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第31話
愛斗と旧知の仲らしい人物が来店!この男は一体何者なのか!?
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営業後の片付けも終わり愛斗が少し気を抜いた時に、バックヤードで柳田が声をかけてきた。
「シェフ、少しお話があります」
柳田は何故か思いつめたような顔をしている。
「何?」
「ちょっと、客席の方に来てもらえますか?」
バックヤードにはまだ他のスタッフもいたし、どうやら聞かれたくない話のようだ。
『まさか、さっきのあの人のことか…?』
愛斗の脳裏には、自身を呼んで来て欲しいと言ってきたあの男性客の顔が浮かぶ。
ただ、柳田があの件について気にしているとは思えない。
「分かったよ」
訝しく思いながらも、愛斗は柳田に促されるまま客席に移動した。
「で、何なんだよ?」
立ったまま少しだけ不満そうに愛斗が問うと、柳田は辺りに視線を向けてから愛斗の目を見つめた。
「先程のお客様は一体誰なんです?」
その言葉にはただ興味で聞いているというよりも、どこか嫉妬が混じっているように愛斗には感じられる。
「は!?別に、通常のお客だろ?多分、シェフがどんな顔をしてるか見てみたかったんじゃないか?」
「いいえ。あの方は、あなたのことを知っているという口ぶりでした。久しぶりとも言っていましたし…」
「あぁ?そんなこと言ってたか…?お前の聞き間違いだろ?」
あの男性客が「久しぶり」と言っていたのは、愛斗もはっきりと覚えている。
ただそんなことを言えば、知人同士であることは明白になるではないか。
本当に余計なことをしてくれたものだと、愛斗は思う。
柳田は愛斗の答えを聞いて、ますます距離を詰めてきた。
「いいえ。確かにあのお客様は、あなたを知っているようでした。そうですよね?」
美形のマネージャーに問い詰められて、愛斗は隠しきれなくなった。
そして大事な部分は除いて白状することにする。
「…分かったって。そうだよ、知り合いだよ」
「では、どうしてあの様な対応をしたんです?」
”あの様な対応”とは、愛斗があの客に冷たい態度で接したことを言っているのだろう。
「もう過去の人間だし、もう関わりがないから…」
「そうですか…それで、どういったご関係の方なんですか?」
柳田がますます距離を詰めて愛斗の顔を覗いてくる。
その目は、これまで愛斗が見たことのないものだった。
まるで、嫉妬しているような…。
すると、バックヤードにいた荒川がやってきて声をかけてきた。
「どうしたんですか?」
愛斗たちがバックヤードに来ないので、様子を見に来たようだ。
「いや、何でもないよ」
変に心配させないように愛斗が答える。
「それじゃ、俺たち帰りますね」
「うん、お疲れ様!」
愛斗が笑顔を向けると、荒川は「お疲れ様です」と頭を下げてバックヤードに戻っていった。
「さ、俺たちも帰ろう」
先ほどしていた男性客の話を蒸し返したくなくて柳田を促す。
しかし彼はそれが不服だったようだ。
「まだ、話が終わっていません」
「いや、もう言うことなんてないから」
「答えてください。あの方は、誰なんです?」
この時の柳田はいつになくしつこく食い下がってきた。
「だから、ただの知人だって…」
「それなら、もっと丁寧に対応されても良かったのでは…」
「いいんだよ。お前が気にすることじゃない。この話は終わりにして、さっさと帰ろうぜ。遅くなったしさ」
「分かりました…」
柳田はまだ納得できないようだったが、しぶしぶ頷いた。
年上だけど、愛斗には逆らえない柳田だった。
午後十一時頃に店の外に出ると、誰か人影が見えたので、愛斗は少し驚いた。
こんな夜中にここに人がいるなんて思わないからだ。
「うわっ、誰だ?」
愛斗が幽霊でも見たかのように声をあげると、その人影が動いた。
「俺だよ、俺」
姿を現したのは、先ほど店で「シェフに会いたい」と言ってきたあの客だった。
「…」
「そんな顔すんなよ。寂しいだろ?」
男がニヤリと笑ったのが月明かりに照らされて見える。
苦い記憶が愛斗の脳裏を巡る。
「亘(わたる)…」
「お前が出てくるの、待ってたんだよ。驚いただろ?俺がこの店に来て」
そこへ、店の戸締まりを終えた柳田もやってきた。
「どうしました?」
怪訝そうに問う柳田に「何でもない」と言おうとしたのだが…。
「ん?アンタ、愛斗の彼氏か?最近仲良いみたいだな」
目の前の男、佐々木亘は不敵な笑みを浮かべ柳田に尋ねた。
亘とのことは、全てなかったことにしたいし、話にも触れられたくない。
せっかく愛斗が、柳田に対してやり過ごそうとしたのに…。
柳田が不快さを滲ませて応じた。
「どういうことでしょう。私は当店のマネージャーです。マネージャーとして、シェフを支えているだけです」
「そうか?」
亘は納得していないようだ。
「あなたは、一体どなたなんですか?」
「柳田!」
柳田が亘に尋ねたので、愛斗は焦って制止しようとした。
厄介なことになりたくなかったが、亘は真実を明かしてしまう。
「俺か?俺は、そいつの…愛斗の元彼だよ」
その言葉を聞いて、柳田の目が愕然と見開かれたことに、愛斗も気付いた。
柳田には知られたくなかったと、愛斗も肩を落とす。
「い、今さら何しに来たんだよ!」
愛斗は、目の前でニヤリと笑う男に怒鳴った。
「お前と、やり直したくてさ」
そう言えば、前にも亘が店に来ていたようだった。
あの時はきっと、今日のための下見にでも来ていたのだろうか。
「やり直すって…」
冗談じゃない。
別れたのだって、亘が原因だったのに…。
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読んでいただきありがとうございましたm(__)m
店にやってきたのは愛斗の元彼・亘でした!
やり直したいと言っていますが、さて、これからどうなる!?
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