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好きと好きのあいだ1
お店をオープンさせて3ヶ月。お店は順調で売上も右肩上がりで、SNSでは可愛い日式クレープとして評判になっている。春の季節限定メニューがなくなってどうなるかちょっと緊張してたけど、”春の香り”は通年メニューだからそれほど痛手にはならなかった。それは数字が証明している。トータルの売上は右肩上がりとはいえ、これをずっとキープしていかなきゃいけない。それはなかなか大変なことだ。ところどころでなにか仕掛けのようなものを取り入れるといいとイジュンと話しているけれど、ではどんなのがいいかと言うと、これはまだ全くコレというのが浮かんでいない。でも、ほんとは特になにもしなくても売上キープできるのが一番なんだけど。このまま浮かばなかったらこのままかもしれない。
そして最近ちょっとだけ変わったことがある。それは俺も注文を受けるようになったこと。今まで注文はイジュンにばかり頼っていて休憩なんて取れなかったけど、俺が注文を受けられるようになったからお昼休憩は交代で取れるようになった。とはいえ、片方が休憩をしている間は1人で店を切り盛りしていくから大変ではあるけれど、それでもお昼頃はピークの忙しさではないからなんとかなっている。もし、1人ではどうしようもなくなったら声をかけようと決めてあるけれど、とりあえず今のところはなんとかなっている。
今日は俺が先にお昼休憩を貰い、今はイジュンがお昼休憩中だ。まだ語学堂の授業も終わってないから、お客さんはポチポチだ。だからのんびりと窓から外を眺めていた。するとジヌ先生の姿が見えた。
「こんにちは。今日はクレープ食べたくて。カスタードキャラメルケーキクリームを貰える?」
「はい。っていうかガッツリいきますね。お昼食べてないんですか?」
「ううん。食べたんだけど、キンパだったからちょっと物足りなくて。それと疲れてるから」
「じゃあ待っててください。今焼くので」
「うん。お願い」
ジヌ先生は自他共に認める甘党だけど、生クリームとカスタードクリーム、そしてキャラメル。極めつけにチーズケーキとこってりと甘くてボリュームのあるメニューだ。
俺はクレープを焼き、生クリーム・カスタードクリームを綺麗に絞り、チーズケーキを一切れ乗せ、仕上げにキャラメルソースをかける。
「お待たしました。6500ウォンです」
「カードで」
「はい」
カードが発達している韓国だから、こんな小さなお店でもカード決済はできるようにしてある。ちょっとした買い物までも韓国人はカードで支払う。だからお店を始めるにあたって、真っ先にクレジットカード決済を導入した。俺は、韓国がこんなにカード決済が発達しているとは思わずに、こんな単価の安い小さなお店ではカード決済をする人がいるのかと思ったけれど、蓋を開けてみるとカード決済にする人は結構いて驚いたものだ。
「それより、アスミくん、オーダー受けられるようになったんだね」
「はい。お店のメニューの韓国語は覚えたし、よく訊かれそうなことも覚えたから。先生のおかげです。レッスンが役に立ってます」
「それなら良かった。でも、最後はアスミくんの努力だよ。頑張ったもんね」
「イジュンに負担かけてたから」
「イジュン?」
「あ、共同経営者の名前です。ハ・イジュンって言うんです」
「へ〜。いつもいるイケメンの彼でしょ」
「そうです。そうです。オープン前の内装の打ち合わせとかからずっと韓国語が必要なときはずっとイジュンに頼りっぱなしだったから。でも、俺がオーダー受けられるようになったからお昼休憩は取れるようになったんです」
「そっか。良かったね」
そう。オープン前の内装工事に際して、俺は日本にいたし、韓国語はわからないから、全てイジュンにおんぶに抱っこだった。そして俺が韓国に来てからも、韓国語が必要な場面ではイジュンに全部お願いしていたから、やっとイジュンに休んで貰えるようになった。それもジヌ先生のレッスンのおかげだ。注文のシーンをロールプレイングで繰り返しやったからなんとか注文を受けられるようになったんだ。もちろんどうしてもわからないときはイジュンに助けて貰うけど、そうでない限りは俺1人で頑張る。韓国へ来てから3ヶ月半。日本で韓国語の個人レッスンを受けてきたとはいえ、文字と挨拶くらいしかできなかった。そんなレベルから3ヶ月でここまでこれたなんて、自分でいうのもどうかと思うけどすごいなと思う。それもこれも先生につくまで教えてくれて、今もわからないところは教えてくれるイジュンと、そしてお店で困らないようにロールプレイングで教えてくれたジヌ先生のおかげだ。俺1人では無理だったことだ。
「あ〜美味しかった。やっぱりクレープ美味しいよ。他の店に負けてない」
「そうですか? ありがとうございます」
「じゃあレッスンがあるから戻るね。アスミくんのレッスンは明日だね」
「はい。明日お願いしまう」
「うん。明日ね」
そう言って先生は朗らかに手を振りながら帰っていった。
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