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第31話

愛斗と旧知の仲らしい人物が来店!この男は一体何者なのか!? ***************************************  営業後の片付けも終わり愛斗が少し気を抜いた時に、バックヤードで柳田が声をかけてきた。 「シェフ、少しお話があります」 柳田は何故か思いつめたような顔をしている。 「何?」 「ちょっと、客席の方に来てもらえますか?」 バックヤードにはまだ他のスタッフもいたし、どうやら聞かれたくない話のようだ。 『まさか、さっきのあの人のことか…?』 愛斗の脳裏には、自身を呼んで来て欲しいと言ってきたあの男性客の顔が浮かぶ。 ただ、柳田があの件について気にしているとは思えない。 「分かったよ」 訝しく思いながらも、愛斗は柳田に促されるまま客席に移動した。 「で、何なんだよ?」 立ったまま少しだけ不満そうに愛斗が問うと、柳田は辺りに視線を向けてから愛斗の目を見つめた。 「先程のお客様は一体誰なんです?」 その言葉にはただ興味で聞いているというよりも、どこか嫉妬が混じっているように愛斗には感じられる。 「は!?別に、通常のお客だろ?多分、シェフがどんな顔をしてるか見てみたかったんじゃないか?」 「いいえ。あの方は、あなたのことを知っているという口ぶりでした。久しぶりとも言っていましたし…」 「あぁ?そんなこと言ってたか…?お前の聞き間違いだろ?」 あの男性客が「久しぶり」と言っていたのは、愛斗もはっきりと覚えている。 ただそんなことを言えば、知人同士であることは明白になるではないか。 本当に余計なことをしてくれたものだと、愛斗は思う。 柳田は愛斗の答えを聞いて、ますます距離を詰めてきた。 「いいえ。確かにあのお客様は、あなたを知っているようでした。そうですよね?」 美形のマネージャーに問い詰められて、愛斗は隠しきれなくなった。 そして大事な部分は除いて白状することにする。 「…分かったって。そうだよ、知り合いだよ」 「では、どうしてあの様な対応をしたんです?」 ”あの様な対応”とは、愛斗があの客に冷たい態度で接したことを言っているのだろう。 「もう過去の人間だし、もう関わりがないから…」 「そうですか…それで、どういったご関係の方なんですか?」 柳田がますます距離を詰めて愛斗の顔を覗いてくる。 その目は、これまで愛斗が見たことのないものだった。 まるで、嫉妬しているような…。 すると、バックヤードにいた荒川がやってきて声をかけてきた。 「どうしたんですか?」 愛斗たちがバックヤードに来ないので、様子を見に来たようだ。 「いや、何でもないよ」 変に心配させないように愛斗が答える。 「それじゃ、俺たち帰りますね」 「うん、お疲れ様!」 愛斗が笑顔を向けると、荒川は「お疲れ様です」と頭を下げてバックヤードに戻っていった。 「さ、俺たちも帰ろう」 先ほどしていた男性客の話を蒸し返したくなくて柳田を促す。 しかし彼はそれが不服だったようだ。 「まだ、話が終わっていません」 「いや、もう言うことなんてないから」 「答えてください。あの方は、誰なんです?」 この時の柳田はいつになくしつこく食い下がってきた。 「だから、ただの知人だって…」 「それなら、もっと丁寧に対応されても良かったのでは…」 「いいんだよ。お前が気にすることじゃない。この話は終わりにして、さっさと帰ろうぜ。遅くなったしさ」 「分かりました…」 柳田はまだ納得できないようだったが、しぶしぶ頷いた。 年上だけど、愛斗には逆らえない柳田だった。  午後十一時頃に店の外に出ると、誰か人影が見えたので、愛斗は少し驚いた。 こんな夜中にここに人がいるなんて思わないからだ。 「うわっ、誰だ?」 愛斗が幽霊でも見たかのように声をあげると、その人影が動いた。 「俺だよ、俺」 姿を現したのは、先ほど店で「シェフに会いたい」と言ってきたあの客だった。 「…」 「そんな顔すんなよ。寂しいだろ?」 男がニヤリと笑ったのが月明かりに照らされて見える。 苦い記憶が愛斗の脳裏を巡る。 「亘(わたる)…」 「お前が出てくるの、待ってたんだよ。驚いただろ?俺がこの店に来て」 そこへ、店の戸締まりを終えた柳田もやってきた。 「どうしました?」 怪訝そうに問う柳田に「何でもない」と言おうとしたのだが…。 「ん?アンタ、愛斗の彼氏か?最近仲良いみたいだな」 目の前の男、佐々木亘は不敵な笑みを浮かべ柳田に尋ねた。 亘とのことは、全てなかったことにしたいし、話にも触れられたくない。 せっかく愛斗が、柳田に対してやり過ごそうとしたのに…。 柳田が不快さを滲ませて応じた。 「どういうことでしょう。私は当店のマネージャーです。マネージャーとして、シェフを支えているだけです」 「そうか?」 亘は納得していないようだ。 「あなたは、一体どなたなんですか?」 「柳田!」 柳田が亘に尋ねたので、愛斗は焦って制止しようとした。 厄介なことになりたくなかったが、亘は真実を明かしてしまう。 「俺か?俺は、そいつの…愛斗の元彼だよ」 その言葉を聞いて、柳田の目が愕然と見開かれたことに、愛斗も気付いた。 柳田には知られたくなかったと、愛斗も肩を落とす。 「い、今さら何しに来たんだよ!」 愛斗は、目の前でニヤリと笑う男に怒鳴った。 「お前と、やり直したくてさ」 そう言えば、前にも亘が店に来ていたようだった。 あの時はきっと、今日のための下見にでも来ていたのだろうか。 「やり直すって…」 冗談じゃない。 別れたのだって、亘が原因だったのに…。 ****************************************** 読んでいただきありがとうございましたm(__)m 店にやってきたのは愛斗の元彼・亘でした! やり直したいと言っていますが、さて、これからどうなる!?

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