもレストランで作ってる料理ではなく、愛斗の素朴な料理が食べたいのだと言う。
「なんだそれ」
そう言って愛斗は笑った。
「お粥なんて料理と言えるほどのものでもないし、誰でも作れるだろ?」
卵粥が食べたいなんて、甘えられてるようで少し嬉しくもあった。
「そうですが…シェフが俺のために作ってくれるというのが大事なんです」
柳田は弱々しく顔に笑みを浮かべる。
「よ、よし!分かった!俺のお手製卵粥をすぐ作ってやるよ」
愛斗は照れ臭さを隠してキッチンへと向かった。
「美味しい…」
布団を体にかけた状態で、ベッドに座りながらお粥を食べていた柳田が呟く。
「そうか?ただのお粥だけどな」
愛斗が苦笑すると、柳田は否定するように首を横に振った。
「いいえ。シェフの、こういうのが食べたかったんです」
「…」
素直にそう言われて、愛斗は気恥ずかしさに顔を赤くした。
「シェフのお粥を食べられて、少し得したかもしれません…」
その言葉に一瞬ドキリとしたが、どうせ普段はイタリアンしか作ってないし、お粥を作ったのがレアだから、というのだろう。
柳田は愛斗の作ったお粥を平らげてくれた。
彼は少し咳もしているので、風邪薬を飲ませる。
「熱は昨夜よりは引いたみたいだけど、計っとけ」
愛斗が差し出した体温計を受け取ると、柳田は素直に頷いた。
その顔は、心なしか赤いように感じられる。
「優しいんですね、シェフ…」
「え?そ、そんなこと…」
今度は愛斗が顔を赤くする番だった。
「そういや、エナジードリンクの礼、できてなかったしな」
ぶっきらぼうに言うと、柳田は「あぁ」と弱々しく笑った。
「今日はちょうど店休だしさ、家で休んでけば?」
せっかく柳田がいるのだし、ゆっくりしていって欲しかったのだ。
愛斗の申し出に、柳田は目を瞬かせた。
彼のこんな仕草は初めて見る。
『こういう表情もするんだな…』
店内では見せないような表情を見せてくれて、愛斗は嬉しかった。
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読んでいただきありがとうございましたm(__)m
店では見せないような表情を見せてくれた柳田。
愛斗に「休んでいけば?」と言われ、何と返すのか次回をお楽しみに!
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