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第6話 あっという間にうなじを噛まれた
ショッピングモールを出て海斗さんが連れてきてくれたのは、大きな高層マンションだった。
そう、連れていかれたのは海斗さんのおうちだ。
最初のうちは『これは絶対やるでしょ。祝♡初エッチ♡』なんて考えてたけど、だんだん俺のテンションは下がり気味になっていった。
だって海斗さんが不機嫌っぽいのだ。
一応手は繋いでくれるし、俺が話しかけたら答えてくれるけど。
――怒ってないって言ってたけど、これって絶対怒ってるよねー……。
その原因もなんとなくわかる。きっとさっき会ったタクミくんとケイくんに嫉妬してるのだ。
ふーん、嫉妬かあ……と思いながらも、エレベーターの中で俺は海斗さんの横顔を見上げる。
ちょっと意外だなって思った。
だって海斗さん、すごい優しいし、嫉妬しても顔に出さなさそうなのになーって。もしかして意外と子供っぽい?
なんて思う一方で、実はちょっと興奮してる自分もいる。
実は俺、優しいイケメンさんも大好物だけど、オラオラ系の男も大好きなのだ。ガチのSMは勘弁だけど、ソフトSは大歓迎。
『この後嫉妬した海斗さんにめちゃめちゃにされたりしてぇ!?』なんて妄想していたら、いつのまにかニヤニヤしてたらしい。
「何を考えてるの?」
「えっ?」
声をかけられて我に返った。いつのまにか海斗さんが俺の表情を観察するようにじっと見ている。
「海斗さんのこと考えてるに決まってんじゃん!」
「本当に?」
「ほんとだよ! 俺嘘つかないもん!」
自信満々に言ったけど、海斗さんは疑わしいって感じでじっと俺を見つめている。だけど急ににこっと笑顔になった。
「……そうだよね。有くんは嘘つかないよね」
「そうだよ!」
どうやら機嫌は直ったらしい。
俺は手を握り直し、海斗さんにしな垂れかかって上目遣いで微笑んだ。
「海斗さん……好き」
海斗さんが甘く微笑んで、俺の頭を撫でてくれる。
「俺も有くんのこと大好きだよ」
「うん♡」
良かった、良かった、無事に仲直りだ。
豪華なエレベーターの中で甘々にいちゃついて、到着したのは31階の最上階。
すごくない?
高級マンションの最上階だよ?
「え? 何これ!? すっごい豪華!」
床には高級ホテルかって感じの赤いふかふかの絨毯が敷き詰められているし、広い廊下のあちこちには、高そうな壺とか絵画が飾ってある。
きょろきょろと周囲を見回しながら廊下を歩いていると、隣の海斗さんが言う。
「最上階はワンフロアなんだ」
「ワンフロア? えっ、てことはこの階、海斗さんの部屋しかないの!?」
「そうだよ。騒音とか気になるからね」
「あ、なるほど~」
確かに! と俺はうんうん頷いた。
俺のアパートの壁なんてめちゃめちゃ壁が薄くて、隣のおっさんのいびき聞こえてくるくらいだもん。
そういえば逆に反対側の部屋は全然物音しないけど、あれって人住んでのかな? 一応カーテンは付いてるから誰か住んだるんだろうけど、人が出入りしたところ、見たことないんだよなあ。
少し歩くとすぐに大きな扉の前に辿り着いた。玄関ドアも豪華だ。海斗さんが機械に指をかざすと、カシャンと鍵が開く。
「えーすごっ、指紋認証?」
「そんなにすごくはないけどね。さあ中にどうぞ」
海斗さんがにこりと笑って、開いたドアを押さえて促してくれる。
