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それでも春は巡る1
13時を過ぎると各大学の語学堂の授業が終わるため、お客さんがポツポツと来だす。今日もそれは変わらず、今も日本人留学生が期間限定の”苺と抹茶”を2つ注文があって、出したところだ。
「可愛い〜」
「可愛いよね。ほんとに日式クレープだよね。日本に帰ったみたい」
お店の前で明るい声が響いている。うん。日本人にとってはほんとに日本に帰ったみたいなメニューだと思う。抹茶とあずきはまさに”和”だから。
「あの。日本人の方なんですよね? 韓国語がすごくうまくて韓国人みたいなんですけど……」
お客さんは恐る恐るイジュンに日本語で訪ねてる。それを聞いたイジュンは頭にはてなマークが浮かんでいるのが見える。イジュンが日本人。思わず俺は笑ってしまった。それに韓国人だから韓国語がうまいのは当然だ。でも、いつまでも笑っているわけにはいかないから、俺は窓のところに行って答えた。
「俺が日本人で、彼は韓国人。俺はまだ韓国語が苦手だから注文は彼に取って貰ってるんだ」
「そうなんですね。私たち語学堂の留学生なんですけど、なんだかこれ見ると日本のクレープ屋さん思い出して。これ、抹茶とあずきでほんとに日本ですよね」
「良かった。それ、俺が考えたんだ。日本のクレープ屋にもありそうなメニューだけどね」
「それがいいです! 日本離れて1年で、その間1度一時帰国しただけだから日本食とか日本のが懐かしくて」
「やっぱり懐かしくなるんだ」
そっか。ということは俺もいずれ日本が懐かしくなるってことだな。とりあえず旧正月に帰国するつもりではいるけど。それでも1年は帰国できないっていうことだ。
「はい。韓国も好きですけど、やっぱり長くいると日本が恋しくなるっていうか。お兄さんは韓国きてどれくらいですか?」
「まだ1ヶ月半くらいかな」
「そっか。そしたらまだ大丈夫かな?」
「大丈夫かはわからないけど、今、日本語聞いてなんだか懐かしいなって思った。普段は日本語使わないから」
「そうなんだ。日本人の友達とかはいないんですか?」
「うん。いない。だから英語と韓国語しか聞いてないんだよね。だから今も久しぶりに日本語話してる」
「そしたら私たちまた来ます。で、他にお客さんいないときならお話してもいいですか?」
「うん、いいよ」
「じゃあSNSにアップします! このロゴ可愛いし、クレープも可愛いし。映えますよ!」
そう言った彼女たちはクレープの写真を撮るとスマホでなにか操作している。恐らくSNSにアップしてくれたんだろう。こうやってお客さんがSNSにアップしてくれるのがすごく嬉しいし、次のお客さんを呼んでくれる。
「お兄さんとの写真もアップしちゃダメですか? 韓国人のお兄さんも一緒に。イケメン店員さんってすっごく話題になりますよ!」
「え……」
「明日海、なんだって?」
イジュンは不思議そうな顔で俺を見てきた。あ、そうだ。俺達日本語で会話しちゃってた。疎外感感じただろうなと思うと、悪いことをしたなと思う。後で謝ろう。で、とりあえずここは韓国語で言う。多分、あってるはず。
「SNSにアップするのに、俺たちと写真撮りたいって」
「いいよ。イケメンに撮ってね」
イジュンは二つ返事で了承し、俺たちは彼女たちと写真を撮った。それをスマホで見せて貰うと、イジュンはイケメンに写ってた。俺はどうでもいい。そう思っているけど、イジュンは見るところが違うみたいだ。
「明日海、綺麗に写ってるね。うん、いい感じ。この写真送って貰ってもいい?」
「いいですよ」
そう言ってイジュンは今撮ったばかりの写真をゲットしていた。そして女の子たちはSNSにアップしていた。そしてそれを俺たちに見せてくれた。
「ここ、#hanairo、#桜クレープっていうタグでアップされてるんですよ。あ、包み紙も可愛いから、それも撮らなきゃ」
「よし。OK。包み紙もアップしました! この包み紙ほんわりしてて好きです」
「それ、明日海がデザインしたんだよ」
なぜだかイジュンが胸を張って答える。いや、なんでイジュンが威張るんだよ。俺はそれを見て、呆れてしまった。
「わ〜すごい! クレープ焼けて、ロゴもって凄すぎます」
「そんなことないよ。ロゴは、日本人には懐かしい感じじゃない? 小学校の頃の、よくできましたっていうスタンプに似てて」
「確かに。似てる」
「そんなに似てるの?」
イジュンが不思議そうな顔をする。そうだよな。韓国人のイジュンにはわからないことだ。ロゴを描いたとき、イジュンには日本の小学校で使われるスタンプに似てる、というのは話したけど、実物を見たことはないからな。
「結構似てると思いますよ。残念ながら私たち小学生じゃないから見せられないんですけど」
「そうなんだね。実物は見れないけど、このロゴなら毎日見てるからいっか」
「そう言えば、広報担当の人が綺麗って話題になってるけど、2人でやってるんですよね?」
「2人だよ。広報は、俺の従兄弟がやってくれてるんだ」
「そうなんですね。今日はいないんですね。会えなくてちょっと残念。あ!私たちったら喋りすぎちゃった。じゃあ帰ります。また来ますね」
「うん。気を付けてね」
「はい」
「また来てね」
そう言って女の子たちは帰って行った。
それよりも広報担当の人が綺麗って、ソヨンさんは店の人じゃないのに。それなのに店の人のように語られる。それがなんだか嫌だった。そう考えてしまう俺は心が狭くて余裕がないんだな。そうだよ、だって手を引けって言われるくらいだしな。2人でお茶をしたときのことを思い出して、俺はため息をついた。
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