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春を告ぐ場所2

 金浦空港からホテルまでイジュンの運転で行く。俺の荷物が多いのでお父さんから車を借りてくれたのだ。ほんとはすぐにマンションにと俺は思っていたんだけど、それはイジュンに止められた。それは韓国では保証金にあたるチョンセが高いから、しっかりと自分の目で見て決めた方が良いといわれたからだ。だから何日かはホテルに泊まって、その間アパートの内見をして部屋を決めることにしている。だから今日はとりあえず、以前来たときに泊まったホテルへ行く。  チェックインを済ませて荷物を置くと、さっそく部屋を見に行く。まずは地下鉄|梨大《いで》駅から5分ほどで、お店からは歩いて15分ほどのオフィステルだ。オフィステルは家具・家電がすでについているから即入居可だ。駅チカの物件がほとんどだから利便性はいい。 「ほんとはアパートの方がいいと思うよ」 「うん、わかってる。でも、とりあえず見る程度にさ。だって駅チカなんだから魅力的だろ?」 「まぁね」 「だってさ、家具・家電がついてるって魅力的なんだよ。韓国への引っ越しでお金かかるから」 「でもなぁ。まぁとりあえず行こうか」 「うん」  最初に見たオフィステルはまだ新しくてとても綺麗だった。|チョンセ《保証金》は100万円と安いし駅から近いし、お店にも遠くない。マートが少し距離があるのが難点かな。梨大は小さなマートがあるだけなんだ。生活するには少し難点だ。隣の|新村《しんちょん》には2件マートがあるんだけど。そして大きなマートに近いアパートへはこのあと内見に行く。 「悪くはないけど、マートが遠いのはちょっと不便じゃない?」 「やっぱりそうだよな」  結構気に入った物件ではあるんだけど、とりあえず新村のアパートに行ってみよう。 「退去時に返ってくるとはいえ、チョンセ高いよなぁ」 「日本での保証金はそんなに高くないんでしょ?」 「うん。100万円単位で出ていくことはないよ。10万円単位」 「それ羨ましいな。でも、これでも安くなったんだよ」 「安くなって100万円単位って信じられないよ」  そんな話をしながら新村駅近くの不動産屋まで歩く。次に見に行くところは新村と梨大の真ん中辺りで、お店からは徒歩10分くらいのアパートだ。ここなら大きなマートへも10分弱で行けるから、イジュンとしては先ほどのオフィステルよりもいいと思ってるらしい。不動産屋まで行くと30代半ばくらいの韓国人の男性が担当だった。俺としては日本語の方がありがたいんだけど、イジュンがおかしなところがないか見たいから、ということで日系の不動産屋ではなく、普通の街の不動産屋だ。  部屋は築5年のワンルーム。とはいえ、ロフトがついているから広く感じる。築年数も浅いから部屋も水回りも綺麗だ。ベッドや机といった家具はつかないけれど、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、レンジといったものはついているから、自分で買うのはベッドと机だけだから、そんなに出費にはならない。作り付けのおしゃれな棚もついていて部屋をおしゃれに飾りつけることもできるし、本棚としての使用もできる。駅までも歩いて7分程度でお店にも近いし、さっき見たオフィステルよりもマートは大きいし文句のつけようがない。収納スペースがかなりあるから、ほんとにベッドと机さえ買えば他には必要な大型家電は必要ない。 「ここいいな」 「うん、いいと思う」 「ここにしようかな」 「他は見なくていいの?」 「立地的にここが第1候補だったから」 「そっか。じゃあここに決める?」 「うん」  そうして部屋を決めて、無事に契約をした俺達は、お店へと行った。ほんとに物件から店までが近くていい。  店はイートインスペースも作って、そこの内装はイジュンが手配してやってくれてある。後はテーブルを入れるだけだ。ここまで俺はノータッチできた。  壁は清潔感のある白。どんなテーブルでも似合いそうだけど、少しカフェっぽさも出したくて、木目調のものがいいんじゃないかと思ってる。でもまずはどんな感じか現場を見てから。そう思って寄った。 「わぁ。いい感じじゃん。これなら木目調でカフェっぽさ出せるな。でも、ちょっと壁が寂しいかも。ウォールステッカー貼るのもいいかもな」 「ウォールステッカーか。じゃあ明日海の家具とここのテーブルを買いに行くときに買おうか」 「なんか、ここまで全部1人でやらせてごめん」 「でも、要所要所で写真で見て貰ってるし、俺も相談してる」 「それは当たり前だろ。これからは俺も一緒にやるから」 「うん。よろしく。で、家具はどうしよう。明日でも見に行く?」 「そうしたい。さすがに今日は少し疲れた」 「それはいいよ。アパートの鍵は貰ったし、明日も|アボジ《父さん》の車借りるから布団とかなら運べるから」 「そっか。ありがと。明日は朝から頑張らないとな」 「そうだね。あ、明日海、携帯の契約しないと」  言われて気付いた。日本の携帯は解約したから、こっちでスマホを買って契約をしないと不便極まりない。 「この辺、携帯ショップある?」 「あるよ。じゃあ携帯見に行ってから食事に行こう」 「前来たときに食べたブテチゲ食べたい」  あのときはソヨンさんのことがあって、味がよくわからなかったんだ。だから、今回はリベンジで食べたいと思ったんだ。  でも、韓国の部屋を契約して、携帯も契約する。韓国に住むということがイマイチ実感できなかったけど、今日でほんとに実感できた。ほんとに俺、韓国に住むんだな。韓国に住んで韓国で仕事をする。韓国語は日本でもマンツーマンで勉強してきたけど、さっきの不動産屋は何を言っているかまったくわからなかった。全部理解するのは無理だとしても、なんとか意思疎通ができる程度の韓国語力は身につけないと生活をするのは大変だ。最初はイジュンに迷惑かけちゃうと思うけど頑張ろう。韓国初日にそう思った。

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