「わー!! おじゃましま~――」
俺の言葉は途中で途切れた。
部屋に入った瞬間、海斗さんに後ろからぎゅっと抱きしめられたからだ。
「え……あ……海斗さん?」
「有くん……嬉しいよ……やっと二人きりになれた……」
耳元でささやかれ、そっと首に着けたカラーを指でなぞられる。ぞくぞくっと背中から痺れのようなものが沸き上がってくる。
鼻が利かなくてもわかる。
海斗さんがアルファのフェロモンを放出しているのだ。
「海斗さん……」
俺は向かい合わせになって、海斗さんの目を見つめた。
「ね、ちゅーして」
「うん」
海斗さんの超かっこいい顔が近づいてくる。そっと唇が重なる。
ようやく初ちゅーだ♡
喜んでいるあいだにも、海斗さんは俺の唇を優しく啄んだ後、するりと大きな舌を潜り込ませた。
滑らかな舌どうしを絡ませると、ぞくぞくっと背中に快感が走る。
「んっ……ぁ……」
めちゃめちゃうまいキスに足の力が抜け、ずるずると玄関に座り込んでしまった。海斗さんが俺を見下ろして、自分の唇をぺろりと舐める。それがめちゃめちゃセクシーで。
「……もしかして勃っちゃったの?」
「……あっ」
俺は反射的に自分の下半身を手で押さえた。俺のおてんばな下半身は、もうすでにぴんぴんになっている。
恥ずかしくて、でも嬉しくて、俺はもじもじと海斗さんを見上げる。
「だって、海斗さんのちゅー、すっごく気持ちよくて」
「ふふ、ありがと」
くすりと笑った海斗さんが俺を抱き起こし、玄関の框に座らせるとスニーカーを脱がせてくれる。
そのまま横抱きにされて、連れ込まれたのは寝室。部屋の真ん中にある大きいベッドに、ぽすんと下ろされる。
「やっとここに君を連れてこれた……」
海斗さんのその言葉に嬉しくなってしまった。
だって俺がずっとエッチしたいなって思ってたように、海斗さんも俺のことを抱きたいって思っててくれたなんて。
俺は海斗さんの首に腕を回して囁いた。
「もっとちゅーしたい」
「……ん」
とろりと海斗さんの瞳が溶けた。
アルファのフェロモン全開って感じの色気に、もう俺は腰砕け。
ちゅっ、ちゅっとリップ音をたてて、海斗さんが俺の唇を吸う。俺は大きく口を開けて、海斗さんの舌を受け入れた。
濃厚なキスを交わしながら、お互いに邪魔な服を脱ぎ捨てていく。
お互い生まれたままの姿になってくっつくと、あまりの気持ちよさにため息が漏れた。
――んー……気持ちいい……。
海斗さんはあらゆるところにキスして舐めてくれる。
首筋、鎖骨、肩、腕、指先――。
その愛撫の丁寧さと言ったら、もう俺ふやけちゃうよー? ってくらい。
「……有くん、ここ、好きなの?」
「ん……だいすき」
すりすりと乳首を指でつままれると、下半身がぐんと熱くなる。同時に後ろがとろとろに濡れていくのが自分でもわかった。
思わず太ももをすり合わせると、気が付いた海斗さんが甘い笑みを浮かべて俺の足を撫でる。
「ふふ、我慢できなくなっちゃった?」
「――あっ」
いきなり足を左右に割られ、ぐっと腰を持ち上げられた。
これじゃ丸見えだ。いくらなんでもちょっと恥ずかしい。
「海斗さんっ」
「しー……大丈夫、全部見せて」
海斗さんの目はぎらついていた。興奮した男の目だ。
「めちゃめちゃ濡れてるよ」
「……っ」
耳に吹き込まれるように言われて、一気に体温が上がった。
だって海斗さん、普段は優しいのにエッチのときはSっ気あるなんて!
