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第5話 セフレとの遭遇

 待ちに待った日曜日。  快晴の空の下、郊外のショッピングモールは、カップルや家族連れでにぎわっていた。 「わ~! テンション上っがる~っ!」  駐車場に海斗さんの高級車が停まった瞬間から、俺はもう目を輝かせっぱなしだ。  天気も最高だし、最近オープンしたばかりのモールだし、何よりも隣には超イケメンの海斗さん!  はしゃがないなんて、無ーー理ーー!!     きょろきょろとあたりを見回しながら俺は捲し立てた。 「海斗さん、海斗さん! まずどこから行く?  あっ、あの服屋さん見たい! あっちの雑貨屋さんもいい感じ! でもでもその前にソフトクリーム食べたい!」 「落ち着いて、有くん」  海斗さんは柔らかく笑って、俺の乱れた髪の毛を直してくれた。 「せっかくのデートだし、君の行きたいところ、全部付き合うよ」 「さすが海斗さん……ッ! スパダリがすぎる……!」  海斗さんに腕を絡ませると、うっとりするくらいに美しい笑顔で答えてくれる。  ああ~もう最高!!!    チョコとストロベリーのソフトクリームを半分こして食べ、  服屋さんで海斗さんおすすめのジャケットとチノパンとTシャツ二枚を買って貰い、  パンケーキとパフェでカフェを休憩して、  最近話題でずっと観たいと思っていた映画を見て……。 「あ~~この映画めっちゃ良かった~~!!」  俺は海斗さんに買ってもらった映画のパンフレットを抱えながら、満足の吐息を漏らした。 「途中までどうなるかと思ったけど、最後はちゃんとハッピーエンドで良かったよね! 相手役の男の子もイケメンでかっこよかったし!」 「そうだね。俺は恋愛映画ってあまり見たことなかったけど、新鮮でとても楽しめたよ」 「だよね~っ、良かったよね! あの男の子……えっと、雑賀くん? のエッチシーンなんてめちゃめちゃセクシーだったよねっ!? もう抱いて~~~って思っちゃった!!」  へへへ、と笑えば海斗さんはなぜか片眉を下げて苦笑いをした。 「ん? どうしたの?」 「……なんでもないよ。ちょっとトイレに行ってくるね」  海斗さんはにこりと笑ってそう言うと、待っててね、と俺の頭をひと撫でしてから行ってしまった。    ――あれ、なんかちょっとだけ機嫌悪そう。  俺は海斗さんの背中を見送りながら首を傾げたが、すぐに『あっ!』と思い当たった。もうお昼の時間もだいぶ過ぎてるから、お腹すいちゃったんだな!?  そうだよね、けっこう歩いたし。  俺はふんふんと納得し、あたりを見回した。たしかこのあたりに、目をつけていたカフェがあったはず……。 「おっ、ユウじゃん!」 「――ん?」  いきなり後ろから声を掛けられ、振り返るとそこには。 「えっ──あっ、久しぶり~! タクミくん、ケイくん!」  ここ二年ほどの付き合いのセフレ、美容師のタクミくんと、大学生のケイくんがいた。  ふたりはゲイバーで知り合って意気投合しワンナイトしたとき以来の付き合いだった。まあまあの相性で時々三人で会っては3Pをしていたけど、イケメン美容師として仕事が忙しくなったタクミくんと、就活で忙しくなってきたケイくんとでなかなか予定が合わなくなってからはご無沙汰だった。    俺は嬉しくて思わず満面の笑みで二人に駆け寄った。 「えー、ふたりとも何してるの? てか最後に遊んだのいつ? 半年前とか?」 「俺んちで3Pしたときだから、3ヶ月くらい前だろ? マジかー、こんなとこで会えるとか思ってなかったわ!」  タクミくんの言葉に、ケイくんがうんうん頷き、俺のお尻をするっと撫でてきた。 「なあユウ、また遊ぼうぜ? 今夜とかどう?」  反対側からタクミくんが俺の顔を覗き込んでくる。 「目隠しと手錠してヤってみたいって言ってたよな? 本格的にそういうプレイできるラブホ見つけたんだよ。行こうぜ」 「――――それは無理かなぁ。有くんには俺という恋人がいるからねぇ」  突然後ろから掛けられた第三者の声に、俺はえっと振り返った。 「あ、海斗さん!」  俺のすぐ後ろに、いつのまにか海斗さんが立っている。  海斗さんは俺の腰に手を回し引き寄せると、タクミくんとケイくんに笑顔を向けた。 「こんにちは。有の、恋人の、海斗です」   ひとつひとつの言葉を区切るように、海斗さんが言う。 「えっ、あ……ど、どうも……ッ」  なぜかタクミくんとケイくんの顔色がみるみるうちに青ざめていくのが見えた。 「あ、あの、違うんすよ、別に、俺たちは、そんなつもりはなくて……」 「そうそう、彼氏がいるって知ってたらいくら俺たちだって、手は出さないっすよー」  二人はわたわたとそう言うと、踵を返し、逃げるように走り去ってしまった。 「えっ、ちょっと待ってよ! タクミくん! ケイくん!」  俺は驚いて二人を追おうとしたが、海斗さんに腕を掴まれた。 「ねえ有くん。引き止めてどうするの?」 「え?」 「俺がいるのに、あの男たちは必要?」  海斗さんが優しげに笑いながら、俺の目を覗き込んでくる。  ――あれ……?  いつも通り、優しげで理知的な、大人の余裕を纏った海斗さんだけど……。 「もしかして、怒ってる?」 「え? どうして? 怒ってないよ」  海斗さんは相変わらず笑っていた。見惚れてしまうくらいのキレイな笑顔で。 「……別に有くんは何も悪くない。大丈夫、俺には全部ちゃんとわかっているよ」 「海斗さん……?」  海斗さんが目をすっと細める。 「だけど、あの二人がいるところでもう遊びたくないかな。ねぇ、場所を変えない?」 「……場所、変えるの?」 「うん、二人になれる場所に行きたいな」  俺は思わず、ごくん、と唾を飲み込んだ。

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