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春を告ぐ場所4

 家具屋から鐘路までは車ではすぐだった。乗り換えがないってこんなにスムーズなんだな。鐘路には大きな本屋があって、そこには雑貨屋が併設されているし、それ以外でも女性が好きそうな雑貨屋がチラホラある。だからお店に飾るものを探すのにはぴったりと言える。まずは本屋さんに併設されている雑貨屋さんへと行く。ここは飾るための雑貨が少なめで、すぐにお店を出た。次に入ったのは大きな通りに面した雑貨屋さん。ここも少し違う。 「なんか一口に雑貨屋って言っても色々なんだな」 「そうだね。次のところにはあるといいね」  そう言って次に入ったのは通りから1本入った静かなところにある雑貨屋だった。ここは3件目にして、やっと目当てのものを見ることができた。 「テディベアとか飾るの可愛いかも」 「それもいいけど、このミニチュアキッチンの飾り良くない?」 「あ、いいね。それ。後はインテリア兼ねてリードディフューザー置くのはどう?」  イジュンの口からわからない単語が出てきて、俺は首をかしげた。リードディフューザーってなんだ? 「リードディフューザーってなに?」 「ルームフレグランスの一つで木のスティックが刺さってるのみたことない?」 「あーあるある。それか。うん、いいんじゃん? ってかよく知ってるな」  女性ならまだしも、男でそんな名称を知ってる奴ってそんなにいないんじゃないだろうか。少なくとも俺は知らなかった。 「ああ。ソヨンが好きで見せて貰ったことがあるんだ」  ソヨン……。その名前が出てきて、俺は言葉が止まった。前回韓国に来たときにイジュンと一緒に空港にいた女性で、俺がイジュンの家に行ったときにイジュンの家に来た人。そして、俺に牽制してきた人。自分はイジュンのこと知ってますアピールがすごかった。それを思い出したら気分が悪くなった。でも、韓国に来たから、また会うことあるんだろうな。ないとは思わない。それが気分を重くさせる。それでもそれを今見せるわけにはいかない。 「なんの香りにする?」 「リラックスできる香りがいいよね」  そう言ってイジュンはパッケージの表の香りを見ている。俺はハングルは読めるようにはなったけど、英単語をハングルで書いてあるのは、すっごく読みにくくて苦手なんだ。だからイジュンに通訳して貰う。 「ラベンダー、カモミール、ベルガモット……。安眠は違うし、カモミール、かな?」 「よく知らないけど、カモミールってハーブティーもあるんじゃなかった?」 「あるある。ソヨンがたまに飲んでる」  出た。ソヨン。イジュンにとって歳の近い女性というのがソヨンさんだけなのかもしれない。それでも、イジュンの口からソヨンさんの名前がでるのはいい気がしない。でも、残念ながらイジュンにはそういうのが伝わらないんだよな。はっきり口で言わないとわからないタイプだ。まぁ、今は言わない。言うのはどうしても我慢できなくなったときかな? 「じゃあカモミールにしよう。あとは? なにかいいのある?」 「ここにはないけど、ドライフラワーを飾るとかどう?」 「あ、それいいね。花屋さんに行けばあるのかな? 花屋さんなら新村にあるから、明日買いに行こうか」 「そうだな。じゃあ、それは明日にしよう」 「じゃあここではテディベアとこのミニチュアキッチンとリードディフューザーだけでいいかな?」 「いいと思うよ」 「じゃあ買ってくる」  買うものはドライフラワー以外は全てここで買った。もしかしたら、もっと他にも欲しくなったりするかもしれないけど、ちょっとした雑貨であれば梨大にもあるから、なんとかなるんじゃないかな。すぐに決まったのは、頭の中でお店のイメージが出来ていたから。もちろん、それはイジュンもあったと思う。というか、男の俺達から見た女性が好きそうなものなんてたかが知れてるのかもしれない。これ、女性が見たらまた違うのかもしれないけど、それは男の俺達にはわからない。  そこでふと、ウォールステッカーを思い出した。そこに、会計を終えたイジュンが戻ってきたから言う。 「イジュン。ウォールステッカーってないな」 「あ! そうだな。うーんと……ウォールステッカーか。あ!もう少し東大門の近くに行ったところの裏通りに内装系のお店が連なってるところがあるから、そこへ行こう」  そう言って車で東大門近くのインテリア内装のお店へと行った。すごくしゃれた内装があって、外観は綺麗なんだよなと思いながらひとつの店に入った。そこは入口から見てもウォールステッカーがたくさんあるのが見て取れたから。 「どんなのがいいかな?」 「ドライフラワー飾るし、リードディフューザーも飾るなら、自然ってことでお花とかでいいんじゃん?」 「そうだね。春にオープンするから、桜があるといいな」  イジュンはそう言うと、お店の人に桜のウォールステッカーはあるかと訊いた。そうしてお店の人はたくさんの桜の木のウォールステッカーを持ってきてくれた。こんなにあるのか、と思ったけど、1枚1枚じっくり見ていき、桜の花びらが風に乗っているようなものを選んだ。 「いいの選べたな」 「うん。よし、じゃあ時間的にも夕食の時間だし、布団を見ないとだから広蔵市場に行こうか」 「そうだな」  そう言って俺達は広蔵市場に移動した。

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