ドキドキするし興奮する。
海斗さん……かっこいい♡
海斗さんは俺の勃ちあがったところとその後ろのひくひく震える後孔をじっくり舐めるように眺めている。そして意地悪だけどきれいな顔で笑った。
「いやらしい身体」
「だって……好きなんだもん」
「好きなのは俺? それともセックス?」
「……どっちも」
「しょうがないなあ。いやらしい子にはお仕置きしないとね」
海斗さんはふっと笑うと、俺の後孔に指を添えた。そこは海斗さんの愛撫でしっかり濡れそぼっていて、簡単に長い指を受け入れる。
「あ――……っ」
粘膜が海斗さんの指をしゃぶるように動く。粘っこくていやらしい水音と、俺の喘ぎ声が静かな寝室に響く。
「あ……ん、う……、あぁ……っ」
思った通り海斗さんは百戦錬磨だった。的確に一番感じる膨らみをこれでもかと撫で擦られて、俺は自分からも腰を振った。
徐々に指が増やされ、気が付くと三本の指を受け入れていた。差し込んだ三本の指がくぱぁっと広げられる。
「そろそろいい?」
「うん……♡」
息も絶え絶えになりながら、俺はこくこくと頷いた。
海斗さんが足の間に腰を入れてくる。俺は海斗さんの下半身に釘付けになってしまった。
――うわ、おっきい……。
今まで見た中で、一番のマグナムサイズだ。
長さも、先端の大きさも、反り返りも。さすがアルファって感じだ。
あれを奥まで挿れられてがんがん突かれたら――と思うと、よだれが出そう。
「そんなに熱心に見つめて……。欲しいの?」
「……ほしい……挿れて……っ」
俺は腰を浮かし、自分から海斗さんのものに窄まりをすりすりと擦り付ける。
海斗さんの喉がごくりと大きな音を立てて上下するのが見えた。
「有くん――」
海斗さんが熱っぽく囁き、俺の腰を掴んだ。
ぐぐぐっと大きな熱の塊が入ってくる。
おっきい。めちゃめちゃおっきい。
濡れた粘膜をたっぷりと擦りながら、海斗さんのものが入ってくる。
「あ……っ、ん、ん――あっ」
びくんっと身体が跳ねた。俺の陰茎からぴゅるっと精液がこぼれる。挿れただけでちょっとだけイっちゃったのだ。
気が付いた海斗さんが動きを止める。俺の下半身を見て、「あれ?」と目を見開いた。
「もしかしてもうイっちゃった?」
「うぅ……」
「本当にいやらしい身体だね」
「ごめん、なさ……っ♡」
「悪い子」
海斗さんはそう息を漏らすと俺の頭を撫で、ゆっくりと腰を引いた。
「ほら、ここ、好きでしょ?」
「あっ……あんっ」
内壁のお腹側、浅いところにある気持ちいい膨らみ。前立腺を丸い先端でこりこりと押され、俺はぶるっと震えた。とろっとまた陰茎からは白濁が漏れる。
「またイったね。もったいないなあ。早く中にだしてあげるね」
「あっ」
今度は足を高く挙げさせられ、ぐぐうっと奥まで挿入される。
奥の行き止まりのぬかるみをちょっと強引に突きあげられて、重たい快感が胎に溜まっていく。
「あっ、ぁっ、は、はぁっ、奥ぅっ」
「うん、奥も、気持ちいいね」
「あっ、あんっ、もう、イ……っ!」
全身を弓なりになって痙攣させながら、今度こそ俺は思いっきり射精した。
「……っ」
海斗さんが色っぽく呻いた。俺の身体を抱き込みながら、上半身を大きく震わせる。粘膜の中にどくどくっと精液を大量に注がれる感触。
――気持ちい……っ。
海斗さんは最後の一滴まで注ぎ込むと満足したように息を吐いた。
抱えていた俺の足を下ろされ、後孔からゆっくりと引き抜かれる感覚。
はあっ、はあっ、と喘ぐみたいに息をしている俺のおでこに、海斗さんがちゅっとキスを落としてくれる。
「いっぱいイったね」
「ん……気持ち、良かった」
「ふふ」
海斗さんは俺の頭を優しく撫でてくれる。そしてふいに口を開いた。
「……ねえ、有くん。どうして女の人が『イク』のか知ってる?」
「へ……? ん、なにぃ?」
「女の人がイくと、中に出された精子がその動きで押し出されるんだって。それで卵子のところまで届きやすくするらしいよ。一回のセックスで、妊娠の精度をあげるためなんだね」
「にんしん、の、せいどを、あげる?」
「うん、そう。オメガもいっしょだよ」
にっこり笑うと、海斗さんは仰向けになった俺の身体を転がし、うつ伏せにする。そして腰を掴み、尻だけを高く突き出した格好にさせられた。
えっ? えっ? と驚いているあいだに、尻たぶを左右に割られ、その間に指がねじ込まれる。
「……あ……ぁ……んー……っ」
ぐぐっと入ってきた指が、的確に一番感じる膨らみを探り当て、容赦なく抉る。
「だからね……。いっぱいイくといいと思うんだよ」
「ん――――!」
ひときわ強く前立腺をこねられ、俺は身体をびくつかせながら射精した。でも何回も射精させられたから、陰茎からはぴゅるっと少量の精液が漏れただけだ。
「はあ、はぁっ、やっ、やめ……イった……イったから……っ」
海斗さんの指は止まらない。
身体が痙攣し、またぴゅっと精液が漏れる。
「ん……っ! もう、イけないって……!」
俺が泣きべそをかきながら上にずり上がろうとする。でも腰を掴まれて引き戻される。
「何回も何回も注ぎ込んで、何回も有くんがイけば、できると思うんだよ、赤ちゃん」
――な、に?
