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第32話

亘という愛斗の元彼が店にやってきた!現場は修羅場になってしまうのか!? ****************************************** 「お前を傷つけたのは分かってる。けど後悔してるし、忘れられないんだよ…」 「何、言ってるんだ…?アンタはそんなこと言える立場じゃないだろ!?」 少し激昂して言った愛斗に、亘は縋るように両手を握ってきた。 「悪かったよ、本当に…」 「やめろ…」 どの口が言うのだと、愛斗は心底腹が立った。 「やっぱり、俺にはお前しかいないんだって!」 「俺はもう、アンタのことなんて何とも思っちゃいない!」 それまで成り行きを見守っていた柳田が愛斗と亘の間に割って入る。 「時間も遅いですし、こんな所で止めてください」 確かに、既に夜中になっているし近くにはマンションもある。 騒いでいては、近所迷惑になるだろう。 柳田の言葉に、亘が柳田の方に顔を向けた。 「あぁ?…アンタ、愛斗の彼氏か?」 亘の問いに、柳田が目を見開いたのが愛斗にも見えた。 質問に対して柳田は否定する。 「…いいえ、違います」 「本当かよ。じゃあ、何だってんだよ」 そこへ、愛斗が口を挟んだ。 「ここの店のマネージャーだよ!それでいいだろ!?」 「それだけか?そうとは思えないけどな」 何か含みのあるような、不敵な笑みを亘が浮かべているのは暗闇でも分かった。 「どういう意味だ…それは…」 「知ってるんだぜ?お前らが、プライベートでも会ってんの」 そう言うと、亘は来ているジャケットの内ポケットから何かを取り出した。 差し出されたそれは、愛斗と柳田が映画館に入る際のショットが写った写真。 それを見た愛斗と柳田は愕然とする。 「これは…」 どうして亘がこんな写真を持っているのだろうか。 まさか…。 「そうだ。お前たちが仲良く映画館に行った時の写真だよ」 愛斗のことを調べたのだと、亘は白状した。 「お前が今どうしてるか、知りたくてさ」 「知ってどうするんだ…」 「だからさ、お前とよりを戻したいんだって」 亘の言葉に、柳田が普段は見せることのない怒りの表情をしたのを、愛斗は気付かない。 「それなら無理な話だ。諦めてくれ」 「やっぱり、こいつがいるからか?」 ジロリと亘が柳田に視線を送る。 「こいつは関係ない!」 「シェフもこう言っているので、今日のところはお引き下がりください」 柳田の声には、有無をせない迫力があった。 「ちっ、仕方ねぇな…また連絡するよ。じぁあな、愛斗」 そう言うと、亘は暗がりの中へと消えていった。 「はぁ…」 愛斗は大きく溜め息を吐く。 「悪かったな。帰るか」 「そうですね」 二人で従業員用の駐車場に向かうが、その際に交わされた言葉はない。 愛斗は、亘の「また連絡する」という言葉を、あまり気にしていなかった。 亘と関わっていた時の電話番号を、現在は使っていないからだ。 モヤモヤとした気分のまま駐車場に到着すると、柳田が口を開いた。 「ちょっと、車の中で話しませんか」 普段は互いに自分の車で通勤している。 柳田の言う話がきっと亘のことについてだろうということは、愛斗にも察しがついた。 「あぁ…」 柳田に促されて、愛斗は柳田の車の助手席に乗り込む。 「何だよ…」 沈黙に耐えかねた愛斗が柳田に尋ねると、柳田は身を乗り出すほどの勢いで尋ね返してきた。 「あの男は、あなたの恋人なのか!?」 普段の、マネージャーとしての柳田とは全く違う様子に、愛斗は大いに驚く。 「柳田…」 「一体、なに者なんだ!?」 どうしてこんな剣幕で詰め寄られるのか分からない。 しかし事実を明かさなければ、彼は引かないだろう。 「昔付き合ってた、相手だよ…何でそんなにムキになるんだよ…」 全く、柳田らしくない。 「やっぱりそうでしたか…」 口調が普段の店でのものと同じに戻り、ひとまず彼は落ち着きを少しは取り戻したようだ。 「彼はやり直したいと言っていましたが…どうして今になって?」 柳田がなぜここまで気にするのか、愛斗にはさっぱり分からない。 「し、知るかよ…。前にも一度、店に来てたみたいだったけど」 「あぁ…どうりで見たことがあった気がしたんです」 「何だ、お前も覚えてたのか」 記憶力が良く、お客の顔もすぐに覚える柳田らしいと愛斗は思った。 「えぇ、もちろんです。それで、今はどうなんです?あの男のことは、どう思ってるんです?」 「別に、何とも思ってないよ。過去の話だって」 「しかし、あの男はやり直したいと言っていますが」 柳田にしつこく問われ、愛斗はますます混乱する。 『俺のことを何とも思ってないなら、放っておいてくれ…』 それが愛斗の本音だった。 「俺にそんな気はない。それに、もう店にもお前にも迷惑はかけないから…」 それだけ言うと、愛斗は「それじゃ、また明日」と言い残し柳田の車から降りた。 こんなに柳田にしつこいくらいに問い詰められると、期待してしまうではないか。 自分の恋愛関係に関心があり、自分のことが気になっていると…。 だから柳田に対して、僅かな希望を持ってしまう。 けれど、そんなはずはないのだ…。 ****************************************** 読んでいただきありがとうございましたm(__)m 愛斗の元彼が登場し、詮索してくる柳田。 彼は一体どう思っているのか!?亘はこのまま引き下がるのか!?

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