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第12話
柳田に泊まるように誘った愛斗ですが、柳田はどうするのでしょうか?
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「で、でも…」
遠慮しているのか、柳田は躊躇(ためら)いを見せる。
「予定でもあるのか?」
「いえ、特には…」
「それじゃ、嫌じゃないならゆっくりしてけよ」
優しい口調で愛斗が言うと、「そうですね、シェフがご迷惑でなければ」と恐縮したように答えた。
柳田の熱は三十六度五分だったため、ある程度は安心して良いだろう。
「お前、映画好きか?」
ここにいろと言ったのはいいが、何をしようか考えた。
そこで、柳田の趣味などをほとんど知らなかったことに気付く。
俺は、こいつについて知らないことだらけだ…。
そう思うと、愛斗は少しがっかりする。
「えぇ。好きですよ」
柳田の答えに、愛斗は胸をなで下ろした。
それと共に彼のことを一つ知ることができ、嬉しさに心の中にほんわりとしたものが広がった。
「そか。じゃ、配信で映画でも見るか?」
「いいですよ。でも、どうやって?」
「テレビに、動画サイトが見れる機能が付いてるんだよ」
柳田は「あぁ」と頷く。
彼は、サブスクの動画サイトは利用していないらしい。
「それで、どんなジャンルが好きなんだ?俺は洋画で、アクションかSFかな」
「私も同じです。よく映画館に行くんですよ」
「マジ?それは良かった。じゃあ、何見よっか…」
愛斗はテレビを操作していたが、ふとその手を止めた。
「昨日の営業中にさ…」
言いにくそうに切り出した愛斗に、柳田は視線を向ける。
「はい?」
「鈴木が、お前に触れてただろう?」
「あぁ…それは、私が体調が優れなかったので、心配してくれてただけです…」
そうだろうと思った。
鈴木も、柳田の変化に気付いていたのだ。
どちらも主にホールにいるから、気付きやすいのかもしれない。
ただ愛斗も少し前から柳田の変化に気付いていたのに…。
それに…柳田に鈴木が触れたこと自体に、愛斗は嫉妬していた。
それに気付いた真斗本人は、胸が苦しくなった。
『何で俺…こんなに鈴木に嫉妬してるんだ?今までは、何ともなかったのにな…』
そう思ったが、愛斗は気持ちを切り替え再びテレビのリモコンを操作した。
「そっか…。それで、何を観る?」
それ以上聞けずに、愛斗は話を変えた。
愛斗が柳田の方を向くと、彼はジッとこちらを見ている。
「何だよ…それで、こん中で観たい映画ある?」
もう一度問うと、柳田はハッとした。
「そ、それじゃ…これを…」
テレビ画面には、様々な映画のラインナップが並んでいる。
柳田が指差したのは、愛斗も未視聴の作品だった。
「あ、これ俺も観てないや。いつか観ようと思ってたんだけどさ」
前年に公開された人気作で、一ヶ月前から配信されていた作品だ。
「そうでしたか。主演の俳優が好きで、よく観てるんです」
「俺もこの俳優好きでさ。ハズレないよな」
「そうですね」
そう言って柳田は笑った。
それから二人は、しばし映画の世界に没入していく。
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お読みいただきありがとうございました!
一緒に映画鑑賞をした愛斗と柳田。
さて、この後は一体どうなるのかお楽しみに!
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