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それでも春は巡る4

 家に帰ってから俺はパソコンで売上のデータを見ていた。1ヶ月半。もう少しで2ヶ月。最初の1ヶ月は物珍しさから来るお客さんもいたと思う。それでもそれを過ぎて、もうすぐ2ヶ月でそろそろ物珍しさから来るお客さんは減ってきていると思う。そんな今。売上は悪くない。逆にまだ右肩上がりだ。まだ物珍しさのお客さんはいるんだろうか。でも、イジュンいわく常連さんが出来てきていると言っていた。毎日カウンターに立つイジュンはお客さんの顔も覚えているだろう。そのイジュンが言うのだから間違いないだろう。ということは、多少割り引いて見ても、それでも悪くない数字だと思う。ソヨンさんの大学の人からの取材もあったし、その効果は出ているのだろう。あとはインターネットの情報サイトに取り上げられればいいのだけど、それにはまだまだ先か。とにかく数字としては悪くないから今後もこの調子でいけばいい。あとはメニューだな。春の季節限定が結構出ている。でも、夏〜冬はこれがない。なんか考えたいけど、どうやってもメニューが浮かばない。浮かんだのは、秋に紅葉の形にしたものをトッピングすることなんだけど、ただそれだけだと春と変わらないし、かと言って抹茶に変わるなにかが浮かばない。これはイジュンと相談した方がいいな。俺1人ではアイデアが出ない。とにかくもう少ししたら、またイジュンと数字を見よう。気を緩めないでいよう。  パソコンを閉じると、今度はスマホでSNSサイトを見る。hanairoでもハッシュタグがつけられているよと帰りに教えてくれたのはミンジョンヌナだ。俺たちの知らないところでハッシュタグが生まれているのが、嬉しい反面なんだか面映ゆい。hanairoのハッシュタグを見ると色々なコメントがついている。 『お兄さんがイケメンでクレープも美味しい』 『他のお店にはない日本ぽいメニューがいい』 『遠くから行ったけど、行って損はなかった』 『行ってない人は行くべき』 『春の色をありがとう』  ハッシュタグのついているコメントにはこんな温かいコメントで溢れていた。遠くから来てくれた人もいたのか。それはソヨンさんの大学の人だろうか。それとも別か。わからないけど、遠くから来てくれて行って損はなかったと思ってくれたことが嬉しい。しかし、お兄さんがイケメンって……。それ、イジュンのことだよな。イジュン、イケメンだからな。ちょっとお調子者なところあるけど。まぁでも、それでもクレープも美味しいと思ってくれたのなら良かった。  ハッシュタグには写真付きなんだけど、当然クレープなんだけど、見るとやっぱり和をイメージしたメニューが多い。やっぱり日式クレープとして売っているからだろうな。やっぱりそれが他店との差別化なんだなとわかる。そしてその中に俺がデザインした店の桜のロゴ。そして鎮海の桜の写真。イートインスペースのテディベア。それがアップロードされているということは、いいと思ってくれたからだろう。イートインスペースは結構悩んだけど、正解だったらしい。イジュンが持っていた鎮海の写真を飾ったのも良かった。これは季節ごとに変えていきたいな。夏は釜山か済州島の海だろうか。でも俺たちは店があるからそんな写真を撮りにいけないのが問題だ。雑誌かなにかから取ってくればいいのかもしれない。これもイジュンに要相談だ。お店は俺だけのものじゃないから。  そう考えてSNSも閉じる。疲れたな。でも明日1日頑張れば明後日は休みだ。とはいえ明日は韓国語のレッスンだし、明後日だってお店は休みだけど、韓国語の復習と予習がある。ゴロゴロしている暇はないんだ。せめてお昼休みくらいは交代で取れるようにしたいから、それには俺の韓国語力にかかってる。だから休みの日だって頑張らなきゃいけないんだ。でも、正直、韓国に来てからずっと神経を張り詰めているのもあって、それも少しキツい。俺はこっちに日本人の友達がいないから余計なのかもしれない。日本語を聞くことなんて今日みたいなことがあった日くらいで普段は日本語は聞かないし、喋ることもない。そういうのも疲れる原因になるんだろうな。まだホームシックになってないだけいいかもしれないけど。もう少ししたらホームシックを起こしそうだ。でも日本に帰れるのは旧正月のときだけだ。それまで、頑張ろう。  窓を大きく開けて深呼吸をする。もし日本のことを話したくなったらイジュンと話すのもいいかもしれない。イジュンは日本に行ったことがあるんだから。というより東京をガイドしたのは俺だ。あれからまだ1年も経ってない。あのときの俺は数ヶ月後には韓国へいる、とあの頃の俺に言っても信用しないだろうな。そう思ったらちょっとおかしくなった。  

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