俺はその言葉に目を見開いた。
赤ちゃんって言った? 何? 何? どういうこと?
混乱している間にも、濡れてヒクつく後孔にまた猛ったものを押し付けられる。
ぬちゅりと大きな亀頭がもぐりこむ。
「え? うそおっ、――――あんっ!!」
腰を大きな手でわしづかみにされ、一気に奥までいれられた。そのまま突き上げるように一番奥を叩かれ、俺はがんがん犯された。
「まって、やだ……っ、海斗さんっ……も、イけな……っ」
泣いても叫んでも、海斗さんは止まらなかった。
何度も絶頂の大きな波がやってきては呑み込まれ、もみくちゃにされ――――。
「ん……?」
気が付くと俺は裸のままベッドに横たわっていた。どうやら少しの間気を失っていたらしい。精液まみれだったはずが、海斗さんが拭いてくれたのか肌の上はすっきりしている。
「海斗、さん……?」
つぶやくと、隣にいたらしい海斗さんが顔を覗き込んできた。
「あ、有くん、起きた? 身体は大丈夫?」
「あー……」
確かに喉はかすかすで痛いし、股関節もぐにゃぐにゃだった。
だけど心配そうな顔をする海斗さんが可愛くて愛しくて、俺は平気なふりをすることにした。
なにより、久しぶりのエッチ、気持ちよかったし。
「なんとか平気」
へらっと笑って言うと、海斗さんは安心したように息を吐いた。
「良かった……。君のこと抱けるのが嬉しくて、やりすぎちゃった。今度は気をつけるね」
言いながら、海斗さんは俺のお腹に手を伸ばした。優しく撫でてくれるので、だんだん眠くなってきてしまう。
「ん……」
「だるいでしょう? このまましばらく横になってるといいよ」
「んー」
「これだけいっぱい中に出して、有くんもたくさんイったんだから、もしかしたら赤ちゃんできてるかもね」
――赤ちゃん?
