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君の言葉が春に似ていた2
21時。中国人の生徒さんのレッスンを終える。この後はアスミのレッスンの21時半まで休憩だ。今日は14時から教えていて、それなにりに疲れた。なので今日はチョコレートを持ってきてある。アスミのクレープは今日はお休み。そうでなくても一昨日行ったばかりだ。さすがに毎日クレープを食べるわけにはいかないから、ちょっとした甘いものをバッグに入れてある。今日のアスミのレッスンはお店での会話のシュミレーションと日常会話。お店でのシュミレーションは始めて数回だけど、発音もだいぶ良くなってきてるから、あとは単語を覚えればそろそろ大丈夫なんじゃないかと思っている。後はアスミが自信を持てばいいことだ。ただ、日本人は真面目な反面間違えることを恐れてなかなか韓国語で話さないから、それだけが問題だ。ただ、アスミの場合は周りに日本人はいないというから、嫌でも韓国語で話さざるをえないだろうけど。
チョコレートとコーヒーで休憩をしているとあっという間にアスミの来る時間になった。
「アニョハセヨ」
僕はレッスンのときは絶対に韓国語しか話さない。生徒さんがわからなくても韓国語でしか説明をしない。厳しいようだけど、それが韓国語上達のためだ。だからアスミも来ると韓国語で挨拶をする。
「仕事お疲れ様。アスミが来ると甘い匂いがしてすぐにわかる」
「すいません」
「アスミから甘い匂いがするのはいいんだけど、難点があるとすればクレープを食べたくなるくらいかな」
「お店に来てください」
「一昨日行ったばかりだけどね。でも、また明日か明後日にでも行かせて貰うよ。春の限定メニューはまだやってる?」
「まだやってますけど、そろそろ終わりになります」
「そうなの? それは早く行かなくちゃだね」
「待ってます」
まだ難しいことは言えないし、少したどたどしくなるときもあるけれど、頑張っているのがわかる。そして、男にしては多少高めの声がアスミの綺麗な顔と似合っていて、僕は好きだ。
「さぁ、クレープは後日の楽しみとして、レッスン始めようか」
「はい」
「じゃあまずはメニュー説明のシュミレーションからね」
「はい」
アスミは背をまっすぐに伸ばして、顔を引き締める。これが、アスミのレッスンの始まりに見れる。これだけでも、どれだけ真面目にレッスンを受けているかがわかる。
「おすすめのメニューはありますか?」
「”春の香り”がおすすめです」
「それはどんなクレープですか?」
「苺クリームに苺をトッピングして、ストロベリーアイスを載せて、チョコレートソースをかけたものです」
「そうしたらそれをください」
「はい。5500ウォンになります。ありがとうございました」
発音はまだたどたどしさがあるけれど、回数をこなしているからかだいぶスムーズになった。それに”春の香り”のメニュー紹介はうまくなった。お店の看板メニューだし、名前からではどんなクレープかわからないから、きっと訊いてくるお客さんも多いと思う。そしてシミュレーションでは名前だけではどんなクレープかよくわからないクレープの紹介をするようにしている。それは和をイメージしたクレープで季節限定だから、もうそろそろ終わりであとは来年までないけれど、来年はスムーズに紹介ができるように今しっかり話せるようにならなきゃいけない。そう思って特定のメニューの紹介が多い。
「苺クリームっていうのが言いにくそうだね。というか苺っていう単語かな?」
「はい。苺っていうのが言いにくいです。ルが言いづらいです。ルをきちんと言おうとすると日本語読みになっちゃうし」
「そうか。苺っていう単語は随分使うんじゃない?」
「使いますね。色んなクレープに使っているので」
「そうしたら今日は”苺”っていう単語の発音を練習してみようか」
「はい」
「じゃあ言ってみて」
「タルギ」
「それじゃあ日本語発音だよ」
「タァルギ」
「舌は回さないで」
アスミは英語が話せるから、たまに発音が英語みたいになってしまうときがある。でも、それを気をつけると今後は日本語になってしまう。この場合、英語ができるのが難点だ。
「タル……タァル……タ、タル……」
ルの発音で悩んでいるから、苺と最後まで発音せずに、タルを何回も何回も繰り返し発音している。
「違う。タルギ。ルは巻き舌にしないで。だけど、日本語のルじゃない。これは韓国語だよ」
僕がそういうとアスミは眉を垂らして、また一生懸命”タル”の発音を口先で言っている。
「口先だけで言わないできちんと声を出して。でないと発音がしっかりできないの当たり前だよ」
「はい」
すると今後ははっきりとした声で発音練習を始めた。子音を含め、日本人には発音しにくい単語が結構ある。それをひとつひとつ発音練習をするアスミには好感が持てる。これは好きにならない方が無理だ。レッスンを重ねるごとに、アスミへの想いも深くなっていく。
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