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百十六 遅いよ、バカ

「『盗賊たちを潰せば、一家団楽ができる』って書いたのね。でも、娘さんは死ぬまででも分からなかっただろう。彼女はもうお前たち『一家』の人ではないこと」 癸黙は半歩前に押したら、郡守は慌てて弁解をした。 「し、仕方がないんだ!私は、民のために……そうでもしないと、延国はこの郡を侵攻する!延国は、もう私たちや盗賊が対抗できる強さではないんだ!私は、民の命を守るために、盗賊の除去に協力をしただけだ!」 癸黙は鼻で笑った。 「なるほど、お前にとって、娘さんは、民じゃないんだ」 「彼女一人の犠牲で、たくさんの人々は守ったぞ!官吏の家で生れた以上、これは彼女の使命だ!これは大義だ!私は、彼女のことを誇りに思う!」 「フン~娘さんはあんな形でお前の誇りになるつもりはないと思うけどな」 癸黙の目に冷徹な光が煌めいた。 「!」 郡守は強く震えた。 噂で罪人軍団の作風を聞いた。 命を乞うものに絶対に容赦をしない。この孫、絶対自分に復讐するつもりだ。 唯一の希望は、血の繋がりだ。情で彼を動かさねば…… イチかバチかの覚悟で、郡守は苦しむ親ぶりを演出した。 「私のことを憎んでいるのが分かる!私は彼女だけでも逃してくれと延国にお願いをした。だが、女は嫁に行った以上、もう実家の人間ではない。誰から見ても、彼女はもう盗賊の一員だ。延国は盗賊団を憎んでいるから、私の懇願に応じなかった……私ができるのは、せいぜこの郡の民を守ることだけだ……」 「プッ、プハハハ」 郡守の遅すぎ涙を目にして、癸黙はいかにも楽しそうに笑った。 「さすが、心変わりが早いな。きっきまで堂々と『官吏の娘の使命』を誇ったのに、瞬きの間に『盗賊の運命』を嘆くのか」 「!」 話の矛盾が容赦なく指摘され、郡守は言葉に詰まった。 癸黙は更に進んだ。 「本当は、お前が盗賊に頼って郡を防衛するのが朝廷にバレたんじゃない?もう寧国の官吏で居られないから、イチかバチか娘を利用し、定山郡を延国に売った」 「!?」 「そ、それはお前の勝手の想像だ!官吏の身分と関係ない!私は民を最優先に考えているのだ!私は民の命は守ったのは事実だ!娘を犠牲しても、名誉を犠牲しても、民を守る。それは、私の人生の正義だ!」 郡守は冷汗を掻きながらも、必死に弁解した。 それに対して、癸黙は興味を失ったように、軽々しく話を置いた。 「じゃあ、今度はお前の犠牲で、民を守ろう」 癸黙は刀を郡守の前に投げ出した。 「ここで自決すれば、俺は侵攻を止める」 「!!」 「……」 「……」 郡守は一生懸命次の手を考えようとするが、頭が回らない。 恐怖と圧迫感に負けつつ、震える手を刀に伸ばす。 「もうやめて!!私たちは誰よりも苦しいの!」 間一髪の時に、郡守の傍についている中老な婦人が前に出た。 癸黙は一目で分かった。この母とよく似ている顔を持つ人は、自分の祖母だ。 祖母はビクビクと癸黙の顔に触れて、涙を流す。 「よく、よく見せて……ああ、あの子に似ているわ……」 癸黙は祖母を押し退けなかったのか、祖母は勇気を絞り、癸黙に抱きついて、思い切り号泣した。 「どうして、どうしてこうなるの?私たち一家は、どうしてこうならなければならないの!!お願い、もうやめて!この人はあなたの祖父、私たち、家族なのよ!!」 「……」 その姿は、母の最後の号泣に重なる。 「そうだ!俺たちは血の繋がっている家族だ!今でも遅くない、兵を収めて、この家に戻ろう!」 おそらく伯父の男は剣を構えながらも癸黙に一歩進んだ。 「郡守様は本当にいい人です!民を思う立派な官吏です!両親が失くした私を養女に引き取ってくれました!」 とある母の齢に近い女も加勢に口を出した。 子供たちは大声で泣き出し、ほかの人も家族愛だの、戦争の罪だのと語り始めた。 最後は、祖母は重いな嘆きを吐き、癸黙に訴えた。 「こんな世の中で、幸せ者は誰もいないのよ……」 「……」 「だから、他人を不幸にしてもいいと言うのか?」 「っ……!」 だが、癸黙の反応は「家族たち」の期待をみごとに裏切った。 「……うるさいな」 この人たちは、いままで出会った人たちの中で、一番うるさかった。 だが、一つだけ、正しいことを言ったかも。 自分は、この人たちと繋がっている。すべてのうるさいやつと繋がっているんだ。 父は殺人と略奪のクズ。自分は父以上に殺した。 母は現実を見えないバカ。自分は前世ばかり見ていた。 この一家は不幸の原因を自身以外の何かにぶつける。自分は不幸を世界にぶつける。 この世に生れただけで、この世の闇に繋がりを持つ。 あまりにも自然に、癸黙の心のなかから、とある声が浮かんできた (だから、あの人は現れないのか――) あの人が背負っている人々の心の腐敗はどういうものなのか、初めて知ったような気がした。 彼はどんなものを「浄化」してきたのか、やっと分かった。 なら、今度は、俺は、浄化して(救って)やろう―― 癸黙は刀を拾い、迷いなく郡守の胸を貫けた。 「ぎゃああ!!」 女子供は叫ぶ。 「貴様!よくも自分の祖父を――」 二人の男は癸黙に剣を刺す。 癸黙の動きがもっと早く、男たちの剣を叩き落とし、男たちの頸を切った。 絶望の叫びがさらに高まる。 祖母は郡守の死体に泣き崩れ、癸黙に悲願を叫んだ。 「もういい……もういいから!私も、私も殺して――!!」 「ああ、そのつもりだ」 目から焦点が消えた癸黙は祖母に向けて、刀を上げたら―― 「お、お頭!」 突然に、手下の盗賊が入ってきた。 「ここに入るなと言った」 「そ、そうだけど、変な奴がいた!どうしようもねぇ!か、体が勝手に……!!」 よく見てみると、手下の体が棒のように不自然に動いている。 「?」 「ご案内、ありがとうございます」 癸黙はまだ疑問を口にしていないのに、手下の後ろから、とある白い人影が出てきた。 その人が手を一振りをすると、手下が横に倒れた。 「!!」 癸黙の呼吸も、 心臓の鼓動も止まった。 その白い青年は、引き締めた表情で真っすぐ彼を見つめる。 「私の名は『天良鬼』、人々の願いに答えるために、戦争を止めに来ました。この戦争は、あなたが起こしたものですか?」 「……」 癸黙は言葉がでない。 目も離せない。 天良鬼は一家の惨状を見て、また癸黙を見る。 そして、眉をひそめた。 「もうやめてください。あなたの魂は泣いている」 (今更……?) (もう来ないじゃないか。) 泣くべきなのか笑うべきなのか怒るべきなのか、 癸黙はもう分からない。 ただ、なんとなく笑顔に似たような表情を天良鬼に見せた。 「遅いよ、馬鹿」 癸黙は刀の向きを変え、自分の腹を貫けた。 「!!」 天良鬼の驚き顔、それは、癸黙という人生が最後に見たものだ。 ーーーーーー 読んでいただき、誠にありがとうございます!契約中のネオページ様での連載進捗を超えてはいけないので、これから週間更新になります。>人< これからもよろしくお願いいたします!

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