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春を告ぐ場所6
翌日は朝から資材が届く。クレープを巻く紙がきて少しテンションが上がった。白にピンクの縁取りに桜の花のロゴにピンクでhanairoと印刷されている。ロゴの桜の花は、よく小学校で「よくできました」のスタンプで使われているような花で、その花の下にhanairoと入れた。このロゴはデザイナーさんに頼まずに俺が考えたものだ。個人での経営だから最初は何かと入り用だから、ささやかながらそこは節約をしたんだ。春だから桜、と単純だけど連想したので、そうしたら桜のデザインにすればいいっていう発想だ。韓国でも春は桜が咲くので日本と同じなのも連想がしやすかった。
「うん、いいね。このデザイン」
「そうか? ならいいんだけど。桜っていう連想ができたからそんなに難しくはなかったけど、どういう桜にするかはちょっと悩んだな。この桜の形ってさ、日本の小学校の「よくできました」っていう判のデザインから貰ってるんだよ。それよりは少し桜っぽくはしたけど」
「へぇ。じゃあ日本人が見たら懐かしいって思うのかな?」
「多分。良く似てるから」
「そうか。日本人来るかな? |弘大《ホンデ》ならおしゃれだから若い子とか来るけど、梨大だからな。距離としては2駅だけど、弘大に比べたら日本人少ないかも。でも、梨大の語学堂に通う子なんかはいると思うよ。俺の母校の|延世《ヨンセ》も日本人の留学生多いし。延世なら新村だから隣だし、歩いてくるよ」
「そっか。まぁ日本人相手に商売するわけじゃないけどな。若い女の子だよ、相手は」
「そうだね。若い女の子相手だったらSNS駆使しないとね」
「それはおいおい考えて行こう」
とはいえ、オープンまでそんなに時間があるわけじゃないから、そんなに悠長にしてられないけど、とりあえずアカウント作って写真アップしておけばいいかな? 後は梨大と新村の雑貨屋とかにチラシを置かして貰う感じかな? SNSでとにかく美味しそうな写真をアップできればフォロワーさん増えるかな? これはイジュンと一緒に考えなくてはいけないことだ。
「ソヨンが大学生だし、SNSやってるから協力して貰おうか」
イジュンが何気なくソヨンさんの名前を出してきたので、俺はドキリとする。ここは韓国だし、イジュンの従兄弟だし、会わないわけがない。それでも、進んで会いたい人ではない。もっともそれは相手も同じだろうけど。でもイジュンが頼めば協力はして貰えるだろうな。
「ソヨンさんの大学ってどこ?」
「|誠信女大《ソンシンヨデ》っていうところで、ここからちょっと距離あるんだよな。東大門より先になるかな」
「え? じゃあ遠いじゃん」
「でも、起爆剤にはなると思うよ。既にアカウント持ってSNSやってる女子大生が発信したら、見た子が来てくれると思うんだよね」
「そっか。来てくれるといいな。あ、そろそろテーブルが届く頃じゃない?」
「あ、ほんとだ」
そんな話しをしているとお昼になり、イートインスペースに置くテーブルと椅子が届く時間になった。そして気がついてすぐに家具屋さんが持ってきてくれた。置く位置を大雑把に指示し、置いて貰う。そして配送員が帰ったお店を見ていると、ほんとにここでお店をやるんだと実感がわいた。
「明日海、お腹すかない?」
「すいた」
「明日海の部屋の家具も今日配達だよね? そしたら簡単にお昼食べてから明日海の部屋に行こう」
「うん。そうしよう。この辺で適当に食べようか」
「近くにチキンのチェーン店あるからそこで食べようか。韓国のチェーン店じゃなくてアメリカのお店で美味しくて人気なんだよ」
「へ〜。じゃあそこにしよう」
お店に鍵をかけ、お昼を食べに行く。チキンは辛いのがあったとしても他の料理みたいに辛くて食べられないということはないだろう。この近所のお店も少しずつ覚えて行かなきゃな。幸いにもイジュンが隣の延世大に通ってたから、この近所には土地勘があるのが救われる。最初はイジュンに教えて貰いながら、あとは自分で開拓していこう。そう言えば、韓国で出前って発達してるっていうから、出前デビューするのも面白いかもしれない。そんなことを考えながらチキン店を目指した。
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