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余韻06 もうずっと、はじめから
寝台に降ろされて、端に腰掛けたままヘイデンを見上げる。
ヘイデンは少し鼻の先が赤くなっていて、かわいかった。
「……その、リオネル。――触るよ」
ゆっくりと屈んだヘイデンに、上から覆い被さるように抱きしめられて、
耳元で囁かれた。
「――うん」
リオネルも、首に手を回して、少し引き寄せる。
ヘイデンは、その力に逆らわないで、リオネルをゆっくりと押し倒した。
上からじっと見つめられて、頬を指の背でなでられる。
まだ二人の間に隙間があって、それが嫌で名前を呼んだ。
「――ヘイデン」
「……うん」
そっと。
唇同士が触れ合って。
体が重なって。
そのまま、手のひらでお互いの体温を味わいながら、唇で会話をした。
この寝台で体を重ねた時は、あんなにもさみしかったのに、
夢中でお互い味わっている間、ずっとヘイデンが近くて、嬉しかった。
「――て、リオネル。そろそろ時間だよ」
頭をなでる手のひらと、優しい声。
薄く目を開くと、薄ぼんやりとした明るさが、ヘイデンのふわふわの髪の毛の向こうに見えていた。
「……おはよ?」
「うん、おはよう」
微笑むヘイデンの顔に、はっとして口元をなぞる。
それを見たヘイデンが、少し体を揺らして笑った。
「大丈夫、今日は垂れてないよ」
「――――っ」
思わず絶句したところを、ヘイデンの腕の中に抱き込まれて頬ずりされた。
「垂れててもいーよ。油断してくれてるの嬉しい」
「は、ずかしいってば!」
その反論に、ヘイデンは今度こそ声を上げて笑って、
リオネルも思わず笑ってしまった。
「あの……、さ」
食堂から持ち込んだ朝ごはんをいただきながら、口を開く。
ヘイデンも、リオネルがロビンとして振る舞っている間、
自分と同じようにさみしかったり、もどかしかったことは、もうずいぶん理解できた。
それでも、自分のことに気づいた時に、どうして教えてくれなかったのか。
少しだけ、気にかかっていた。
「うん、なあに?」
皮を剥いた果物を口に運びながら、ヘイデンが首を傾げる。
ソファに隣同士。
これまで通りの距離感。
「……ヘイデンさ。俺のこと気づいたとき、どうして、気づいたよって、言ってくれなかったの?」
「リオネルの、こと?――ロビンの正体?」
首を巡らせてこちらを見たヘイデンに、こくりと頷いてみせる。
リオネルのことを、前から気にしてくれていたのなら、リオネルとして恋人になろうと言ってくれても良かったのに。
少しだけ、そう思った。
「だって……」
ヘイデンは、少し唇をとがらせて、手にした果物に目線を落とした。
「ロビンでいる間は、俺のこと知ってもらえるチャンスじゃん。
そんなの、手放せないよ」
思いがけない言葉に、瞬きをする。
ヘイデンはなおも言葉を続けた。
「……俺だって、ちょっとくらい計算するよ……」
「けいさん……」
ちら、とこちらを見たヘイデンは、少しばつの悪そうな顔をしていた。
「ロビンは、恋人だったもん。そしたら、俺は恋人になったらこーいうやつだよってアピールできるじゃん。
……俺ずっと、リオネルからはただの困った患者って思われてたから、」
そのまま、背中を丸めてソファに体を預けたヘイデンは、ぽつりとこぼした。
「……必死だったよ……」
その言葉に、少しだけ目を丸くした。
ヘイデンはいつだって大きくて、頼もしくて、まっすぐで。
自分ばかりが振り回されている気がしていた。
けれど。
「……ふふ」
「なに?」
「ううん。……いや。
憎めない、かわいい、困った患者さんだったよ」
恋をしていたのは、自分だけじゃなかった。
もしかしたら、
――もうずっと、はじめから。
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