俺はその言葉に、ぼんやりと目を開いた。
「へ? なに……? 赤ちゃんって……なんのこと?」
俺の質問には答えずに、海斗さんはにっこり笑って俺の顔を覗き込んでくる。そして首につけたオメガ用のカラーに指先でちょんと触れる。
「次はこれだね」
「……え?」
「俺が有くんのそばにいて一生守るから、これはもういらないよね?」
俺はびっくりして完全に目が覚めてしまった。
「え……? な、なに? どうして?」
「だって有くんは俺のこと好きでしょ? 俺も有くんのこと心から愛してるよ。だったらうなじ、噛んでもいいよね?」
その言葉に俺はさっと青ざめた。
だって、うなじを噛まれたらオメガとアルファは|番《つがい》になってしまう。
その点俺は不完全なオメガだから、うなじを噛まれたら必ずしも番になるかは五分五分だけど、そんなやばい橋は渡れない。
俺たちオメガはアルファと違って、一度結んだ番関係を解消できないのだ。番関係を解消する方法もあるけど、心も体もめちゃめちゃになって廃人になってしまう。
――それは、もう、嫌だ……。
俺はひきつった笑いを浮かべながらベッドの上でじりじりと後退し、海斗さんから距離を取った。
「あのさ、俺たちってさ、出会って一週間だよね?」
「………………うん、そうだね」
「番になるのは、ちょっと早くない……?」
その言葉に、海斗さんはすうっと目を細めた。
「早くないと思うよ。むしろ遅いくらいだ」
何言ってるんだろう。意味がわからない。
ぶわっと冷たい汗が出てくる。
俺は必死に言い募った。
「そ、それに俺っ、不完全なオメガなんだ! うなじを噛まれても、ちゃんと番になれるかどうかわかんない!」
海斗さんには初めて話すことだった。だから驚くかな、と思ったけど――。
「知ってたよ」
「え?」
「実際に番になれるかどうかはどうでもいいんだ。もしちゃんと番になれなくてもいい」
「じゃ、なんで噛むの……?」
海斗さんは答えなかった。少しだけ寂しそうに微笑む。
「大丈夫だよ、心配しなくても大丈夫。今度こそ俺が有を守るからね」
海斗さんがさっと身を起こし、ベッド横の小さなチェストの引き出しから、何かを取り出した。
ちゃりん。
俺は海斗さんが持っているものにくぎ付けになった。
銀色に輝く、ちいさな鍵。
「あ、あのー、そ、それってまさか」
「正解。君のカラーの鍵だよ」
……いや待って。
どうして持ってんの?
俺が付けてんのは安物のカラーだけど、さすがに一点ものだよ? そのへんにほいほい鍵が落ちてるわけないよ?
「そ、そんなわけ――」
「合鍵を作ったんだよ」
「へ……」
「有が住んでる部屋、セキュリティがガバガバだもんね。簡単に部屋に入れたのは良かったんだけど、本当に気が気じゃなかったんだよ? 変な男が鍵壊して、寝ている有を襲ったらどうしようってさ」
「え? え?」
「一応隣の部屋を借りて監視してたんだけど、気が付いてなかったでしょう」
「隣の部屋借りてたのって海斗さんなの……?」
次々に明かされる衝撃の事実に、俺の頭はいまや真っ白だった。
……え?
……ちょっと待ってね?
海斗さんはずっと昔から俺のことを知っていて、
俺があのオンボロアパートに住んでるのもちゃんと知ってて、
というか何度も俺の部屋に入ったこともあって、
なんでかわかんないけど隣の部屋もちゃっかり借りてて、
しかも俺のカラーの合い鍵を作って持ってるってこと……?
「なんで……?」
俺が呆然と言うと、海斗さんは顔を上げた。その顔は今まで見た中で一番暗くて、でもすごく寂しそうで……。
「何も覚えてないんだね」
「え……?」
「でも大丈夫だよ。君が何も悪くないってことは、俺がちゃんとぜんぶ知ってる」
何を知ってるの……?
俺は何を覚えていないの?
わからない。わからないけど――。
「有」
海斗さんが近づいてくる。
俺はうつ伏せになり、ベッドの上を這って逃げようとした。
だけど力が入らない。腕の力がかくんとぬけ、べしゃっとシーツの上に上半身が崩れ落ちる。その腰を海斗さんが掴む。ぐっと猛った熱い固まりが、どろどろに濡れた穴に押しつけられる。
「――あ……っ」
また入ってくる。海斗さんの長くておっきいものが、深くまで。
「あ、あ、や、……やだ……」
背中にずっしりと体重を掛けられ、身動きが取れない。うなじをざらっと濡れた海斗さんの舌が舐める。
そして当たる、硬いエナメル質の感触。
ぷつり、と皮膚が破られ――。
「――――っ!!!!」
俺の陰茎からはぷしゃああああっと尿だか潮だかわからない液体が噴き出した。白いシーツをびしょびしょにぬらしていく。
「……ぁ……ぅ……っ……」
うなじを噛まれた痛みと衝撃、突き抜けるような最大の快感に、俺の口からは音にならない呻き声が漏れる。
すうっと目の前が白く染まっていく。
「嬉しいよ……やっと……やっと取り戻した……」
海斗さんのつぶやきが聞こえたのを最後に、俺は意識を失った。
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